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「……おはようございます、アーニー。新紙幣の肖像画モデルへの就任、おめでとうございます。今やあなたは、バルマ王国の経済と芸術、両方の象徴です。本国のスパイ総本山からは『お前、もういっそあっちの女王になれよ』という、投げやりな指令が届いています」
窓から差し込む朝日は、今日も残酷なまでに輝いている。
私はシーツに顔を押し付け、情けない声を漏らした。
「嫌よ……女王なんて。私はただ、帝国で干し肉を齧りながら、のんびりとスパイ報告書を書く生活に戻りたいだけなのよ……」
「そんな呑気なことを言っている場合ではありません。干し肉蔵の爆破カウントダウンはすでに始まっています。そこで、今回は秘密兵器を用意しました」
セシルが部屋の隅に控えていた一人の少女を前に押し出した。
ふわふわした亜麻色の髪に、大きな瞳。
いかにも「守ってあげたい」と思わせるような、可憐な雰囲気の少女だ。
「彼女はルチア。帝国の演劇学校で万年落第生だった……いえ、将来を期待されていた、自称・演技派スパイです。彼女には『聖女』として、王子を誘惑し、あなたから奪うヒロイン役を演じてもらいます」
「は、初めまして……っ! ルチアですぅ! あ、足元が……きゃんっ!」
ルチアは何もない平らな床で派手に見転び、スカートを翻した。
……なるほど。これが帝国の誇る(?)「天然ドジっ子ヒロイン」の演技というわけね。
「いいですか、アーニー。王子の愛を壊すには、外部からの刺激が必要です。あなたがどれだけ悪女を演じてもダメなら、別の女に心を移させるしかありません。あなたがルチアを苛め、王子が彼女を庇う。その構図こそが、婚約破棄への最短ルートです」
「……わかったわ。ルチアさん、期待しているわよ。私の干し肉蔵の運命、貴方の肩にかかっているんだから!」
「お任せくださいぃ! 私、王子のハートをメロメロのギタギタにして見せますからぁ!」
数時間後。王宮の噴水広場。
私は計画通り、アルフレッド殿下との散歩中に、ルチアを「偶然」遭遇させた。
ルチアは手に持っていた花の籠をわざとらしくぶちまけ、殿下の足元に倒れ込む。
「……あら、大変! お怪我はありませんか、可哀想な町娘さん?」
私はわざとらしく高い声を出し、扇子で口元を隠した。
殿下は驚いたように足を止め、ルチアに手を貸そうとした。
「おっと、大丈夫かい? ひどい転び方だったけれど……」
「あ、あぅ……王子様……。私のような卑しい身分の者が、貴方様のようなお美しい方の目に触れるなんて……。……あ、あの、このお花、差し上げますぅ!」
ルチアは顔を真っ赤にし(これも演技だとしたら大したものだ)、震える手で一輪のバラを殿下に差し出した。
よし、いいわよルチア! そのまま殿下を誘惑して!
私はここぞとばかりに、二人の中間に割って入った。
「ちょっと! 何をしておりますの、この泥棒猫! 殿下に気安く触れるなんて、万死に値しますわ! さあ、殿下! こんな卑しい女、今すぐ追い払ってくださいまし! 私は不愉快ですわ!」
私はルチアの手からバラを奪い取り、地面に叩きつけようとした。
……はずだったのだが。
(……あ、待って。このバラ、すごく綺麗。殿下の瞳の色に似た、珍しい青いバラじゃない……。これを踏みつけるなんて、そんな、殿下への冒涜のようなこと、私にはできない……!)
私のスパイとしての指先が、土壇場で愛ゆえに硬直した。
私はバラを地面に叩きつける代わりに、それを大事そうに両手で包み込み、胸に抱きしめてしまった。
「……な、なんて素敵なバラですの! 殿下! この娘、貴方のためにこんなに素晴らしい花を用意してくれたんですのね! ああ、なんて健気な……! 感動いたしましたわ!」
「……えっ?」
ルチアが目を丸くして固まる。
背後でセシルが頭を抱える気配がした。
「……アーニー、君という人は。なんて心の広い人なんだ」
アルフレッド殿下は、私の肩を優しく抱き寄せ、聖母を見るような目で私を見つめた。
「君は、僕に近づこうとする女性を単に追い払うのではなく、その『真心』を真っ先に汲み取ってあげるんだね。……今の君の怒りは、彼女の身分を蔑んだからではない。彼女が僕に不作法をして、周りから責められるのを防ぐための、あえての『厳しいフリ』だったんだろう?」
「ち、違いますわ殿下! 私は単に嫉妬して、彼女を罵倒したかっただけで……!」
「隠さなくていい。君がそのバラを愛おしそうに抱きしめている姿が、何よりの証拠だ。……ルチアと言ったかい? 君は運がいい。アーニーのような慈悲深い女性に目をかけてもらえるなんて。……そうだ、アーニー。彼女を君の専属の『庭師見習い』として雇ったらどうかな?」
「……はぇっ!?」
「彼女の育てた花に、君がこれほど感動しているんだ。彼女を王宮に招けば、君の毎日がもっと色鮮やかになる。……君が喜ぶなら、僕はどんなことでもするよ」
殿下はルチアの手を取り、私と彼女の手を無理やり握らせた。
「さあ、二人で協力して、世界一美しい庭を作ってくれないか。アーニーが愛で、ルチアが育てる。……ああ、なんて平和で、なんて美しい光景なんだ!」
「お、王子様ぁ……! 私、頑張りますぅ!」
ルチアは殿下のあまりのカッコよさと、予想外の展開に、本気で目をキラキラさせて感激してしまった。
……ダメだ。まただ。
「浮気相手」として送り込んだはずの刺客が、殿下の光属性攻撃によって、あっさりと「私の部下」として浄化されてしまった。
通信機から、セシルの呪詛のような声が響く。
『アーニー。おめでとうございます。あなたの「嫉妬作戦」により、王宮の雇用創出がまた一つ増えました。……というか、あなた、自分の恋心をバラの花に投影して、うっとりしている場合ですか。……この、お花畑スパイめ』
「……そんな、私の嫉妬が、どうして『新人の育成支援』になっちゃうのよ……」
私は殿下とルチアに挟まれ、三人で仲良く庭園を散歩することになった。
ルチアはすでにスパイの任務を忘れ、殿下にどの花が似合うかの相談に夢中になっている。
私の「婚約破棄への道」は、またしても新しい「仲間の登場」によって、より一層賑やかで、より一層強固なものへと作り替えられてしまったのである。
そして翌日、王宮では『アーニー様と愉快な聖女様による、愛のガーデニング教室』の開催が告知された。
窓から差し込む朝日は、今日も残酷なまでに輝いている。
私はシーツに顔を押し付け、情けない声を漏らした。
「嫌よ……女王なんて。私はただ、帝国で干し肉を齧りながら、のんびりとスパイ報告書を書く生活に戻りたいだけなのよ……」
「そんな呑気なことを言っている場合ではありません。干し肉蔵の爆破カウントダウンはすでに始まっています。そこで、今回は秘密兵器を用意しました」
セシルが部屋の隅に控えていた一人の少女を前に押し出した。
ふわふわした亜麻色の髪に、大きな瞳。
いかにも「守ってあげたい」と思わせるような、可憐な雰囲気の少女だ。
「彼女はルチア。帝国の演劇学校で万年落第生だった……いえ、将来を期待されていた、自称・演技派スパイです。彼女には『聖女』として、王子を誘惑し、あなたから奪うヒロイン役を演じてもらいます」
「は、初めまして……っ! ルチアですぅ! あ、足元が……きゃんっ!」
ルチアは何もない平らな床で派手に見転び、スカートを翻した。
……なるほど。これが帝国の誇る(?)「天然ドジっ子ヒロイン」の演技というわけね。
「いいですか、アーニー。王子の愛を壊すには、外部からの刺激が必要です。あなたがどれだけ悪女を演じてもダメなら、別の女に心を移させるしかありません。あなたがルチアを苛め、王子が彼女を庇う。その構図こそが、婚約破棄への最短ルートです」
「……わかったわ。ルチアさん、期待しているわよ。私の干し肉蔵の運命、貴方の肩にかかっているんだから!」
「お任せくださいぃ! 私、王子のハートをメロメロのギタギタにして見せますからぁ!」
数時間後。王宮の噴水広場。
私は計画通り、アルフレッド殿下との散歩中に、ルチアを「偶然」遭遇させた。
ルチアは手に持っていた花の籠をわざとらしくぶちまけ、殿下の足元に倒れ込む。
「……あら、大変! お怪我はありませんか、可哀想な町娘さん?」
私はわざとらしく高い声を出し、扇子で口元を隠した。
殿下は驚いたように足を止め、ルチアに手を貸そうとした。
「おっと、大丈夫かい? ひどい転び方だったけれど……」
「あ、あぅ……王子様……。私のような卑しい身分の者が、貴方様のようなお美しい方の目に触れるなんて……。……あ、あの、このお花、差し上げますぅ!」
ルチアは顔を真っ赤にし(これも演技だとしたら大したものだ)、震える手で一輪のバラを殿下に差し出した。
よし、いいわよルチア! そのまま殿下を誘惑して!
私はここぞとばかりに、二人の中間に割って入った。
「ちょっと! 何をしておりますの、この泥棒猫! 殿下に気安く触れるなんて、万死に値しますわ! さあ、殿下! こんな卑しい女、今すぐ追い払ってくださいまし! 私は不愉快ですわ!」
私はルチアの手からバラを奪い取り、地面に叩きつけようとした。
……はずだったのだが。
(……あ、待って。このバラ、すごく綺麗。殿下の瞳の色に似た、珍しい青いバラじゃない……。これを踏みつけるなんて、そんな、殿下への冒涜のようなこと、私にはできない……!)
私のスパイとしての指先が、土壇場で愛ゆえに硬直した。
私はバラを地面に叩きつける代わりに、それを大事そうに両手で包み込み、胸に抱きしめてしまった。
「……な、なんて素敵なバラですの! 殿下! この娘、貴方のためにこんなに素晴らしい花を用意してくれたんですのね! ああ、なんて健気な……! 感動いたしましたわ!」
「……えっ?」
ルチアが目を丸くして固まる。
背後でセシルが頭を抱える気配がした。
「……アーニー、君という人は。なんて心の広い人なんだ」
アルフレッド殿下は、私の肩を優しく抱き寄せ、聖母を見るような目で私を見つめた。
「君は、僕に近づこうとする女性を単に追い払うのではなく、その『真心』を真っ先に汲み取ってあげるんだね。……今の君の怒りは、彼女の身分を蔑んだからではない。彼女が僕に不作法をして、周りから責められるのを防ぐための、あえての『厳しいフリ』だったんだろう?」
「ち、違いますわ殿下! 私は単に嫉妬して、彼女を罵倒したかっただけで……!」
「隠さなくていい。君がそのバラを愛おしそうに抱きしめている姿が、何よりの証拠だ。……ルチアと言ったかい? 君は運がいい。アーニーのような慈悲深い女性に目をかけてもらえるなんて。……そうだ、アーニー。彼女を君の専属の『庭師見習い』として雇ったらどうかな?」
「……はぇっ!?」
「彼女の育てた花に、君がこれほど感動しているんだ。彼女を王宮に招けば、君の毎日がもっと色鮮やかになる。……君が喜ぶなら、僕はどんなことでもするよ」
殿下はルチアの手を取り、私と彼女の手を無理やり握らせた。
「さあ、二人で協力して、世界一美しい庭を作ってくれないか。アーニーが愛で、ルチアが育てる。……ああ、なんて平和で、なんて美しい光景なんだ!」
「お、王子様ぁ……! 私、頑張りますぅ!」
ルチアは殿下のあまりのカッコよさと、予想外の展開に、本気で目をキラキラさせて感激してしまった。
……ダメだ。まただ。
「浮気相手」として送り込んだはずの刺客が、殿下の光属性攻撃によって、あっさりと「私の部下」として浄化されてしまった。
通信機から、セシルの呪詛のような声が響く。
『アーニー。おめでとうございます。あなたの「嫉妬作戦」により、王宮の雇用創出がまた一つ増えました。……というか、あなた、自分の恋心をバラの花に投影して、うっとりしている場合ですか。……この、お花畑スパイめ』
「……そんな、私の嫉妬が、どうして『新人の育成支援』になっちゃうのよ……」
私は殿下とルチアに挟まれ、三人で仲良く庭園を散歩することになった。
ルチアはすでにスパイの任務を忘れ、殿下にどの花が似合うかの相談に夢中になっている。
私の「婚約破棄への道」は、またしても新しい「仲間の登場」によって、より一層賑やかで、より一層強固なものへと作り替えられてしまったのである。
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