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『こちら、天々望。今、魔族化した少年を追っている。少年は同級生二名を首を切って殺傷した。イタチと狼を合わせたような魔族になって逃走してる。今、Fブロック方面に向かったよ。』
「了解。丁度Fブロックに差し掛かったので探してみます。」
『よろしくね。』
通信を切ると同時に、パトロール中の海辺海斗の頭上を先ほどの通信で聞いた魔族が飛んで行った。
「あれか……よし行こうか。」
各地で同じようにパトロールしていた二班の面々もFブロックの方角を見て走り出した。
─────────────
一方、本部内にて孤児二人と遊んでいたフィジオは頭の中に声を聞き、そして映像も見る。圧倒される班長のいない二班、次々と殺されていき最後の視線に目を合わせて口を動かした。
「見られている……まずい。」
そうつぶやくと、急いで魔族は逃げて行った。動かなくなった視線に遅れてやってきた二班の班長が悲しそうな顔をして瞳を閉じて映像は終了した。ハッと我に返ると額には滝のような汗をかいておりジュンとチハヤは心配そうに見つめていた。
「お兄ちゃん?」
「大丈夫?」
「…あぁ、大丈夫だ。ちょっと飲み物を買ってくるから待っていてくれ。」
そういうと部屋から出てすぐに走り出そうとしたが呼び止められた。そこにいたのはい心配そうな顔をしている彩虹寺 綾那だった。
「どうした?汗が酷いぞ。」
「あぁ、大丈夫だ。少し飲み物を買いに行こうと思ってな……」
踵を返して走り出そうとすると肩を思い切り掴まれる。なんだと振り向くと悲しそうな顔でこちらを見つめていた。
「なんだよ…?」
「君は嘘をつくとき、大体慌てた様子を見せる……今もそうだ。何を見た。私も一緒に行く。」
彩虹寺の言葉に動揺するが、フィジオは冷静さを保ちながら嘘をつこうと試みる。別に嘘をつく必要はないと心のどこかで思っているのだが、頭の中で瞬時に巻き込んでは行けないと彩虹寺を守るようにと口からでまかせを言ってしまう。フィジオはそれがなぜなのかと考えながら、すぐに掴まれた手を振り払う。
「本当に飲み物を買いに行くだけだ。」
そう言って走り去る背中を見ながら彩虹寺はゆっくりと歩き出す。その顔は先ほどの悲しそうな顔に加えてうれしそうにも見えた。
「やっぱり君は嘘が下手だ。」
そして、彩虹寺は星々へ連絡をしてだんだんと足の速度を上げながらフィジオを追った。
─────────────
暗くなる空を駆け回る銀色の線はだんだんと目立ってくる。同級生二人を殺害した元人間の二十日 糸は写真で見た少年…フィジオを探して飛び回っていた。
「どこだ…どこに行るんだ……?」
探し回って首を動かしていると下から魔法が発砲された。見てみると海辺が手を構えて二十日をにらみつけていた。
「こちら、海辺。ターゲットと遭遇。これより捕縛に入ります。」
通信を切ると次は水魔法で槍を生成して構える。
「海皇伸の槍。」
「アローは弓矢……だろ!」
向かってきた二十日に海辺はそのまま槍を投擲する。
「投げたらどっちも同じだろう?」
「メガネかけてインテリかと思えば、脳みそ筋肉の奴かよ……!」
そのまま連続で槍の投擲を続けて距離を保つ。しかし、だんだんと押されて距離が縮まってくる。最後にはもどかしくなった二十日が回転してそのまま海辺は回転斬りつけに巻き込まれて宙へ舞う。
「がふっ……」
「偉そうに言う割には弱い。」
落下地点を狙って回転で進むと海辺はそのまま二十日に向かって槍を投げつける。
「海皇伸の波。」
無数の鋭い槍が二十日へ襲い掛かる。回転しながら進むが、とうとう二十日はその無数の槍に押さえつけられてしまう。着地した海辺はそのまま二十日へ駆け寄り手錠をかけようとする。
「う……」
「さて、捕縛かんりょ……」
手錠をかけようとした瞬間、背中を切りつけられる。振り向くとそこには抑えていたはずの二十日がいた。
「急いでいるんだ。ここでつかまるわけにはいかない。」
先ほど倒れていたところを見るとすでにもぬけの殻となっている。
「速い。」
「速いだけじゃない。強いぞ。」
再び回転しながら向かってくると海辺は水の壁を無数に配置する。
「ハイドロガード」
何枚も連続で重ねて見事に長方形を作る。
「よし……さぁ、仕上げは頼むよ。」
「ちっ……お前はいつもどうだよ……な!縛中岩石破!」
岩の鎖が二十日を縛り付ける。その陰から班員の台地 陸丸が姿を現す。そして、縛った二十日を叩きながら海辺へ近づく。
「自分を囮にするのは良くねぇな……ま、結果オーライだけどよ。」
「班長と初風ちゃんが来るまでしっかり固定してね。」
「わーてるよ。俺は絶対に油断しないから。それにこいつからは絶対に逃れられない。」
そういっていると二十日は歯を食いしばり体を動かし始める。それを見て陸丸は少し心配そう見るが、しかし自分の作った魔術に絶対的な自信を持つ陸丸は絶対に大丈夫だと思い、視線を強く向ける。ひび割れているが、自走で回復していく鎖、だが、二十日も負けじと力を入れて鎖を引きちぎろうとする。陸丸は海辺と話していたがだんだんと二十日に目を向けて魔術を重ね掛けしようとする。しかし、一足遅かった。
「……油断、大敵!!」
二十日は再生していた岩の鎖を引きちぎると二人を蹴散らす。
「ま!?」
「まっずいなぁ……」
天々望と初風が到着する時には、二十日はすでに逃走していた。
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「了解。丁度Fブロックに差し掛かったので探してみます。」
『よろしくね。』
通信を切ると同時に、パトロール中の海辺海斗の頭上を先ほどの通信で聞いた魔族が飛んで行った。
「あれか……よし行こうか。」
各地で同じようにパトロールしていた二班の面々もFブロックの方角を見て走り出した。
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一方、本部内にて孤児二人と遊んでいたフィジオは頭の中に声を聞き、そして映像も見る。圧倒される班長のいない二班、次々と殺されていき最後の視線に目を合わせて口を動かした。
「見られている……まずい。」
そうつぶやくと、急いで魔族は逃げて行った。動かなくなった視線に遅れてやってきた二班の班長が悲しそうな顔をして瞳を閉じて映像は終了した。ハッと我に返ると額には滝のような汗をかいておりジュンとチハヤは心配そうに見つめていた。
「お兄ちゃん?」
「大丈夫?」
「…あぁ、大丈夫だ。ちょっと飲み物を買ってくるから待っていてくれ。」
そういうと部屋から出てすぐに走り出そうとしたが呼び止められた。そこにいたのはい心配そうな顔をしている彩虹寺 綾那だった。
「どうした?汗が酷いぞ。」
「あぁ、大丈夫だ。少し飲み物を買いに行こうと思ってな……」
踵を返して走り出そうとすると肩を思い切り掴まれる。なんだと振り向くと悲しそうな顔でこちらを見つめていた。
「なんだよ…?」
「君は嘘をつくとき、大体慌てた様子を見せる……今もそうだ。何を見た。私も一緒に行く。」
彩虹寺の言葉に動揺するが、フィジオは冷静さを保ちながら嘘をつこうと試みる。別に嘘をつく必要はないと心のどこかで思っているのだが、頭の中で瞬時に巻き込んでは行けないと彩虹寺を守るようにと口からでまかせを言ってしまう。フィジオはそれがなぜなのかと考えながら、すぐに掴まれた手を振り払う。
「本当に飲み物を買いに行くだけだ。」
そう言って走り去る背中を見ながら彩虹寺はゆっくりと歩き出す。その顔は先ほどの悲しそうな顔に加えてうれしそうにも見えた。
「やっぱり君は嘘が下手だ。」
そして、彩虹寺は星々へ連絡をしてだんだんと足の速度を上げながらフィジオを追った。
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暗くなる空を駆け回る銀色の線はだんだんと目立ってくる。同級生二人を殺害した元人間の二十日 糸は写真で見た少年…フィジオを探して飛び回っていた。
「どこだ…どこに行るんだ……?」
探し回って首を動かしていると下から魔法が発砲された。見てみると海辺が手を構えて二十日をにらみつけていた。
「こちら、海辺。ターゲットと遭遇。これより捕縛に入ります。」
通信を切ると次は水魔法で槍を生成して構える。
「海皇伸の槍。」
「アローは弓矢……だろ!」
向かってきた二十日に海辺はそのまま槍を投擲する。
「投げたらどっちも同じだろう?」
「メガネかけてインテリかと思えば、脳みそ筋肉の奴かよ……!」
そのまま連続で槍の投擲を続けて距離を保つ。しかし、だんだんと押されて距離が縮まってくる。最後にはもどかしくなった二十日が回転してそのまま海辺は回転斬りつけに巻き込まれて宙へ舞う。
「がふっ……」
「偉そうに言う割には弱い。」
落下地点を狙って回転で進むと海辺はそのまま二十日に向かって槍を投げつける。
「海皇伸の波。」
無数の鋭い槍が二十日へ襲い掛かる。回転しながら進むが、とうとう二十日はその無数の槍に押さえつけられてしまう。着地した海辺はそのまま二十日へ駆け寄り手錠をかけようとする。
「う……」
「さて、捕縛かんりょ……」
手錠をかけようとした瞬間、背中を切りつけられる。振り向くとそこには抑えていたはずの二十日がいた。
「急いでいるんだ。ここでつかまるわけにはいかない。」
先ほど倒れていたところを見るとすでにもぬけの殻となっている。
「速い。」
「速いだけじゃない。強いぞ。」
再び回転しながら向かってくると海辺は水の壁を無数に配置する。
「ハイドロガード」
何枚も連続で重ねて見事に長方形を作る。
「よし……さぁ、仕上げは頼むよ。」
「ちっ……お前はいつもどうだよ……な!縛中岩石破!」
岩の鎖が二十日を縛り付ける。その陰から班員の台地 陸丸が姿を現す。そして、縛った二十日を叩きながら海辺へ近づく。
「自分を囮にするのは良くねぇな……ま、結果オーライだけどよ。」
「班長と初風ちゃんが来るまでしっかり固定してね。」
「わーてるよ。俺は絶対に油断しないから。それにこいつからは絶対に逃れられない。」
そういっていると二十日は歯を食いしばり体を動かし始める。それを見て陸丸は少し心配そう見るが、しかし自分の作った魔術に絶対的な自信を持つ陸丸は絶対に大丈夫だと思い、視線を強く向ける。ひび割れているが、自走で回復していく鎖、だが、二十日も負けじと力を入れて鎖を引きちぎろうとする。陸丸は海辺と話していたがだんだんと二十日に目を向けて魔術を重ね掛けしようとする。しかし、一足遅かった。
「……油断、大敵!!」
二十日は再生していた岩の鎖を引きちぎると二人を蹴散らす。
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