魔装戦士

河鹿 虫圭

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2/9:赫い冰

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二十日 糸が学校に来なくなってはや二週間弱。家族ごと失踪しているため警察などもちょくちょく動いているが、家の中が散乱しており事件性が高いとまで言われているがなかなか犯人の尻尾が掴めずに捜査も難航しているようだ。同級生たちは心配するものもいるもののいじめをしていたものたちはそんなことは気にせず次の暇つぶしの標的を探していた。

「面白そうなやついないなぁ……」

「最近、頑丈な奴いないからな。」

暇を弄ぶように授業をサボり校外で歩き回っていた。自販機で飲み物を買ったり商業施設でだらだら歩き回ってゲームセンターで時間を潰す。そして、下校の時間帯になり二人は家に帰ろうと商業施設を出て帰路につき、住宅街に入ってきた時ふと、二十日の家の方へ差し掛かった。二人は面白半分に二十日の家へ向かう。キープアウトの黄色いテープが見えてくるとこれまた面白半分でボロボロの二十日の家へ足を踏み入れる。さすがにまずいと思ったのか、一人は少し不安そうになっている。

「おい……さすがにまずいって……」

「いや、別にいいだろ。なんかなくなっても問題ないだろ……」

そういって散乱した部屋から何かないか探してそして、引き出しから茶封筒を見つけて中身を見ると口角が上がる。

「おい、これ見ろよ。」

茶封筒の中身を出すと一万円の束が出てきた。約数十センチの札束を出して見せびらかす。

「これ、いくらあるんだよ……」

「いち、に、さん……100万くらいはあるぞ……」

約半分に分けてポケットに入れてもう半分を手渡してくる。

「いや、俺はいいよ……さすがにこれは違ぇだろ。」

「あ?俺を裏切るのか?今まで散々いじめてきただろ。ここまで来たら何やっても同じだろ。」

そういって渋々お金を半分ポケットに入れた瞬間、ポケットから赤い水が染み出てくる。

「なんだよこれ……」

お金を取り出すと札束は真っ赤に染まっておりポケットの中も赤い水が染みわたっていた。そのままポケットの中を探っていると何か鋭利で固いものに指が当たる。触ってみると痛みもなく指が切れた。

「な、なんだ……?」

つぶやいた束の間に気づく。これは、もしかして、自分の腹部が何者かに刺されているのではないかと。慌てて後ろを無理向いて見るとそこには、二十日 糸がいた。思わず腰を抜かしそうになったが、貫かれた腹部に痛みが出てきて振り向くこともままならない。

「な、なんで、ここに……死んだって……」

「学校ではもう、そこまで背びれと尾びれがついているんだな……」

血まみれの一万円札がばらまかれると二十日はそれを目に映し、嫌悪の目を向ける。

「俺がいない間にうちの金を盗もうってか…抵抗しない奴なら何やってもいいってか……どこまで腐ってるんだお前ら。」

「いや……俺は止めたんだよ。こいつが……」

二十日はもう一人に目を向けると一瞬で首を刈り取った。

「そこの屍のことか?」

青ざめると恐怖で涙目になってしまうが、口角が不自然に上がっていき二十日は言葉を発する前に首を跳ねた。血に染まった刃を見てその場から去ろうとしたが、真っ赤な一万円を踏んでしまいそれを拾い上げる。この数百万値のお札を稼ぐのに母はどれほどの時間を割いたのか、疲労が溜まる中どれだけしんどくても家のためにと入れてくれたのかと考え、ばらまかれたお札を丁寧に拾っていると自然と涙が出てくる。

「なんで…俺がこんな目に…いじめから後輩を助けて……それなのに、誰も助けてくれずに、それなのに、こんな姿に……」

悔しさで涙を流していると声をかけられる。

「なぁにしてるの?」

振り向くとそこには、中性的な顔立ちの人物がいた。音もなく背後に来ていたその人物に二十日は警戒しながら距離をとる。

「おいおい、ちょっと傷ついちゃうぞ~」

「何者だ!」

「自己紹介していいの?ボクは魔法術対策機関 第二班 班長 天々望 四夜華だよ~以後お見知りおき~」

そういってお辞儀をした四夜華はその場で転がっている頭と胴体と血の水たまりへ視線を向けて問いかける。


「これってさ、君がやったのかい?」

「……そうだ。こいつらがうちの金を盗もうとしてたから俺は殺した。」

「それだけじゃないよね?……いじめもだろ?君のその”目”ただの盗人に向ける目じゃないよ?」

「……そんな分析、今から死ぬから意味ないけどね!」

二十日が刃を突き立てようと一歩を踏みだすが、体が動かない。何もわからない二十日に対して四夜華はわざとらしく鉄糸を夕日にさらし視認できるようにする。

「鉄の糸……?」

「正解~でもまぁ、今から捕まるからそんな分析いらないよね。」

四夜華は二十日に向かって歩き出す。ここでつかまるわけにはいかない二十日は魔力を高めてその身を魔族化させて刃を右手と一体化させて鉄の糸を切り裂き風のように四夜華の前から消えた。

「ありゃ、逃がしちゃったね。」

四夜華はつぶやきながら本部へ連絡をしてすぐに二十日の後を追った。

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