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「……眩しい。眩しすぎるわ」
王城の舞踏会場。
私はシャンデリアの下で、扇子を広げて満足げに呟いた。
私の指示によって徹底的に磨き上げられた床は、まるで鏡のように天井の光を反射している。
そこへ、私のドレス『ギャラクシー・ダイヤモンド・ダスト(銀河の粉塵)』が放つ輝きが加わり、会場内は真昼のような明るさに包まれていた。
「どう、ジェラルド? これが本来あるべき王宮の姿よ」
「ああ、そうだな。サングラスを持ってこなかったのが悔やまれるよ」
隣に立つジェラルドが、苦笑しながらも私の腰に手を添える。
今夜は、私の帰国(という名の殴り込み)を記念して、急遽開催された歓迎パーティだ。
主催者は実質的に私。
カイル殿下は「そんな金はない!」と渋ったが、私が「香水の売上から貸してあげるわ。利子はトイチよ」とねじ伏せたのだ。
会場には、王国の主要な貴族たちが勢揃いしていた。
彼らの視線は、私とジェラルドに釘付けだ。
「あれがニアン様か……以前より美しさが増していないか?」
「隣国で『女神』と呼ばれているらしいぞ」
「隣のジェラルド殿下とお似合いだわ……」
かつて私を断罪し、嘲笑った連中もいるはずだが、今の圧倒的なオーラの前では沈黙するしかないようだ。
私は余裕の笑みで、彼らに手を振った。
「ごきげんよう、皆様。久しぶりの我が家はどう? 空気が美味しいでしょう? 私が浄化したからよ」
「お、おお……ニアン様、万歳!」
「美しいです!」
現金なものだ。
人は強い光に集まる蛾(が)のようなものね。
しかし、そんな祝祭ムードをぶち壊そうとする不協和音が、会場の隅から響いてきた。
「……ひどい。あんまりですぅ」
湿っぽい声と共に、人垣が割れる。
現れたのは、ピンク色のドレスを着た聖女リナだった。
彼女の目は赤く腫れ、手にはハンカチが握りしめられている。
後ろには、気まずそうな顔をしたカイル殿下が控えていた。
「あら、リナさん。遅刻よ。主役(私)より後に登場するなんて、マナー違反もいいところね」
私が冷たく指摘すると、リナは大げさに肩を震わせた。
「遅刻したくてしたんじゃありません! ニアン様が……ニアン様が、私に酷いことをさせたから……!」
リナはその場で泣き崩れた。
会場がざわつく。
お得意の被害者ムーブだ。
かつてはこれで私の評判を地に落とした必殺技ね。
「聞いてください、皆様! ニアン様は帰ってくるなり、聖女である私に雑巾がけを命じたんです! 『トイレの便器を舐められるくらい綺麗にしなさい』って……! 私の手、こんなに荒れちゃって……ううっ!」
リナがささくれだった指先を周囲に見せる。
貴族たちがヒソヒソと囁き合う。
「トイレ掃除? 聖女様に?」
「さすがにそれは厳しすぎるのでは……」
「やはりニアン嬢は性格がキツイのか……」
空気が少しリナの方へ傾きかけた。
カイル殿下がここぞとばかりに前に出る。
「そうだ! ニアン、貴様はやりすぎだ! リナは国を護る聖女だぞ! それをメイドのように扱うなど、不敬罪に当たる!」
二人は勝ち誇ったような顔をした。
この展開、懐かしいわね。
断罪イベントの再演ってわけ?
でも残念。
今の私は、あの頃のように黙って傷つくウブな令嬢じゃない。
「……プッ」
私は扇子で口元を隠し、吹き出した。
「な、何がおかしい!」
「ごめんなさい。あまりにも演技が安っぽくて、つい」
私はジェラルドからシャンパングラスを受け取り、優雅に一口飲んだ。
「リナさん。貴女、女優を目指すなら劇団に入り直した方がいいわ。泣き方が古臭いのよ。『ううっ』なんて擬音、今の時代のヒロインは言わないわ」
「えっ……」
リナが顔を上げる。
「それに、トイレ掃除? 人聞きが悪いわね。私は『心の汚れを落とす修行』を提案しただけよ。神殿でも掃除は修行の基本でしょう? それを不服と言うなら、貴女の信仰心はその程度ってことかしら」
「そ、それは……」
「手が荒れた? 名誉の負傷じゃない。むしろ『私はこれだけ国のために尽くしました』という勲章よ。それを恥じて隠そうとするなんて、労働への冒涜だわ」
私の論理のすり替え(詭弁とも言う)に、リナは口をパクパクさせている。
周囲の空気もまた変わり始めた。
「確かに……掃除は修行の一環だな」
「聖女様なら、むしろ率先してやるべきでは?」
「手が荒れるほど掃除をしたなんて、逆に尊いかも……」
「なっ、なんでそうなるんですかぁ!?」
リナが焦りの声を上げる。
予想外の反応に、彼女の計算が狂い始めたようだ。
「くっ……まだだ! これを見ろ!」
カイル殿下が、懐からボロボロになったドレスを取り出した。
それはリナが以前着ていたものだ。
「ニアン! 貴様、リナの大事なドレスを切り裂いただろう! 部屋からハサミが見つかったぞ!」
再び会場がざわつく。
器物損壊。
これは言い逃れできない……と思っているのね?
私はそのドレスを一瞥し、ため息をついた。
「切り裂いた? 違うわ。リメイクよ」
「は?」
「そのドレス、デザインが三年前の流行だったの。しかもウエストのラインが今のリナさんの体型に合っていなかった。だから私が、親切心で裁断して、最新のシルエットに修正しようとしていただけよ」
「修正だと!?」
「ええ。途中で『あ、この生地、質が悪すぎて救いようがないわ』と気づいて諦めたけれど。感謝してほしいくらいね。あんなダサいドレスを着て恥をかくところを、私が未然に防いであげたんだから」
「き、貴様……ッ! なんでも自分の都合のいいように解釈しやがって!」
殿下の顔が真っ赤になる。
「都合がいい? 当然よ。世界は私を中心に回っているんだから」
私は胸を張った。
ジェラルドが横で「その通りだ」と深く頷いているのが心強い(というか面白い)。
リナは震えていた。
自分の武器である「涙」も「被害報告」も、全て私のポジティブ変換によって無効化されてしまう。
追い詰められた彼女は、ついに禁じ手に出た。
「……許さない」
リナの表情から、可愛らしい聖女の仮面が剥がれ落ちた。
「許さないわよ、ニアン! あんたさえいなければ、私はカイル様と幸せになれたのに! なんで戻ってきたのよ! なんでそんなにキラキラしてるのよ!」
彼女は近くのテーブルにあったワインボトルを掴んだ。
そして、なりふり構わず私に向かって投げつけた。
「死ねぇぇぇっ!」
「ニアン!」
ジェラルドが動こうとする。
しかし、私は片手で彼を制した。
ヒュンッ!
ボトルが空を切る。
私の顔面を直撃……するはずだった。
しかし私は、扇子を開く動作一つで、その軌道をわずかに逸らした。
風圧か、あるいは偶然か。
ボトルは私の頬を掠めることもなく、私の背後にあった巨大な鏡に直撃した。
ガシャンッ!!
鏡が粉々に砕け散る。
「あっ……」
リナが動きを止める。
会場が静まり返る。
私が一番大切にしている「鏡」が割れた。
これは、私が激怒するパターンだと誰もが思っただろう。
しかし。
「……美しいわ」
私は砕け散った鏡の破片を見つめ、うっとりと呟いた。
「え?」
リナが間の抜けた声を出す。
「見て、ジェラルド。床に散らばった無数の破片。その一つ一つに、私の顔が映っているわ」
私は床を指差した。
「今までは一枚の鏡に私一人しか映らなかったけれど、これなら一万人の私と目が合うことができる。万華鏡のようね。リナさん、貴女、意外と芸術的なセンスがあるじゃない」
「は……はぁ!? 意味わかんない!」
リナが髪をかきむしる。
「なんで怒らないのよ! 普通怒るでしょ!? 大事な鏡割ったのよ!?」
「怒る? 凡人の感情ね」
私はリナに近づいた。
彼女は後ずさる。
「私はね、自分を映す媒体が増えたことを喜んでいるの。それに、貴女のその鬼のような形相……やっと本性を見せたわね」
私は冷ややかに微笑んだ。
「聖女の仮面を被ったただの嫉妬深い女。それが貴女の正体よ。さっきまでの安いお芝居より、今の狂った顔の方がよっぽど人間らしくて『映え』ているわよ?」
「ひっ……」
リナは周囲を見渡した。
貴族たちの視線は、もはや同情ではなく、軽蔑と恐怖に変わっていた。
ワインボトルを投げつけ、暴言を吐く聖女。
その姿は、誰の目にも醜悪に映ったはずだ。
「あ、あの……違うんです、これは……」
リナが取り繕おうとするが、もう遅い。
「お芝居は終わりよ、リナさん。カーテンコールはないわ」
私はトドメとばかりに宣告した。
「貴女には、私という悪役令嬢のライバル役すら荷が重いわ。舞台から降りて、観客席で私の美しさを指をくわえて見ていなさい」
「いやぁぁぁッ!」
リナはその場に泣き崩れ、もはや立ち上がる気力も失ったようだった。
カイル殿下も、完全に戦意を喪失して立ち尽くしている。
「……勝負ありだな」
ジェラルドが私の肩に手を置く。
「お前のメンタルの強さは、もはや兵器レベルだ。国一つ滅ぼせるぞ」
「あら、私は創造の女神よ。滅ぼすのは、ダサいセンスと古い価値観だけ」
私は砕けた鏡の破片を一つ拾い上げ、自分の顔を映した。
うん、今日も完璧。
「さあ、音楽を! シラけた空気を吹き飛ばすのよ! 今夜は私の勝利の宴(うたげ)だわ!」
楽団が慌てて演奏を再開する。
私の合図で、再びパーティが動き出す。
床にうずくまるリナと、呆然とするカイル殿下は、華やかな光の輪の外へと取り残されていった。
自滅。
まさにその言葉通りの結末。
私に手を出そうなんて、100万年早かったのよ。
王城の舞踏会場。
私はシャンデリアの下で、扇子を広げて満足げに呟いた。
私の指示によって徹底的に磨き上げられた床は、まるで鏡のように天井の光を反射している。
そこへ、私のドレス『ギャラクシー・ダイヤモンド・ダスト(銀河の粉塵)』が放つ輝きが加わり、会場内は真昼のような明るさに包まれていた。
「どう、ジェラルド? これが本来あるべき王宮の姿よ」
「ああ、そうだな。サングラスを持ってこなかったのが悔やまれるよ」
隣に立つジェラルドが、苦笑しながらも私の腰に手を添える。
今夜は、私の帰国(という名の殴り込み)を記念して、急遽開催された歓迎パーティだ。
主催者は実質的に私。
カイル殿下は「そんな金はない!」と渋ったが、私が「香水の売上から貸してあげるわ。利子はトイチよ」とねじ伏せたのだ。
会場には、王国の主要な貴族たちが勢揃いしていた。
彼らの視線は、私とジェラルドに釘付けだ。
「あれがニアン様か……以前より美しさが増していないか?」
「隣国で『女神』と呼ばれているらしいぞ」
「隣のジェラルド殿下とお似合いだわ……」
かつて私を断罪し、嘲笑った連中もいるはずだが、今の圧倒的なオーラの前では沈黙するしかないようだ。
私は余裕の笑みで、彼らに手を振った。
「ごきげんよう、皆様。久しぶりの我が家はどう? 空気が美味しいでしょう? 私が浄化したからよ」
「お、おお……ニアン様、万歳!」
「美しいです!」
現金なものだ。
人は強い光に集まる蛾(が)のようなものね。
しかし、そんな祝祭ムードをぶち壊そうとする不協和音が、会場の隅から響いてきた。
「……ひどい。あんまりですぅ」
湿っぽい声と共に、人垣が割れる。
現れたのは、ピンク色のドレスを着た聖女リナだった。
彼女の目は赤く腫れ、手にはハンカチが握りしめられている。
後ろには、気まずそうな顔をしたカイル殿下が控えていた。
「あら、リナさん。遅刻よ。主役(私)より後に登場するなんて、マナー違反もいいところね」
私が冷たく指摘すると、リナは大げさに肩を震わせた。
「遅刻したくてしたんじゃありません! ニアン様が……ニアン様が、私に酷いことをさせたから……!」
リナはその場で泣き崩れた。
会場がざわつく。
お得意の被害者ムーブだ。
かつてはこれで私の評判を地に落とした必殺技ね。
「聞いてください、皆様! ニアン様は帰ってくるなり、聖女である私に雑巾がけを命じたんです! 『トイレの便器を舐められるくらい綺麗にしなさい』って……! 私の手、こんなに荒れちゃって……ううっ!」
リナがささくれだった指先を周囲に見せる。
貴族たちがヒソヒソと囁き合う。
「トイレ掃除? 聖女様に?」
「さすがにそれは厳しすぎるのでは……」
「やはりニアン嬢は性格がキツイのか……」
空気が少しリナの方へ傾きかけた。
カイル殿下がここぞとばかりに前に出る。
「そうだ! ニアン、貴様はやりすぎだ! リナは国を護る聖女だぞ! それをメイドのように扱うなど、不敬罪に当たる!」
二人は勝ち誇ったような顔をした。
この展開、懐かしいわね。
断罪イベントの再演ってわけ?
でも残念。
今の私は、あの頃のように黙って傷つくウブな令嬢じゃない。
「……プッ」
私は扇子で口元を隠し、吹き出した。
「な、何がおかしい!」
「ごめんなさい。あまりにも演技が安っぽくて、つい」
私はジェラルドからシャンパングラスを受け取り、優雅に一口飲んだ。
「リナさん。貴女、女優を目指すなら劇団に入り直した方がいいわ。泣き方が古臭いのよ。『ううっ』なんて擬音、今の時代のヒロインは言わないわ」
「えっ……」
リナが顔を上げる。
「それに、トイレ掃除? 人聞きが悪いわね。私は『心の汚れを落とす修行』を提案しただけよ。神殿でも掃除は修行の基本でしょう? それを不服と言うなら、貴女の信仰心はその程度ってことかしら」
「そ、それは……」
「手が荒れた? 名誉の負傷じゃない。むしろ『私はこれだけ国のために尽くしました』という勲章よ。それを恥じて隠そうとするなんて、労働への冒涜だわ」
私の論理のすり替え(詭弁とも言う)に、リナは口をパクパクさせている。
周囲の空気もまた変わり始めた。
「確かに……掃除は修行の一環だな」
「聖女様なら、むしろ率先してやるべきでは?」
「手が荒れるほど掃除をしたなんて、逆に尊いかも……」
「なっ、なんでそうなるんですかぁ!?」
リナが焦りの声を上げる。
予想外の反応に、彼女の計算が狂い始めたようだ。
「くっ……まだだ! これを見ろ!」
カイル殿下が、懐からボロボロになったドレスを取り出した。
それはリナが以前着ていたものだ。
「ニアン! 貴様、リナの大事なドレスを切り裂いただろう! 部屋からハサミが見つかったぞ!」
再び会場がざわつく。
器物損壊。
これは言い逃れできない……と思っているのね?
私はそのドレスを一瞥し、ため息をついた。
「切り裂いた? 違うわ。リメイクよ」
「は?」
「そのドレス、デザインが三年前の流行だったの。しかもウエストのラインが今のリナさんの体型に合っていなかった。だから私が、親切心で裁断して、最新のシルエットに修正しようとしていただけよ」
「修正だと!?」
「ええ。途中で『あ、この生地、質が悪すぎて救いようがないわ』と気づいて諦めたけれど。感謝してほしいくらいね。あんなダサいドレスを着て恥をかくところを、私が未然に防いであげたんだから」
「き、貴様……ッ! なんでも自分の都合のいいように解釈しやがって!」
殿下の顔が真っ赤になる。
「都合がいい? 当然よ。世界は私を中心に回っているんだから」
私は胸を張った。
ジェラルドが横で「その通りだ」と深く頷いているのが心強い(というか面白い)。
リナは震えていた。
自分の武器である「涙」も「被害報告」も、全て私のポジティブ変換によって無効化されてしまう。
追い詰められた彼女は、ついに禁じ手に出た。
「……許さない」
リナの表情から、可愛らしい聖女の仮面が剥がれ落ちた。
「許さないわよ、ニアン! あんたさえいなければ、私はカイル様と幸せになれたのに! なんで戻ってきたのよ! なんでそんなにキラキラしてるのよ!」
彼女は近くのテーブルにあったワインボトルを掴んだ。
そして、なりふり構わず私に向かって投げつけた。
「死ねぇぇぇっ!」
「ニアン!」
ジェラルドが動こうとする。
しかし、私は片手で彼を制した。
ヒュンッ!
ボトルが空を切る。
私の顔面を直撃……するはずだった。
しかし私は、扇子を開く動作一つで、その軌道をわずかに逸らした。
風圧か、あるいは偶然か。
ボトルは私の頬を掠めることもなく、私の背後にあった巨大な鏡に直撃した。
ガシャンッ!!
鏡が粉々に砕け散る。
「あっ……」
リナが動きを止める。
会場が静まり返る。
私が一番大切にしている「鏡」が割れた。
これは、私が激怒するパターンだと誰もが思っただろう。
しかし。
「……美しいわ」
私は砕け散った鏡の破片を見つめ、うっとりと呟いた。
「え?」
リナが間の抜けた声を出す。
「見て、ジェラルド。床に散らばった無数の破片。その一つ一つに、私の顔が映っているわ」
私は床を指差した。
「今までは一枚の鏡に私一人しか映らなかったけれど、これなら一万人の私と目が合うことができる。万華鏡のようね。リナさん、貴女、意外と芸術的なセンスがあるじゃない」
「は……はぁ!? 意味わかんない!」
リナが髪をかきむしる。
「なんで怒らないのよ! 普通怒るでしょ!? 大事な鏡割ったのよ!?」
「怒る? 凡人の感情ね」
私はリナに近づいた。
彼女は後ずさる。
「私はね、自分を映す媒体が増えたことを喜んでいるの。それに、貴女のその鬼のような形相……やっと本性を見せたわね」
私は冷ややかに微笑んだ。
「聖女の仮面を被ったただの嫉妬深い女。それが貴女の正体よ。さっきまでの安いお芝居より、今の狂った顔の方がよっぽど人間らしくて『映え』ているわよ?」
「ひっ……」
リナは周囲を見渡した。
貴族たちの視線は、もはや同情ではなく、軽蔑と恐怖に変わっていた。
ワインボトルを投げつけ、暴言を吐く聖女。
その姿は、誰の目にも醜悪に映ったはずだ。
「あ、あの……違うんです、これは……」
リナが取り繕おうとするが、もう遅い。
「お芝居は終わりよ、リナさん。カーテンコールはないわ」
私はトドメとばかりに宣告した。
「貴女には、私という悪役令嬢のライバル役すら荷が重いわ。舞台から降りて、観客席で私の美しさを指をくわえて見ていなさい」
「いやぁぁぁッ!」
リナはその場に泣き崩れ、もはや立ち上がる気力も失ったようだった。
カイル殿下も、完全に戦意を喪失して立ち尽くしている。
「……勝負ありだな」
ジェラルドが私の肩に手を置く。
「お前のメンタルの強さは、もはや兵器レベルだ。国一つ滅ぼせるぞ」
「あら、私は創造の女神よ。滅ぼすのは、ダサいセンスと古い価値観だけ」
私は砕けた鏡の破片を一つ拾い上げ、自分の顔を映した。
うん、今日も完璧。
「さあ、音楽を! シラけた空気を吹き飛ばすのよ! 今夜は私の勝利の宴(うたげ)だわ!」
楽団が慌てて演奏を再開する。
私の合図で、再びパーティが動き出す。
床にうずくまるリナと、呆然とするカイル殿下は、華やかな光の輪の外へと取り残されていった。
自滅。
まさにその言葉通りの結末。
私に手を出そうなんて、100万年早かったのよ。
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