堂々と浮気?それなら婚約破棄を希望します。

パリパリかぷちーの

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翌日の昼休み。フィオナは、学園のテラスの片隅で、親友のエレノア・グレイリング伯爵令嬢に向かい合っていた。

エレノアは、燃えるような赤毛をポニーテールにした、快活で気の強い少女だ。フィオナとは幼い頃からの付き合いで、何でも話せる唯一無二の親友である。

「――というわけで、わたくし、一刻も早く殿下との婚約を破棄したいの」

フィオナが昨夜の出来事までをかいつまんで話すと、エレノアはテーブルをバンッと叩いて立ち上がった。

「ありえない! その王子、頭は大丈夫なのかしら!? 浮気しておいてプレゼント攻撃ですって!? 誠意がなさすぎるにも程があるわ!」

「エレノア、声が大きいわ」

フィオナがやんわりと窘めるが、エレノアの怒りは収まらない。

「だって、フィオナが可哀想じゃない! あなたは何も悪くないのに、ずっと我慢してきたんでしょう? もう十分よ! そんな誠意のない男、こっちから捨ててやりましょう!」

「ええ、そのつもりよ。だから相談に乗ってほしいの。どうすれば、穏便に、そしてわたくしに非がない形で婚約破棄ができるかしら」

下手にフィオナから破棄を申し出れば、「王太子を袖にした不敬な女」として、クレスウェル家共々、社交界での立場が危うくなる可能性がある。そうはならず、円満に、すべてを終わらせる必要があった。

エレノアは腕を組んでうーんと唸ると、ポンと手を打った。

「それなら、殿下の方から『君は僕の妃に相応しくない』って思わせるのが一番じゃない?」

「殿下の方から……?」

「そうよ! フィオナに愛想を尽かさせて、殿下から婚約破棄を切り出させるの! そうすれば、あなたは『可哀想に、殿下に捨てられた令嬢』として同情される側になる。完璧なシナリオだわ!」

エレノアの瞳がキラキラと輝く。確かに、それならばフィオナの家にも傷はつかない。むしろ被害者として、今後の身の振り方も楽になるかもしれない。

「具体的には、どうすればいいのかしら?」

「決まってるじゃない! 今まであなたが完璧な淑女として振る舞ってきた、その逆をやるのよ!」

「逆……ですって?」

フィオナは思わず聞き返した。王太子妃教育で叩き込まれた淑女の作法。それを、わざと破るというのだろうか。

「そうよ! 名付けて、『わたくし、淑女失格ですの作戦』よ!」

エレノアは得意げに胸を張る。

「例えば、殿下とのお茶会でわざとテーブルマナーを間違えるとか、ダンスで思いっきり足を踏んづけてやるとか! 淑女にあるまじき失態を繰り返せば、完璧主義の殿下だって、きっと幻滅するはずよ。『こんな令嬢は、私の隣には置けない』ってね!」

突拍子もない作戦に聞こえるが、他に妙案も思い浮かばない。あの不可解な殿下に、正攻法が通じるとは到底思えなかった。

「……試してみる価値は、あるかもしれないわね」

フィオナは小さく頷いた。

これまで完璧な婚約者を演じてきた自分にとって、淑女失格の烙印を押されるのは不本意ではある。しかし、自由のためなら、多少の不名誉は甘んじて受け入れよう。

「決まりね! 善は急げよ! 次の殿下とのお茶会はいつ?」

「明後日ですわ」

「よろしい! 明後日、作戦決行よ! 健闘を祈るわ、フィオナ!」

親友からの力強いエールを受け、フィオナは密かに拳を握った。

まずは手始めに、完璧な淑女の仮面を脱ぎ捨てることから。わたくしの平穏な未来のために。
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