11 / 28
11
しおりを挟む
「衛兵、止まりなさい」
切っ先を向けられた私は、扇子を開くように優雅に手を掲げた。
その声には魔力も何も込めていない。
ただ、絶対的な「理」と「自信」だけを乗せた。
それだけで、屈強な衛兵たちの足がピタリと止まる。
「……何のつもりだ」
「取り調べならこの場でどうぞ、と言っているのです。地下牢へ連行されるのは非効率ですから」
私はリナ男爵令嬢の方へ向き直った。
彼女は勝ち誇った顔で、ハンカチに包んだガラス瓶のようなものを掲げている。
「往生際が悪いですわよ、メモリアさん! これが証拠の『惚れ薬の空き瓶』です! 公爵様の執務室のゴミ箱から回収しました!」
会場がざわめく。
ゴミ箱漁りをしたのか、この男爵令嬢は。
「甘くて、とろけるような匂いがします! これは『魅了(チャーム)』の香りに違いありません!」
リナ嬢が瓶の蓋を開け、周囲に匂いを振りまく。
確かに、完熟した果実と蜂蜜を煮詰めたような、濃厚な甘い香りが漂った。
「あら、本当に……」
「なんて甘い香り……」
「公爵閣下がこんな匂いを纏うはずがない。やはり薬か?」
貴族たちが疑心暗鬼の目を向ける。
エルザ王妃も勢いづいた。
「聞いたことあるわ。異国の禁術で、対象の思考を奪い、甘い夢を見させる薬があると……。アレクシス、あなたは操られているのよ!」
「……」
アレクシス公爵は、般若のような形相で黙り込んでいた。
怒りで震えているようにも見える。
しかし、私の隣にいるからこそ分かる。
これは怒りではない。
(……羞恥心だ)
公爵の耳が、真っ赤に染まっている。
私は小さくため息をつき、公爵にだけ聞こえる声で囁いた。
「閣下。観念してください」
「……嫌だ」
公爵が子供のように拒否する。
「『冷徹公爵』の威厳に関わる。甘いものが好きだなんて知られたら、部下になめられる」
「『惚れ薬で操られた哀れな男』と思われるよりはマシです。……私の名誉もかかっていますので、犠牲になっていただきます」
「鬼か、お前は」
「優秀な秘書官です」
私はニッコリと笑い、一歩前に進み出た。
「皆様。誤解があるようですので、訂正させていただきます」
私はリナ嬢の手から、素早く瓶を取り上げた。
「あっ、こらっ!」
「この瓶の成分分析を行いましょう。……そこにいらっしゃるのは、宮廷薬剤師長ではありませんか?」
人垣の中にいた老齢の男性を指名する。
彼はギョッとして、「わ、私ですか?」と出てきた。
「鑑定をお願いします。これは『惚れ薬』でしょうか?」
「は、拝見します」
薬剤師長は瓶を受け取り、匂いを嗅ぎ、指についた僅かな液体を舐めた。
会場中が固唾を飲んで見守る。
数秒後。
薬剤師長の目が大きく見開かれた。
「こ、これは……ッ!」
「なんだ! やはり闇の魔法薬か!?」
カイル殿下が身を乗り出す。
薬剤師長は震える声で告げた。
「……最高級、『桃の蜂蜜漬け』のシロップです」
「は?」
カイル殿下の声が裏返った。
「しかも、ただのシロップではありません。南の島で年に一度しか収穫されない『幻の黄金桃』を、これまた希少な『王蜂の蜜』で煮込んだ、市場価格にして一瓶金貨十枚は下らない超高級品……!」
薬剤師長はウットリとした顔で瓶を抱きしめた。
「間違いありません。これは薬ではなく、究極の『スイーツ』です!」
シーン……。
広い舞踏会場に、気まずい沈黙が降りた。
全員の視線が、ゆっくりとアレクシス公爵に向けられる。
あの、泣く子も黙る冷酷無比な公爵閣下に。
公爵は、夜空を見上げるように視線を逸らし、ボソリと言った。
「……疲れた脳には、糖分が必要なのだ」
その瞬間。
誰かが「ぷっ」と吹き出した。
それを皮切りに、会場のあちこちから堪えきれない笑いが漏れ始めた。
「甘党……?」
「あの閣下が、桃のシロップ漬けを?」
「ゴミ箱から見つかったってことは、執務中にこっそり完食したのか?」
「なんか……可愛いな」
恐怖の対象だった「冷徹公爵」のイメージが、音を立てて崩壊(あるいは軟化)していく。
「ち、違いますぅ!」
リナ嬢が顔を真っ赤にして叫んだ。
「そ、そんなはずありません! だって、公爵様はメモリアさんにメロメロなんですよ!? あんなに冷たい人が、急に優しくなるなんておかしいじゃないですか!」
「リナ様」
私は冷静に切り返した。
「それは『論理の飛躍』です」
「えっ?」
「閣下が私に優しいのは、薬のせいでも何でもありません。単に、私が『有能』だからです」
私は眼鏡の位置を直した。
「私は閣下の求める書類を完璧に作成し、好みの紅茶(砂糖マシマシ)を淹れ、無駄な仕事を排除して定時帰宅を実現させました。上司が部下を評価し、大切にする。これは健全な雇用関係の結果であり、魔法など不要です」
「そ、そんなの……仕事だけの関係じゃないですか! 愛がないじゃないですか!」
リナ嬢が食い下がる。
愛。
その言葉が出た瞬間、アレクシス公爵の雰囲気が変わった。
彼は私の腰を抱いていた手に力を込め、グイッと引き寄せた。
「……仕事だけ、だと?」
低く、艶のある声。
さっきまでの「甘党バレ」の気恥ずかしさは消え、再び「雄」の顔に戻っている。
「勘違いするな。入り口は仕事だったかもしれんが……今は違う」
公爵は私の顎を指で持ち上げた。
至近距離で見つめ合う、黄金の瞳。
「メモリア。俺は、お前のその『可愛げのなさ』に救われている」
「……閣下?」
「媚びず、甘えず、ただ隣で背中を支えてくれる。……そんな女は、世界中探してもお前しかいない」
公爵は衆人環視の中で、私のこめかみに唇を寄せた。
チュッ、とあえて音を立てて口づける。
「キャァァァッ!」
令嬢たちが悲鳴を上げ、バタバタと倒れていく。
「これが薬の効果に見えるか? ……私の意志だ。私の全霊をかけて、この女を渇望している」
公爵は鋭い視線でリナと王妃を睨みつけた。
「これ以上、私のパートナーを愚弄してみろ。……その時は、国ごと氷漬けにしてやる」
本気の殺気。
会場の温度が一気に下がり、シャンデリアがガタガタと揺れる。
「ひっ……!」
リナ嬢は腰を抜かしてへたり込んだ。
カイル殿下は王妃様の後ろに隠れている。
王妃様でさえ、顔面蒼白で扇子を震わせていた。
「……わ、わかったわよ」
王妃様が掠れた声で言った。
「桃のシロップ……いえ、甘党の件は、見なかったことにしましょう。メモリアのことも、もう……ご勝手になさい!」
「賢明なご判断です」
公爵はニヤリと笑い、私に向き直った。
「帰るぞ、メモリア。……甘いものが食べたくなった」
「……さっきのシロップ、まだ残っているんですか?」
「いや、違う」
公爵は私の耳元で、甘く囁いた。
「お前だ」
「……残業代、弾んでくださいね」
私は顔が熱くなるのを必死で隠しながら、公爵のエスコートで会場を後にした。
背後では、リナ嬢が「覚えてらっしゃい! 次はこうはいかないわよぉ!」と負け惜しみを叫んでいたが、誰も相手にしていなかった。
完全勝利。
これにて一件落着――。
と、思いきや。
馬車に乗り込んだ瞬間、公爵が膝から崩れ落ちた。
「……終わった」
「閣下?」
「俺の『冷徹』イメージが……明日から『桃缶公爵』と呼ばれるかもしれん……」
公爵は頭を抱えて落ち込んでいた。
「大丈夫ですよ。ギャップ萌えという新しい市場を開拓しました」
「慰めになってないぞ」
「それに、あそこまで堂々と愛の告白をされたのです。誰も桃缶のことなど覚えていませんよ」
「……あれは本心だ」
公爵が顔を上げ、拗ねたように私を見た。
「お前、あそこで照れなかったな。やはり鉄の女だ」
「心拍数は上がっていましたよ。計算外の数値でした」
「ふん。……帰ったら確認させろ」
「何をです?」
「心拍数だ」
公爵の手が伸びてくる。
夜の馬車の中、私たちの「残業」はまだ続きそうだった。
*
一方、その頃。
屈辱にまみれたリナ男爵令嬢は、王城の庭で一人、地面を蹴りつけていた。
「むきーッ! なによあれ! なによメモリア!」
彼女の瞳は、どす黒く濁っていた。
「私のカイル様をバカにして、公爵様まで奪って……! 許さない、絶対に許さない!」
彼女は懐から、別の小瓶を取り出した。
それは先ほどのシロップとは違う、禍々しい紫色の液体が入った瓶だった。
「こうなったら、実力行使よ。……聖女の力(物理)、見せてあげるわ」
闇夜に響く、狂気じみた笑い声。
私の平穏な毎日は、まだもう少し先のことになりそうだ。
切っ先を向けられた私は、扇子を開くように優雅に手を掲げた。
その声には魔力も何も込めていない。
ただ、絶対的な「理」と「自信」だけを乗せた。
それだけで、屈強な衛兵たちの足がピタリと止まる。
「……何のつもりだ」
「取り調べならこの場でどうぞ、と言っているのです。地下牢へ連行されるのは非効率ですから」
私はリナ男爵令嬢の方へ向き直った。
彼女は勝ち誇った顔で、ハンカチに包んだガラス瓶のようなものを掲げている。
「往生際が悪いですわよ、メモリアさん! これが証拠の『惚れ薬の空き瓶』です! 公爵様の執務室のゴミ箱から回収しました!」
会場がざわめく。
ゴミ箱漁りをしたのか、この男爵令嬢は。
「甘くて、とろけるような匂いがします! これは『魅了(チャーム)』の香りに違いありません!」
リナ嬢が瓶の蓋を開け、周囲に匂いを振りまく。
確かに、完熟した果実と蜂蜜を煮詰めたような、濃厚な甘い香りが漂った。
「あら、本当に……」
「なんて甘い香り……」
「公爵閣下がこんな匂いを纏うはずがない。やはり薬か?」
貴族たちが疑心暗鬼の目を向ける。
エルザ王妃も勢いづいた。
「聞いたことあるわ。異国の禁術で、対象の思考を奪い、甘い夢を見させる薬があると……。アレクシス、あなたは操られているのよ!」
「……」
アレクシス公爵は、般若のような形相で黙り込んでいた。
怒りで震えているようにも見える。
しかし、私の隣にいるからこそ分かる。
これは怒りではない。
(……羞恥心だ)
公爵の耳が、真っ赤に染まっている。
私は小さくため息をつき、公爵にだけ聞こえる声で囁いた。
「閣下。観念してください」
「……嫌だ」
公爵が子供のように拒否する。
「『冷徹公爵』の威厳に関わる。甘いものが好きだなんて知られたら、部下になめられる」
「『惚れ薬で操られた哀れな男』と思われるよりはマシです。……私の名誉もかかっていますので、犠牲になっていただきます」
「鬼か、お前は」
「優秀な秘書官です」
私はニッコリと笑い、一歩前に進み出た。
「皆様。誤解があるようですので、訂正させていただきます」
私はリナ嬢の手から、素早く瓶を取り上げた。
「あっ、こらっ!」
「この瓶の成分分析を行いましょう。……そこにいらっしゃるのは、宮廷薬剤師長ではありませんか?」
人垣の中にいた老齢の男性を指名する。
彼はギョッとして、「わ、私ですか?」と出てきた。
「鑑定をお願いします。これは『惚れ薬』でしょうか?」
「は、拝見します」
薬剤師長は瓶を受け取り、匂いを嗅ぎ、指についた僅かな液体を舐めた。
会場中が固唾を飲んで見守る。
数秒後。
薬剤師長の目が大きく見開かれた。
「こ、これは……ッ!」
「なんだ! やはり闇の魔法薬か!?」
カイル殿下が身を乗り出す。
薬剤師長は震える声で告げた。
「……最高級、『桃の蜂蜜漬け』のシロップです」
「は?」
カイル殿下の声が裏返った。
「しかも、ただのシロップではありません。南の島で年に一度しか収穫されない『幻の黄金桃』を、これまた希少な『王蜂の蜜』で煮込んだ、市場価格にして一瓶金貨十枚は下らない超高級品……!」
薬剤師長はウットリとした顔で瓶を抱きしめた。
「間違いありません。これは薬ではなく、究極の『スイーツ』です!」
シーン……。
広い舞踏会場に、気まずい沈黙が降りた。
全員の視線が、ゆっくりとアレクシス公爵に向けられる。
あの、泣く子も黙る冷酷無比な公爵閣下に。
公爵は、夜空を見上げるように視線を逸らし、ボソリと言った。
「……疲れた脳には、糖分が必要なのだ」
その瞬間。
誰かが「ぷっ」と吹き出した。
それを皮切りに、会場のあちこちから堪えきれない笑いが漏れ始めた。
「甘党……?」
「あの閣下が、桃のシロップ漬けを?」
「ゴミ箱から見つかったってことは、執務中にこっそり完食したのか?」
「なんか……可愛いな」
恐怖の対象だった「冷徹公爵」のイメージが、音を立てて崩壊(あるいは軟化)していく。
「ち、違いますぅ!」
リナ嬢が顔を真っ赤にして叫んだ。
「そ、そんなはずありません! だって、公爵様はメモリアさんにメロメロなんですよ!? あんなに冷たい人が、急に優しくなるなんておかしいじゃないですか!」
「リナ様」
私は冷静に切り返した。
「それは『論理の飛躍』です」
「えっ?」
「閣下が私に優しいのは、薬のせいでも何でもありません。単に、私が『有能』だからです」
私は眼鏡の位置を直した。
「私は閣下の求める書類を完璧に作成し、好みの紅茶(砂糖マシマシ)を淹れ、無駄な仕事を排除して定時帰宅を実現させました。上司が部下を評価し、大切にする。これは健全な雇用関係の結果であり、魔法など不要です」
「そ、そんなの……仕事だけの関係じゃないですか! 愛がないじゃないですか!」
リナ嬢が食い下がる。
愛。
その言葉が出た瞬間、アレクシス公爵の雰囲気が変わった。
彼は私の腰を抱いていた手に力を込め、グイッと引き寄せた。
「……仕事だけ、だと?」
低く、艶のある声。
さっきまでの「甘党バレ」の気恥ずかしさは消え、再び「雄」の顔に戻っている。
「勘違いするな。入り口は仕事だったかもしれんが……今は違う」
公爵は私の顎を指で持ち上げた。
至近距離で見つめ合う、黄金の瞳。
「メモリア。俺は、お前のその『可愛げのなさ』に救われている」
「……閣下?」
「媚びず、甘えず、ただ隣で背中を支えてくれる。……そんな女は、世界中探してもお前しかいない」
公爵は衆人環視の中で、私のこめかみに唇を寄せた。
チュッ、とあえて音を立てて口づける。
「キャァァァッ!」
令嬢たちが悲鳴を上げ、バタバタと倒れていく。
「これが薬の効果に見えるか? ……私の意志だ。私の全霊をかけて、この女を渇望している」
公爵は鋭い視線でリナと王妃を睨みつけた。
「これ以上、私のパートナーを愚弄してみろ。……その時は、国ごと氷漬けにしてやる」
本気の殺気。
会場の温度が一気に下がり、シャンデリアがガタガタと揺れる。
「ひっ……!」
リナ嬢は腰を抜かしてへたり込んだ。
カイル殿下は王妃様の後ろに隠れている。
王妃様でさえ、顔面蒼白で扇子を震わせていた。
「……わ、わかったわよ」
王妃様が掠れた声で言った。
「桃のシロップ……いえ、甘党の件は、見なかったことにしましょう。メモリアのことも、もう……ご勝手になさい!」
「賢明なご判断です」
公爵はニヤリと笑い、私に向き直った。
「帰るぞ、メモリア。……甘いものが食べたくなった」
「……さっきのシロップ、まだ残っているんですか?」
「いや、違う」
公爵は私の耳元で、甘く囁いた。
「お前だ」
「……残業代、弾んでくださいね」
私は顔が熱くなるのを必死で隠しながら、公爵のエスコートで会場を後にした。
背後では、リナ嬢が「覚えてらっしゃい! 次はこうはいかないわよぉ!」と負け惜しみを叫んでいたが、誰も相手にしていなかった。
完全勝利。
これにて一件落着――。
と、思いきや。
馬車に乗り込んだ瞬間、公爵が膝から崩れ落ちた。
「……終わった」
「閣下?」
「俺の『冷徹』イメージが……明日から『桃缶公爵』と呼ばれるかもしれん……」
公爵は頭を抱えて落ち込んでいた。
「大丈夫ですよ。ギャップ萌えという新しい市場を開拓しました」
「慰めになってないぞ」
「それに、あそこまで堂々と愛の告白をされたのです。誰も桃缶のことなど覚えていませんよ」
「……あれは本心だ」
公爵が顔を上げ、拗ねたように私を見た。
「お前、あそこで照れなかったな。やはり鉄の女だ」
「心拍数は上がっていましたよ。計算外の数値でした」
「ふん。……帰ったら確認させろ」
「何をです?」
「心拍数だ」
公爵の手が伸びてくる。
夜の馬車の中、私たちの「残業」はまだ続きそうだった。
*
一方、その頃。
屈辱にまみれたリナ男爵令嬢は、王城の庭で一人、地面を蹴りつけていた。
「むきーッ! なによあれ! なによメモリア!」
彼女の瞳は、どす黒く濁っていた。
「私のカイル様をバカにして、公爵様まで奪って……! 許さない、絶対に許さない!」
彼女は懐から、別の小瓶を取り出した。
それは先ほどのシロップとは違う、禍々しい紫色の液体が入った瓶だった。
「こうなったら、実力行使よ。……聖女の力(物理)、見せてあげるわ」
闇夜に響く、狂気じみた笑い声。
私の平穏な毎日は、まだもう少し先のことになりそうだ。
64
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように
柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」
笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。
夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。
幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。
王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~
スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」
王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。
伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。
婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。
それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。
――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。
「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」
リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。
彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。
絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。
彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。
「無能」と捨てられた少女は、神の愛し子だった――。 凍てつく北の地で始まる、聖獣たちと冷徹公爵による「世界一過保護な」逆転生活。
秦江湖
恋愛
魔法適性「鑑定」がすべてを決める、黄金の国ルミナリス。 名門ベルグラード公爵家の末娘アデリーンは、十五歳の鑑定式で、前代未聞の『鑑定不能(黒の沈黙)』を叩き出してしまう。
「我が家の恥さらしめ。二度とその顔を見せるな」
第一王子からは婚約破棄を突きつけられ、最愛の三人の兄たちからも冷酷な言葉とともに、極寒の地「ノースガル公国」へ追放を言い渡されたアデリーン。
着の身着のままで雪原に放り出された彼女が出会ったのは、一匹の衰弱した仔狼――それは、人間には決して懐かないはずの『伝説の聖獣』だった。
「鑑定不能」の正体は、魔力ゼロなどではなく、聖獣と心を通わせる唯一の力『調律師』の証。
行き倒れたアデリーンを救ったのは、誰もが恐れる氷の公爵ゼノスで……。
「こんなに尊い存在を捨てるとは、黄金の国の連中は正気か?」
「聖獣も、私も……お前を離すつもりはない」
氷の公爵に拾われ、聖獣たちに囲まれ、これまでの不遇が嘘のような「極上溺愛」を享受するアデリーン。
一方で、彼女を捨てた黄金の国は、聖獣の加護を失い崩壊の危機に直面していた。
慌ててアデリーンを連れ戻そうとする身勝手な王族たち。
しかし、彼らの前には「復讐」の準備を終えたアデリーンの兄たちが立ちはだかる。
「遅いよ。僕らのかわいい妹を泣かせた罪、一生かけて償ってもらうからね」
これは、すべてを失った少女が、真の居場所と愛を見つけるまでの物語。
辺境伯夫人は領地を紡ぐ
やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。
しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。
物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。
戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。
これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。
全50話の予定です
※表紙はイメージです
※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる