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2/7:成る
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外出許可が出たフィジオとジュンとチハヤの三人は本部の近くを彩虹寺と一緒に歩いていた。本部内での会議と三人の意見を合わせた結果、彩虹寺に決定したのだが彩虹寺自身はその意見に困惑しながらもそれに了承し今に至る。
「……懐かしい感じがする。」
町を見回すフィジオの言葉に彩虹寺は色々と質問していく。
「どこが懐かしく感じる?」
「どこが?どこかは分からない……ただ、懐かしい感じがする。」
「君は、どういう存在だ?」
「オレはこの体の持ち主たちが回復するまでの代替品だ。だから、オレと誰かを重ねるのはやめた方がいい。」
彩虹寺はそのまま質問をやめて子供たちの手をつなぎながら子供たちの歩くペースに合わせてゆっくりと歩く。数時間歩き本部の方へ引き返そうとしたとき、フィジオはだんだんと離れ始めてやがて走りどこかへ向かっていった。彩虹寺は子供たちを連れてフィジオの後ろへついていく。そして、路地裏へ着くとフィジオはそこにいた男子高校生たちから囲まれている高校生を守るように立つ。
「お前、何?こいつの友達?」
「邪魔なんだけど。」
「やめとけ。いじめをやっても何もいいことないぞ。」
そういって二人をにらみつける。男子高校生二人は面倒くさくなったのか舌打ちをしながら歩いて去っていった。囲まれていた男子高校生はフラフラと立ち上がり無言で去ろうとする。彩虹寺はその男子高校生を止めようと口を開いたが、フィジオがそれを止める。男子高校生はそのまま彩虹寺に肩をぶつけながら路地裏を出て行った。
「なぜ……」
「あいつ、何かがおかしかった……」
「何が違和感に感じたんだ?」
「人間の魔力の流れと全然違うんだ。」
何を言っているかよくわからないフィジオの袖を引っ張り、帰るように促す。
「いや、あいつ追うか、マーキングしないといけないだろ。」
「何もしていない奴にマーキングも何もないだろう。」
「……そうかい……んじゃ帰ろうか。」
四人はそのまま本部へ歩みを進めた。フィジオは先ほどの高校生の向かった方向を見ながら踵を返して歩いていった。
─────────────
高校生二十日 糸は正義感が強い普通の男子高校生である。最近いじめられている後輩から同級生を庇ったら、次は自分が標的になってしまった。毎日クラスメイトの男子二人から殴る蹴る以外にもいじりと称して罰ゲームありのトランプゲームでイカサマをされて負け越しており、動画投稿サイトで黒歴史が量産されて行っている。それを拒否すると再び暴行される。いじめが始まって数ヶ月…体がそろそろ限界を迎えていた。
「……はぁ……」
ある日もトボトボと歩いていると白い装いをした男に呼び止められる。フードをかぶっており顔は分からないが、声で男だと判断できた。
「そこの男児。止まりなさい。」
「なんでしょうか。」
「なぜ、そんなにボロボロなのでしょうか。お金がないのでしょうか。」
「違います。」
「では、なぜボロボロなのでしょうか。」
歩きながら二十日は少し苛立った様子で男へ向き直り今、自分の置かれている状態を話す。
「……ほう、いじめですか。それは大変ですね。」
「さっきからなんですか?冷やかしですか?とても不快なのでやめてください。」
二十日はそのまま帰ろうとしたとき、男は二十日の手を握りながら何か液体を手のひらに差し注入する。二十日は痛みで手を引っ込めるが、その手に傷はなかった。
「何をし……」
顔を上げた時にはすでに男は姿を消していた。二十日は首をかしげながら辺りを見回すも影も形もなかった。
「なんだったんだ……?」
痛みがあった箇所を見るもなにもない。そのまま帰宅し、いつも通り家族と夕飯を食べ、出されている宿題を終わらせて就寝した。その日は不思議と熟睡でき、翌朝にはいじめでの傷も青タンも消えていた。
─────────────
白いフードの男は二十日が帰路についたのを見た後すぐに移動し、誰かに連絡を取る。電話の向こうからはサソリの声が聞こえてきた。
「教祖代理。こちらは順調に人数を増やせています。」
『そうですか。それは何より。これからも頑張ってください。こちらも勧誘人数を増やします。では、また次の月に報告をお願いします。ユスリさん』
電話が切れるとユスリと呼ばれた男は白い装いを脱ぎ捨て暗くなっていく空とともに装いを暗めにしてフードをかぶりなおす。
「すべては魔族のため。」
つぶやき、町の方へと向かう。
「ちょろっと、そこのお方。」
歩いているとユスリは止められる。振り向くとそこには魔法術対策機関 第二班 班長の天々望 四夜華がいた。機関だと気づいたユスリに緊張が走る。
「ちょっとさ~最近この辺でやたら宗教の勧誘されるって学生さんから苦情が来てるんだよね~君だよね?」
「えぇ。私ですが。なにか。」
「ここ通学路として結構利便性高いのよ。だからあんまり怪しい行動しないでほしいなって……ま、いわゆる厳重注意ってのをしに来たんだよ。」
「……そうですか、しつこくならないように努めます。」
「言ってることわかんないかな?いや、はっきり言った方がいいか……ここら辺に近寄るなって言ってんの。ほら、しっし。」
ユスリは緊張が一気に解けて安心した様子で返事をして頭を下げつつその場を去ろうと踵を返した。去り際、四夜華は耳元でささやいた。
「ばれてないと思ってる?」
「……!!」
「あんま、調子乗らない方がいいよ。今回は実害を目視で確認できなかったから見逃すけど、次会ったら捕縛、拘束もいとわないからな。銀色の使徒の信者。」
ユスリの背筋に異様な悪寒がはい回りそのまま恐怖を感じながら足早に町の方へ向かっていった。
2/7:成る
「……懐かしい感じがする。」
町を見回すフィジオの言葉に彩虹寺は色々と質問していく。
「どこが懐かしく感じる?」
「どこが?どこかは分からない……ただ、懐かしい感じがする。」
「君は、どういう存在だ?」
「オレはこの体の持ち主たちが回復するまでの代替品だ。だから、オレと誰かを重ねるのはやめた方がいい。」
彩虹寺はそのまま質問をやめて子供たちの手をつなぎながら子供たちの歩くペースに合わせてゆっくりと歩く。数時間歩き本部の方へ引き返そうとしたとき、フィジオはだんだんと離れ始めてやがて走りどこかへ向かっていった。彩虹寺は子供たちを連れてフィジオの後ろへついていく。そして、路地裏へ着くとフィジオはそこにいた男子高校生たちから囲まれている高校生を守るように立つ。
「お前、何?こいつの友達?」
「邪魔なんだけど。」
「やめとけ。いじめをやっても何もいいことないぞ。」
そういって二人をにらみつける。男子高校生二人は面倒くさくなったのか舌打ちをしながら歩いて去っていった。囲まれていた男子高校生はフラフラと立ち上がり無言で去ろうとする。彩虹寺はその男子高校生を止めようと口を開いたが、フィジオがそれを止める。男子高校生はそのまま彩虹寺に肩をぶつけながら路地裏を出て行った。
「なぜ……」
「あいつ、何かがおかしかった……」
「何が違和感に感じたんだ?」
「人間の魔力の流れと全然違うんだ。」
何を言っているかよくわからないフィジオの袖を引っ張り、帰るように促す。
「いや、あいつ追うか、マーキングしないといけないだろ。」
「何もしていない奴にマーキングも何もないだろう。」
「……そうかい……んじゃ帰ろうか。」
四人はそのまま本部へ歩みを進めた。フィジオは先ほどの高校生の向かった方向を見ながら踵を返して歩いていった。
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高校生二十日 糸は正義感が強い普通の男子高校生である。最近いじめられている後輩から同級生を庇ったら、次は自分が標的になってしまった。毎日クラスメイトの男子二人から殴る蹴る以外にもいじりと称して罰ゲームありのトランプゲームでイカサマをされて負け越しており、動画投稿サイトで黒歴史が量産されて行っている。それを拒否すると再び暴行される。いじめが始まって数ヶ月…体がそろそろ限界を迎えていた。
「……はぁ……」
ある日もトボトボと歩いていると白い装いをした男に呼び止められる。フードをかぶっており顔は分からないが、声で男だと判断できた。
「そこの男児。止まりなさい。」
「なんでしょうか。」
「なぜ、そんなにボロボロなのでしょうか。お金がないのでしょうか。」
「違います。」
「では、なぜボロボロなのでしょうか。」
歩きながら二十日は少し苛立った様子で男へ向き直り今、自分の置かれている状態を話す。
「……ほう、いじめですか。それは大変ですね。」
「さっきからなんですか?冷やかしですか?とても不快なのでやめてください。」
二十日はそのまま帰ろうとしたとき、男は二十日の手を握りながら何か液体を手のひらに差し注入する。二十日は痛みで手を引っ込めるが、その手に傷はなかった。
「何をし……」
顔を上げた時にはすでに男は姿を消していた。二十日は首をかしげながら辺りを見回すも影も形もなかった。
「なんだったんだ……?」
痛みがあった箇所を見るもなにもない。そのまま帰宅し、いつも通り家族と夕飯を食べ、出されている宿題を終わらせて就寝した。その日は不思議と熟睡でき、翌朝にはいじめでの傷も青タンも消えていた。
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白いフードの男は二十日が帰路についたのを見た後すぐに移動し、誰かに連絡を取る。電話の向こうからはサソリの声が聞こえてきた。
「教祖代理。こちらは順調に人数を増やせています。」
『そうですか。それは何より。これからも頑張ってください。こちらも勧誘人数を増やします。では、また次の月に報告をお願いします。ユスリさん』
電話が切れるとユスリと呼ばれた男は白い装いを脱ぎ捨て暗くなっていく空とともに装いを暗めにしてフードをかぶりなおす。
「すべては魔族のため。」
つぶやき、町の方へと向かう。
「ちょろっと、そこのお方。」
歩いているとユスリは止められる。振り向くとそこには魔法術対策機関 第二班 班長の天々望 四夜華がいた。機関だと気づいたユスリに緊張が走る。
「ちょっとさ~最近この辺でやたら宗教の勧誘されるって学生さんから苦情が来てるんだよね~君だよね?」
「えぇ。私ですが。なにか。」
「ここ通学路として結構利便性高いのよ。だからあんまり怪しい行動しないでほしいなって……ま、いわゆる厳重注意ってのをしに来たんだよ。」
「……そうですか、しつこくならないように努めます。」
「言ってることわかんないかな?いや、はっきり言った方がいいか……ここら辺に近寄るなって言ってんの。ほら、しっし。」
ユスリは緊張が一気に解けて安心した様子で返事をして頭を下げつつその場を去ろうと踵を返した。去り際、四夜華は耳元でささやいた。
「ばれてないと思ってる?」
「……!!」
「あんま、調子乗らない方がいいよ。今回は実害を目視で確認できなかったから見逃すけど、次会ったら捕縛、拘束もいとわないからな。銀色の使徒の信者。」
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