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11:水面
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第一班の面々は、雨の中町を東奔西走していた。路地裏を確認しながら歩く星々の通信に二班班長からの通信が入る。それを全て聞き、安堵したよう様子で星々は一班全員へ通信をいいれる。
『こちら、琉聖。今、通信で二班から優吾君に関する報告があった。』
通信を聞いている三人は足を止めた。
「晴山は大丈夫何ですか?」
鬼気迫った彩虹寺の声はマイク越しにひび割れる。それに驚いた双子は顔を少しこわばらせて通信に戻る。
「よかったですね。では、私と凪ちゃんは本部へ戻りますね。」
『そうだね、丁度、二班班長も本部へ優吾君を連れてくるみたいだから、彩虹寺ちゃんも戻ろうか……っ!!』
星々が通信を切ろうとすると、ノイズが走る。
「お兄様?大丈夫ですか?」
星々はそのまま通信をぶつ切りにする。夢希はそのぶつ切りに慌てて星々の位置を確認する。
「ここは……路地裏?」
夢希の見る画面の星々の位置は優吾とは別の路地裏の位置が表示されていた。夢希は凪へ個別通信をつなげる。
「凪ちゃん。お兄様に何かあった様なので向かいますよ。」
『分かった。副班長には言わなくてもいい?』
夢希は少し考えた後に声を出す。
「いえ、彼女には晴山さんを任せましょう。監視役ですし。」
『うわぁ……それって後でおにぃに絶対怒られるやつでしょ……』
「お兄様に万が一のことがあれば私は……」
『分かった。行こう。でも怒られる覚悟してよね。』
「もちろんです。」
────────────
は?なにが起こった?
状況を飲み込めずに突いた膝を上げようと足に力を入れるがうまく立てない。
熱は喉を這い上がり、やがて口元から吹き出している。
やがて、胸の熱が梅雨の空気に触れ寒気を催す。背筋にも悪寒が走り抜けていった。
あ、これ、やばい、死ぬ。
これは死ぬ。
本能で理解した。
これはまずいと。
だが、目の前にはすでに魚の魔族が……
『いいのか?諦めて……』
女性の声が聞こえてきた。透き通るような声。だが、どこか力強い声。そんな声は水の中にいるような感覚に陥る。
「諦めるわきゃねぇだろぅ……」
吐血しながら、俺は両足に力を込める。
『よく言ったぞ、少年。詠唱しろ。』
こんなこと、一週間くらい前にもあった気がする。など考えているが、もはやそんなことは気にしていられない。今は、目の前のこいつをどうにかする。頭に流れてくる詠唱文を吐血しながら口に出す。
──────明鏡止水の心、揺らめく水面の如く
邪なる心、浄める様に──────
「心知り、心を鎮める。」
目の前に水のベールがかかる。そのベールは俺自体にもかかり、赤く汚れているであろう鎧に、傷を塞ぐように左胸に入っていく。やがて、赤く汚れた鎧は水色に、そしてその形を変える。傷はふさがり体には熱が走り始める。そのすべての工程が終了し、俺は水のベールを引く。
「水化魔装……」
水を纏った魚を模した鎧。鎧と言うかコートを纏った感覚に近い。見た目も鎧と言うよりもコートと言った方が納得するものだ。水面に映る自分を見てから、迫ってきていた魚魔族のつかみかかりをいなす。いなされた魚魔族はそのまま水球を纏った足でかかと落としをしてくる。その攻撃もいなす。その後も攻撃を仕掛けてくる魔族をいなし、踊り、舞う。
「なんだ、この魔装……」
体がおかしい。相手の攻撃や殺気を感じ取ると自動的にいなし、かわす。だが、それだけだ。こちらから攻めようとすると、うまく体を動かせない。そして、また、声が聞こえてくる。
『Don't think Feel』
考えるな、感じろ?何を?
『Don't think Feel』
その間も魚魔族は攻撃をやめない。俺は何も分からず、言われた通りに考えるのをやめる。
思考の海。沈む感覚。水面を下から見る感覚。
そんな感覚で全身の力が抜ける。しかし、足は、腕は、体はしっかりと立って、構え、力が入っている。
魚魔族は数手前のつかみかかり攻撃をしてきたがその腕を掴み、思い切り引っ張る。
その反動でゼロ距離になった魔族の胸に肩をぶつけて打撃を行う。その反動で体勢を崩した魔族は体勢を崩しながら、水球を投げてくる。その水球を迎え撃つのではなく、水球を回転させて射出威力を落としながら、上へ上へ持っていく。
威力が完全に落ちた水球は回転がかかりながらボールの様に落ちようとする。その水球を落とさないように俺は水球を回転させる。それを指先に移す。それを見た魚魔族は水球を落とそうとこちらへ襲いかかってくる。俺は水球を落とさない様に魚魔族をかわす。そして、そんなことが数分続き、俺はその水球から指を手を離す。回転でできた空気。その空気を利用し、俺は水球を押し出す。魚魔族へ向けて。水球は魚魔族へぶつかり、そして、弾けた。水球が命中した魚魔族は倒れる。
「まだだな。」
そういうと魚魔族は立ち上がり液状化し、地面へ溶けて消えていった。殺気がなくなると同時に俺は気が抜ける。
「ほああぁぁ……」
「大丈夫?」
駆け寄ってきた女性の手を取り俺は立ち上がる。そして、路地の明るい方へ目を向けると、見覚えのある制服を着た四人がいた。最初に俺を捕まえようとした人たちだ。ピアスがワイヤーを俺に巻き付ける。
「お、俺、一般人ですけど?」
「バレる嘘はよくないねぇ……ボクら面識あるよね?」
バレてたか……まぁ当たり前だな。俺は抵抗をしない意志を示すため、その場に座る。それを察したのか、ピアスの人は残りの三人に指示を出す。
「三人は、葵さんの保護。ボクは、彼を本部へ連行する。」
「了解。」
三人は葵と呼ばれた女性へ駆け寄り俺と葵さんは離される。葵さんは俺の方へ視線と指を差し、何かを言っているようだが、距離が離れていき、その内容はうまく聞き取れなかった。
「さ、行こう………と、その前にこちら、二班。例の少年を保護……うん、分かった。……うん、よろしくね~」
誰かに通信を入れたピアスはワイヤーを解く。ピアスの方を見るが、嘘っぽく笑うだけでそのあとは何もない。俺はそのまま車に乗り魔法対策機関本部へと連れて行かれた。数分後に本部へ着くと濡れた髪をタオルで拭いている彩虹寺がいた。ピアスさんは彩虹寺へ近づき、俺の背中を押す。
「んじゃ、ボクは任務に戻るね。」
「天々望さんありがとうございます。」
天々望って珍しい苗字だなと思いながら背中に衝撃と痛みが走る。後ろを振り向くと彩虹寺がこちらをにらみつけていた。
確かに、今回のことは申し訳なく思う。俺の監視は恐らく、いや確実に延長だろう。俺はそのまま彩虹寺に病室へと連れて行かれる。
「ちょ、なんだよ。」
「怪我しているだろう。行くぞ。」
「まてまて、怪我はしたけど、治ったから。」
ボロボロになった制服を見て気づいた。そういえば、あの魚魔族の攻撃で瀕死の状態だったのを魔装で治したのを思い出す。病室へ着いた俺は女医へと差し出される。
赤茶色に汚れた制服をはがされ、色々な検査をされ、最終t系に出た結果は、
「い、異常なしですか……」
「うん、ただ、心臓部分の細胞だけどね、まるで新しく作られたかのような配列になっているね。」
「と、言いますと?」
「ん~なんていうんだろうね。切り取りられた箇所に全く同じ様に同じような細胞を張り付けられている……?ん~何だろうね。言葉で表そうとすると科学とか、化学とか医学とかの細かい専門用語の解説空になるから簡単に……そうだなぁ……裁縫で空いた穴をワッペンとかで塞ぐでしょ?アレに近いのかなぁ?」
つまり、心臓に空いていたはずの穴は再生という形ではなく、修正という形でふたをされているということなのだろうか。当人である俺も頭をひねる。
「とにかく、他には何も異常はないね。」
「分かりました。ありがとうございます。博子さん。」
「うん、またなんかあったらおいで。」
俺と彩虹寺は病室を後にして、他の一班の皆を待つことにした。
「自分から叱られに行くのか?」
「いやぁ、そういうわけじゃないが……取り合えず、喉が乾いたから飲み物がほしい。」
先ほどから喉が渇いて仕方がない。異常な喉の渇きを抑えるため、俺はポケットから湿った財布を取り出し、自販機を探す。
「ここにはないぞ。外の本部前のビルの入口にしかない。」
「マジか……彩虹寺ついてきてくれ。」
「なぜ?」
怪訝な表情に俺は気まずくなるが、彩虹寺の手を引く。
「監視役だろ。俺がまた逃げてもいいのか?」
「分かった……逃げるなよ?」
眉間にシワの寄った彩虹寺に殺気を感じながら俺は彩虹寺と一緒に本部の出入り口を出た。
11:了
『こちら、琉聖。今、通信で二班から優吾君に関する報告があった。』
通信を聞いている三人は足を止めた。
「晴山は大丈夫何ですか?」
鬼気迫った彩虹寺の声はマイク越しにひび割れる。それに驚いた双子は顔を少しこわばらせて通信に戻る。
「よかったですね。では、私と凪ちゃんは本部へ戻りますね。」
『そうだね、丁度、二班班長も本部へ優吾君を連れてくるみたいだから、彩虹寺ちゃんも戻ろうか……っ!!』
星々が通信を切ろうとすると、ノイズが走る。
「お兄様?大丈夫ですか?」
星々はそのまま通信をぶつ切りにする。夢希はそのぶつ切りに慌てて星々の位置を確認する。
「ここは……路地裏?」
夢希の見る画面の星々の位置は優吾とは別の路地裏の位置が表示されていた。夢希は凪へ個別通信をつなげる。
「凪ちゃん。お兄様に何かあった様なので向かいますよ。」
『分かった。副班長には言わなくてもいい?』
夢希は少し考えた後に声を出す。
「いえ、彼女には晴山さんを任せましょう。監視役ですし。」
『うわぁ……それって後でおにぃに絶対怒られるやつでしょ……』
「お兄様に万が一のことがあれば私は……」
『分かった。行こう。でも怒られる覚悟してよね。』
「もちろんです。」
────────────
は?なにが起こった?
状況を飲み込めずに突いた膝を上げようと足に力を入れるがうまく立てない。
熱は喉を這い上がり、やがて口元から吹き出している。
やがて、胸の熱が梅雨の空気に触れ寒気を催す。背筋にも悪寒が走り抜けていった。
あ、これ、やばい、死ぬ。
これは死ぬ。
本能で理解した。
これはまずいと。
だが、目の前にはすでに魚の魔族が……
『いいのか?諦めて……』
女性の声が聞こえてきた。透き通るような声。だが、どこか力強い声。そんな声は水の中にいるような感覚に陥る。
「諦めるわきゃねぇだろぅ……」
吐血しながら、俺は両足に力を込める。
『よく言ったぞ、少年。詠唱しろ。』
こんなこと、一週間くらい前にもあった気がする。など考えているが、もはやそんなことは気にしていられない。今は、目の前のこいつをどうにかする。頭に流れてくる詠唱文を吐血しながら口に出す。
──────明鏡止水の心、揺らめく水面の如く
邪なる心、浄める様に──────
「心知り、心を鎮める。」
目の前に水のベールがかかる。そのベールは俺自体にもかかり、赤く汚れているであろう鎧に、傷を塞ぐように左胸に入っていく。やがて、赤く汚れた鎧は水色に、そしてその形を変える。傷はふさがり体には熱が走り始める。そのすべての工程が終了し、俺は水のベールを引く。
「水化魔装……」
水を纏った魚を模した鎧。鎧と言うかコートを纏った感覚に近い。見た目も鎧と言うよりもコートと言った方が納得するものだ。水面に映る自分を見てから、迫ってきていた魚魔族のつかみかかりをいなす。いなされた魚魔族はそのまま水球を纏った足でかかと落としをしてくる。その攻撃もいなす。その後も攻撃を仕掛けてくる魔族をいなし、踊り、舞う。
「なんだ、この魔装……」
体がおかしい。相手の攻撃や殺気を感じ取ると自動的にいなし、かわす。だが、それだけだ。こちらから攻めようとすると、うまく体を動かせない。そして、また、声が聞こえてくる。
『Don't think Feel』
考えるな、感じろ?何を?
『Don't think Feel』
その間も魚魔族は攻撃をやめない。俺は何も分からず、言われた通りに考えるのをやめる。
思考の海。沈む感覚。水面を下から見る感覚。
そんな感覚で全身の力が抜ける。しかし、足は、腕は、体はしっかりと立って、構え、力が入っている。
魚魔族は数手前のつかみかかり攻撃をしてきたがその腕を掴み、思い切り引っ張る。
その反動でゼロ距離になった魔族の胸に肩をぶつけて打撃を行う。その反動で体勢を崩した魔族は体勢を崩しながら、水球を投げてくる。その水球を迎え撃つのではなく、水球を回転させて射出威力を落としながら、上へ上へ持っていく。
威力が完全に落ちた水球は回転がかかりながらボールの様に落ちようとする。その水球を落とさないように俺は水球を回転させる。それを指先に移す。それを見た魚魔族は水球を落とそうとこちらへ襲いかかってくる。俺は水球を落とさない様に魚魔族をかわす。そして、そんなことが数分続き、俺はその水球から指を手を離す。回転でできた空気。その空気を利用し、俺は水球を押し出す。魚魔族へ向けて。水球は魚魔族へぶつかり、そして、弾けた。水球が命中した魚魔族は倒れる。
「まだだな。」
そういうと魚魔族は立ち上がり液状化し、地面へ溶けて消えていった。殺気がなくなると同時に俺は気が抜ける。
「ほああぁぁ……」
「大丈夫?」
駆け寄ってきた女性の手を取り俺は立ち上がる。そして、路地の明るい方へ目を向けると、見覚えのある制服を着た四人がいた。最初に俺を捕まえようとした人たちだ。ピアスがワイヤーを俺に巻き付ける。
「お、俺、一般人ですけど?」
「バレる嘘はよくないねぇ……ボクら面識あるよね?」
バレてたか……まぁ当たり前だな。俺は抵抗をしない意志を示すため、その場に座る。それを察したのか、ピアスの人は残りの三人に指示を出す。
「三人は、葵さんの保護。ボクは、彼を本部へ連行する。」
「了解。」
三人は葵と呼ばれた女性へ駆け寄り俺と葵さんは離される。葵さんは俺の方へ視線と指を差し、何かを言っているようだが、距離が離れていき、その内容はうまく聞き取れなかった。
「さ、行こう………と、その前にこちら、二班。例の少年を保護……うん、分かった。……うん、よろしくね~」
誰かに通信を入れたピアスはワイヤーを解く。ピアスの方を見るが、嘘っぽく笑うだけでそのあとは何もない。俺はそのまま車に乗り魔法対策機関本部へと連れて行かれた。数分後に本部へ着くと濡れた髪をタオルで拭いている彩虹寺がいた。ピアスさんは彩虹寺へ近づき、俺の背中を押す。
「んじゃ、ボクは任務に戻るね。」
「天々望さんありがとうございます。」
天々望って珍しい苗字だなと思いながら背中に衝撃と痛みが走る。後ろを振り向くと彩虹寺がこちらをにらみつけていた。
確かに、今回のことは申し訳なく思う。俺の監視は恐らく、いや確実に延長だろう。俺はそのまま彩虹寺に病室へと連れて行かれる。
「ちょ、なんだよ。」
「怪我しているだろう。行くぞ。」
「まてまて、怪我はしたけど、治ったから。」
ボロボロになった制服を見て気づいた。そういえば、あの魚魔族の攻撃で瀕死の状態だったのを魔装で治したのを思い出す。病室へ着いた俺は女医へと差し出される。
赤茶色に汚れた制服をはがされ、色々な検査をされ、最終t系に出た結果は、
「い、異常なしですか……」
「うん、ただ、心臓部分の細胞だけどね、まるで新しく作られたかのような配列になっているね。」
「と、言いますと?」
「ん~なんていうんだろうね。切り取りられた箇所に全く同じ様に同じような細胞を張り付けられている……?ん~何だろうね。言葉で表そうとすると科学とか、化学とか医学とかの細かい専門用語の解説空になるから簡単に……そうだなぁ……裁縫で空いた穴をワッペンとかで塞ぐでしょ?アレに近いのかなぁ?」
つまり、心臓に空いていたはずの穴は再生という形ではなく、修正という形でふたをされているということなのだろうか。当人である俺も頭をひねる。
「とにかく、他には何も異常はないね。」
「分かりました。ありがとうございます。博子さん。」
「うん、またなんかあったらおいで。」
俺と彩虹寺は病室を後にして、他の一班の皆を待つことにした。
「自分から叱られに行くのか?」
「いやぁ、そういうわけじゃないが……取り合えず、喉が乾いたから飲み物がほしい。」
先ほどから喉が渇いて仕方がない。異常な喉の渇きを抑えるため、俺はポケットから湿った財布を取り出し、自販機を探す。
「ここにはないぞ。外の本部前のビルの入口にしかない。」
「マジか……彩虹寺ついてきてくれ。」
「なぜ?」
怪訝な表情に俺は気まずくなるが、彩虹寺の手を引く。
「監視役だろ。俺がまた逃げてもいいのか?」
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