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2/29:雷火
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霊石の中、大魔導師たちは違和感を覚える。無、火、水、風、龍、闇の大魔導師たちは辺りに別の属性の何者かが入っているのを感じ見まわす。無の大魔導師ロゼ=ハイラント=クリスティは紅茶を飲みながらその違和感を思い出した。
「この感じ。思い出したよ。気まぐれで大陸を移動しては、気まぐれでその土地の気候を雷雨にして荒地には「恵みの神」として、そして、現代のような発展した土地には「厄災」として名をはせる妖精だ……」
紅茶をすするロゼに向かって炎の大魔導師スカーレッド=アルフレアは首を斜めにしてピンときてないようだ。水の大魔導師酔流はアルフレアの頭をまっすぐに直してロゼへ質問する。
「私は内陸部にいたからあんまり雷雨にはあってないが、雷の厄災のことか?」
「酔流の地域ではそう呼ばれていたんですね彼女は各地域で様々な呼ばれ方をしているから私は特定の呼び方はしてないよ。」
ロゼが紅茶をすすると背後に黄色の閃光がジグザグに飛び回る。ロゼとアレイスター以外の魔導師はその閃光を目で追う。閃光はアルフレアの目の前まで来ると姿を現す。目元まで伸びた茶色のショートボブの髪型にスカート丈の短いワンピースに身を包んだ少女の姿をしている。口元は無邪気に笑うとアルフレアの鼻先に指を触れて軽く静電気くらいの電気を流す。アルフレアは驚いて思わず妖精へ手を伸ばすが、妖精は手の間をすり抜けてニヤニヤとバカにしたように口元へ手を当てる。
「俺、こいつ嫌いかも……というか、なんで霊石の中に入りこめたんだ?使用者と魔力量がそこまで高くないやつは入れないはずだが。」
ロゼに向き直ると本を閉じて席を立ち、妖精に向けて手招きをして手のひらを差し出す。妖精はロゼの掌に乗ると姿を変え、小人型から猫へ変身する。ロゼはそのまま猫の姿の妖精の顎を撫でる。
「答えはこの子がここに入れている時点で出ているだろ?」
ロゼは妖精を離すと猫型から再び小人型へ姿を変えてアレイスターの肩に乗りそのまますやすやと眠り始めた。アレイスターはそんなことは気にせず魔導書を読み続ける。その様子を見てアルフレアや酔流は目を大きく開く。
「と言うことはアレはただの妖精じゃなくて、神霊とか、大精霊レベルの魔力を持っているってことか?」
「そうだね。でも彼女は外敵から逃れるためにわざわざ魔力制限をかけているんだ。多分本気出したら君らより強い。」
「んな雑な……」
「雑で強いのが彼女だよ。」
「というか、先ほどからロゼはこいつのことを名前で呼ばないのはなんでだ?」
「そうかな?私はさっきから読んでいるよ。彼女の名前は閃光の彼女だ。複数名前があるから雷鳴の君でもいいかもね。」
「総称してシーかイットということか……」
妖精はアレイスターの肩から膝の上に移動して寝息を立てる。アレイスターはそれでも気にすることなく魔導書を読み続ける。
「アレイスターやロゼにはなついているようだが、やはりどこかで会っているのか?」
「もちろんさ。彼女とは古からの友人でね。霊石に入らないかと誘ってもみたんだが、拒否されてね。」
─────────────
雷に打たれた優吾は辺りを確認してどうなったかを見る。もちろん黒焦げになっており雨の中で焼けこげた匂いが鼻孔をくすぐる。それよりもと自分の体を見回すと炎の鎧に金色のラインが入っているのが見える。鎧の赤も少し黒ずんでワインレッドに近くなっている。
「新しい力か?でも炎の力には変わりないのか?」
不審がっていると霊石にいたロゼが優吾へ話しかける。
『お久しぶりです。選ばれし者。銀狼の王と契約したようですね。』
「今更、なんの用だよ……」
『応答が出来なかったのは謝ります。しかし、今は戦闘の真っ最中でしょう?それに新たな力も授かっていますよね?』
「……それで、この力はなんだ?」
『この力、雷属性の力です。今まで力に雷属性を付与してくれるそうです。』
「くれるそうですって……雷の魔導師は言葉をしゃべれないのか?」
『彼女は魔導師ではなく、精霊や神霊の一種です。故に人語は介しません。なので私がしゃべっています。』
「人以外も入れるんだ……いや、それより今は戦闘だ。」
目の前にいる雛鳥魔族は黒焦げになりながらも立ち上がって優吾が話し終わるのを待っていたようだ。いまだになめられている優吾はステップを踏み雛鳥へ一気に距離を詰める。地面を蹴った優吾の足元に黄色い閃光が薄くほとばしると今までとは比べ物にならないスピードで雛鳥の目の前に移動することができた。
「はっや……!」
優吾自身も今のスピードには驚いたらしく足元を見て止まってしまう。雛鳥はそれがどうしたと言わんばかりに優吾へ向かってハイキックをするが、優吾はその蹴りを拳で打つ。拳を打つ際に黄色の火花が散る。雛鳥は今までに感じた事のない痛みとしびれに優吾へ向ける視線が一気に警戒モードへと移る。
「コレいいな……俺の試したいスタイルとも会う!」
優吾は拳を突き出してシャドーボクシングをして拳を構えなおす。
「そうだな……命名するなら……雷火ってところか?」
雛鳥は警戒を緩めずにここからはこちらも本気で行くぞと言わんばかりに殺気を放った。
2/29:雷火
「この感じ。思い出したよ。気まぐれで大陸を移動しては、気まぐれでその土地の気候を雷雨にして荒地には「恵みの神」として、そして、現代のような発展した土地には「厄災」として名をはせる妖精だ……」
紅茶をすするロゼに向かって炎の大魔導師スカーレッド=アルフレアは首を斜めにしてピンときてないようだ。水の大魔導師酔流はアルフレアの頭をまっすぐに直してロゼへ質問する。
「私は内陸部にいたからあんまり雷雨にはあってないが、雷の厄災のことか?」
「酔流の地域ではそう呼ばれていたんですね彼女は各地域で様々な呼ばれ方をしているから私は特定の呼び方はしてないよ。」
ロゼが紅茶をすすると背後に黄色の閃光がジグザグに飛び回る。ロゼとアレイスター以外の魔導師はその閃光を目で追う。閃光はアルフレアの目の前まで来ると姿を現す。目元まで伸びた茶色のショートボブの髪型にスカート丈の短いワンピースに身を包んだ少女の姿をしている。口元は無邪気に笑うとアルフレアの鼻先に指を触れて軽く静電気くらいの電気を流す。アルフレアは驚いて思わず妖精へ手を伸ばすが、妖精は手の間をすり抜けてニヤニヤとバカにしたように口元へ手を当てる。
「俺、こいつ嫌いかも……というか、なんで霊石の中に入りこめたんだ?使用者と魔力量がそこまで高くないやつは入れないはずだが。」
ロゼに向き直ると本を閉じて席を立ち、妖精に向けて手招きをして手のひらを差し出す。妖精はロゼの掌に乗ると姿を変え、小人型から猫へ変身する。ロゼはそのまま猫の姿の妖精の顎を撫でる。
「答えはこの子がここに入れている時点で出ているだろ?」
ロゼは妖精を離すと猫型から再び小人型へ姿を変えてアレイスターの肩に乗りそのまますやすやと眠り始めた。アレイスターはそんなことは気にせず魔導書を読み続ける。その様子を見てアルフレアや酔流は目を大きく開く。
「と言うことはアレはただの妖精じゃなくて、神霊とか、大精霊レベルの魔力を持っているってことか?」
「そうだね。でも彼女は外敵から逃れるためにわざわざ魔力制限をかけているんだ。多分本気出したら君らより強い。」
「んな雑な……」
「雑で強いのが彼女だよ。」
「というか、先ほどからロゼはこいつのことを名前で呼ばないのはなんでだ?」
「そうかな?私はさっきから読んでいるよ。彼女の名前は閃光の彼女だ。複数名前があるから雷鳴の君でもいいかもね。」
「総称してシーかイットということか……」
妖精はアレイスターの肩から膝の上に移動して寝息を立てる。アレイスターはそれでも気にすることなく魔導書を読み続ける。
「アレイスターやロゼにはなついているようだが、やはりどこかで会っているのか?」
「もちろんさ。彼女とは古からの友人でね。霊石に入らないかと誘ってもみたんだが、拒否されてね。」
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雷に打たれた優吾は辺りを確認してどうなったかを見る。もちろん黒焦げになっており雨の中で焼けこげた匂いが鼻孔をくすぐる。それよりもと自分の体を見回すと炎の鎧に金色のラインが入っているのが見える。鎧の赤も少し黒ずんでワインレッドに近くなっている。
「新しい力か?でも炎の力には変わりないのか?」
不審がっていると霊石にいたロゼが優吾へ話しかける。
『お久しぶりです。選ばれし者。銀狼の王と契約したようですね。』
「今更、なんの用だよ……」
『応答が出来なかったのは謝ります。しかし、今は戦闘の真っ最中でしょう?それに新たな力も授かっていますよね?』
「……それで、この力はなんだ?」
『この力、雷属性の力です。今まで力に雷属性を付与してくれるそうです。』
「くれるそうですって……雷の魔導師は言葉をしゃべれないのか?」
『彼女は魔導師ではなく、精霊や神霊の一種です。故に人語は介しません。なので私がしゃべっています。』
「人以外も入れるんだ……いや、それより今は戦闘だ。」
目の前にいる雛鳥魔族は黒焦げになりながらも立ち上がって優吾が話し終わるのを待っていたようだ。いまだになめられている優吾はステップを踏み雛鳥へ一気に距離を詰める。地面を蹴った優吾の足元に黄色い閃光が薄くほとばしると今までとは比べ物にならないスピードで雛鳥の目の前に移動することができた。
「はっや……!」
優吾自身も今のスピードには驚いたらしく足元を見て止まってしまう。雛鳥はそれがどうしたと言わんばかりに優吾へ向かってハイキックをするが、優吾はその蹴りを拳で打つ。拳を打つ際に黄色の火花が散る。雛鳥は今までに感じた事のない痛みとしびれに優吾へ向ける視線が一気に警戒モードへと移る。
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