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シルヴァンに調査を依頼してから、五日が過ぎた。
その間、学園では何事もなかったかのように平穏な日々が流れていたが、フィオナの心は落ち着かなかった。アレクシス殿下は、相変わらずフィオナに会うたびに甘い言葉をかけてくるが、今のフィオナには、その裏にある彼の苦悩が透けて見えるようで、複雑な気持ちになるばかりだった。
そして約束の日、フィオナは再びシルヴァンと図書室の個室で落ち合った。
「フィオナ、少しわかったことがある」
シルヴァンは、いつもよりずっと真剣な表情で、一枚の羊皮紙を取り出した。
「ロセッティ男爵家について調べてみた。表向きは、特に何の変哲もない、歴史の浅い下級貴族だ。だが、王家の古文書保管庫で、兄貴に無理を言って、ある記録を閲覧させてもらったんだ」
彼は、声をさらに潜めて続けた。
「ロセッティ家の血筋には、数世代に一度、極めて稀な体質を持つ者が生まれるらしい」
「稀な、体質……?」
「ああ。それは、『魔力無効化』の体質だ」
「魔力……無効化ですって!?」
フィオナは思わず声を上げた。魔力無効化。それは、文字通り、あらゆる魔法の効果を打ち消す力。
この魔法と科学が共存する世界において、それは規格外の、あまりにも強力すぎる力だった。高位の魔術師が放つ必殺の攻撃魔法も、複雑な呪いも、その力の前では無に帰す。それは、使い方次第では、あらゆるパワーバランスを覆しかねない、まさに『切り札』と呼ぶべき能力。
「そんな伝説のような力が、本当に……?」
「記録によれば、だ。この体質を持つ者は、自身の魔力量は極端に少ないが、外部からの魔力干渉を一切受け付けない。……先日の襲撃で、殿下が魔力の礫を受けても無傷だったのは、おそらく、アリア嬢を庇っていたことで、彼女の能力の影響下にあったからだ」
シルヴァンの言葉に、全てのピースがカチリと嵌っていく音がした。
なぜ、アリア嬢が狙われるのか。その答えは、彼女自身が、歩く戦略兵器とも言える存在だからだ。
「なんてこと……。そんな重大な秘密を、あんなに儚げな方が……」
アリアの、いつも怯えているような瞳の理由が、わかった気がした。彼女は、自分の持つ力が原因で、常に危険と隣り合わせで生きてきたのだ。
「そして、もう一つ気になる情報がある」
シルヴァンは、さらに険しい表情で言った。
「その力を、喉から手が出るほど欲しがっている連中がいる。……俺たちが、三年前まで戦争をしていた相手だ」
その言葉に、フィオナは息を呑んだ。
彼女を狙う者の正体が、朧気ながら、その輪郭を現し始めていた。
その間、学園では何事もなかったかのように平穏な日々が流れていたが、フィオナの心は落ち着かなかった。アレクシス殿下は、相変わらずフィオナに会うたびに甘い言葉をかけてくるが、今のフィオナには、その裏にある彼の苦悩が透けて見えるようで、複雑な気持ちになるばかりだった。
そして約束の日、フィオナは再びシルヴァンと図書室の個室で落ち合った。
「フィオナ、少しわかったことがある」
シルヴァンは、いつもよりずっと真剣な表情で、一枚の羊皮紙を取り出した。
「ロセッティ男爵家について調べてみた。表向きは、特に何の変哲もない、歴史の浅い下級貴族だ。だが、王家の古文書保管庫で、兄貴に無理を言って、ある記録を閲覧させてもらったんだ」
彼は、声をさらに潜めて続けた。
「ロセッティ家の血筋には、数世代に一度、極めて稀な体質を持つ者が生まれるらしい」
「稀な、体質……?」
「ああ。それは、『魔力無効化』の体質だ」
「魔力……無効化ですって!?」
フィオナは思わず声を上げた。魔力無効化。それは、文字通り、あらゆる魔法の効果を打ち消す力。
この魔法と科学が共存する世界において、それは規格外の、あまりにも強力すぎる力だった。高位の魔術師が放つ必殺の攻撃魔法も、複雑な呪いも、その力の前では無に帰す。それは、使い方次第では、あらゆるパワーバランスを覆しかねない、まさに『切り札』と呼ぶべき能力。
「そんな伝説のような力が、本当に……?」
「記録によれば、だ。この体質を持つ者は、自身の魔力量は極端に少ないが、外部からの魔力干渉を一切受け付けない。……先日の襲撃で、殿下が魔力の礫を受けても無傷だったのは、おそらく、アリア嬢を庇っていたことで、彼女の能力の影響下にあったからだ」
シルヴァンの言葉に、全てのピースがカチリと嵌っていく音がした。
なぜ、アリア嬢が狙われるのか。その答えは、彼女自身が、歩く戦略兵器とも言える存在だからだ。
「なんてこと……。そんな重大な秘密を、あんなに儚げな方が……」
アリアの、いつも怯えているような瞳の理由が、わかった気がした。彼女は、自分の持つ力が原因で、常に危険と隣り合わせで生きてきたのだ。
「そして、もう一つ気になる情報がある」
シルヴァンは、さらに険しい表情で言った。
「その力を、喉から手が出るほど欲しがっている連中がいる。……俺たちが、三年前まで戦争をしていた相手だ」
その言葉に、フィオナは息を呑んだ。
彼女を狙う者の正体が、朧気ながら、その輪郭を現し始めていた。
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