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淑女失格作戦の無残な失敗から数日後。フィオナの気分は、どんよりとした曇り空のように晴れなかった。
何をしても、殿下には好意的に解釈されてしまう。あの手この手で「嫌われる努力」をしているというのに、逆に溺愛が加速している気がしてならない。
(どうすれば、あの人の心をわたくしから引き離せるのかしら……)
一人、学園の廊下を考え込みながら歩いていると、後ろから明るい声が飛んできた。
「フィオナー! そんな難しい顔して、どうしたんだよ?」
振り返ると、そこにいたのは幼馴染のシルヴァン・マーシャルだった。
赤銅色の髪を無造作に伸ばし、日に焼けた肌が健康的な印象を与える青年だ。騎士爵家の次男である彼は、王立魔法学園の騎士科に所属しており、その快活な性格と裏表のない人柄で、誰からも好かれている。
「シルヴァン……。いえ、なんでもありませんわ」
「なんでもないって顔じゃないだろ。俺でよかったら、話くらい聞くぜ?」
ニカッと笑いかけるシルヴァンに、フィオナは少しだけ心が軽くなるのを感じた。彼は、昔からフィオナが落ち込んでいると、こうして真っ先に気づいてくれるのだ。
二人は中庭のベンチに移動し、フィオナは意を決して、婚約破棄を望んでいること、そしてそのための作戦がことごとく失敗していることを打ち明けた。もちろん、殿下の浮気相手がアリア嬢であることなどは伏せて、あくまで「殿下との価値観が合わない」という体で。
話を聞き終えたシルヴァンは、腕を組んでうーん、と唸った。
「なるほどな……。あの完璧王子相手じゃ、生半可な作戦は通用しないってことか」
その言葉には、どこかアレクシス殿下への対抗心が滲んでいる。シルヴァンが一方的に殿下をライバル視しているのは、フィオナも知っていた。
「それで、俺に協力してほしいことがある、と。そういうことか?」
「ええ。力を貸していただけないかしら、シルヴァン」
フィオナが真剣な眼差しで頼むと、シルヴァンは待ってましたとばかりに胸を叩いた。
「任せとけ! フィオナの頼みなら、なんだって聞いてやるさ!」
その快い返事に、フィオナはほっと息をつく。
「それで、次の作戦は決まってるのか?」
「ええ……。殿下がわたくしの失態に幻滅しないのなら、別の手で殿下の心を揺さぶるしかありませんわ」
フィオナは、声のトーンを一つ落として言った。
「次の作戦は、『他の男の影作戦』です」
「他の……男の影?」
シルヴァンが、きょとんとした顔で聞き返す。
「そうですわ。わたくしに、親しい男性がいることを見せつけるのです。そうすれば、いかに冷静な殿下でも、嫉妬や不快感を覚えてくださるはず。婚約者に言い寄る男がいれば、面白くないでしょうから」
これは、フィオナにとっても賭けだった。しかし、もうこの手しか思いつかない。
フィオナの説明を聞いたシルヴァンの顔が、みるみるうちに赤くなっていくのが分かった。
「そ、それってつまり……俺が、フィオナの恋人のふりをするってことか!?」
「ええ、そういうことになりますわね。協力……してくださる?」
フィオナが小首を傾げて尋ねると、シルヴァンは一瞬天を仰いでから、勢いよく頷いた。
「お、おう!もちろんだ!協力する! 協力させてくれ!」
そのあまりの勢いに、フィオナは少し驚いたが、頼もしい協力者を得られたことに安堵した。
(これで、少しは事態が動くかもしれない)
まさか、その協力が、さらなる誤解を生むとは夢にも思わずに。フィオナは、幼馴染の騎士様に、淡い期待を寄せるのだった。
何をしても、殿下には好意的に解釈されてしまう。あの手この手で「嫌われる努力」をしているというのに、逆に溺愛が加速している気がしてならない。
(どうすれば、あの人の心をわたくしから引き離せるのかしら……)
一人、学園の廊下を考え込みながら歩いていると、後ろから明るい声が飛んできた。
「フィオナー! そんな難しい顔して、どうしたんだよ?」
振り返ると、そこにいたのは幼馴染のシルヴァン・マーシャルだった。
赤銅色の髪を無造作に伸ばし、日に焼けた肌が健康的な印象を与える青年だ。騎士爵家の次男である彼は、王立魔法学園の騎士科に所属しており、その快活な性格と裏表のない人柄で、誰からも好かれている。
「シルヴァン……。いえ、なんでもありませんわ」
「なんでもないって顔じゃないだろ。俺でよかったら、話くらい聞くぜ?」
ニカッと笑いかけるシルヴァンに、フィオナは少しだけ心が軽くなるのを感じた。彼は、昔からフィオナが落ち込んでいると、こうして真っ先に気づいてくれるのだ。
二人は中庭のベンチに移動し、フィオナは意を決して、婚約破棄を望んでいること、そしてそのための作戦がことごとく失敗していることを打ち明けた。もちろん、殿下の浮気相手がアリア嬢であることなどは伏せて、あくまで「殿下との価値観が合わない」という体で。
話を聞き終えたシルヴァンは、腕を組んでうーん、と唸った。
「なるほどな……。あの完璧王子相手じゃ、生半可な作戦は通用しないってことか」
その言葉には、どこかアレクシス殿下への対抗心が滲んでいる。シルヴァンが一方的に殿下をライバル視しているのは、フィオナも知っていた。
「それで、俺に協力してほしいことがある、と。そういうことか?」
「ええ。力を貸していただけないかしら、シルヴァン」
フィオナが真剣な眼差しで頼むと、シルヴァンは待ってましたとばかりに胸を叩いた。
「任せとけ! フィオナの頼みなら、なんだって聞いてやるさ!」
その快い返事に、フィオナはほっと息をつく。
「それで、次の作戦は決まってるのか?」
「ええ……。殿下がわたくしの失態に幻滅しないのなら、別の手で殿下の心を揺さぶるしかありませんわ」
フィオナは、声のトーンを一つ落として言った。
「次の作戦は、『他の男の影作戦』です」
「他の……男の影?」
シルヴァンが、きょとんとした顔で聞き返す。
「そうですわ。わたくしに、親しい男性がいることを見せつけるのです。そうすれば、いかに冷静な殿下でも、嫉妬や不快感を覚えてくださるはず。婚約者に言い寄る男がいれば、面白くないでしょうから」
これは、フィオナにとっても賭けだった。しかし、もうこの手しか思いつかない。
フィオナの説明を聞いたシルヴァンの顔が、みるみるうちに赤くなっていくのが分かった。
「そ、それってつまり……俺が、フィオナの恋人のふりをするってことか!?」
「ええ、そういうことになりますわね。協力……してくださる?」
フィオナが小首を傾げて尋ねると、シルヴァンは一瞬天を仰いでから、勢いよく頷いた。
「お、おう!もちろんだ!協力する! 協力させてくれ!」
そのあまりの勢いに、フィオナは少し驚いたが、頼もしい協力者を得られたことに安堵した。
(これで、少しは事態が動くかもしれない)
まさか、その協力が、さらなる誤解を生むとは夢にも思わずに。フィオナは、幼馴染の騎士様に、淡い期待を寄せるのだった。
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