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氷の弾丸が翼へ命中する。しかし、同じ属性というのもあってか、翼には傷一つもついていない。魔法が通用しないとわかった夢希は試しに水魔法で攻撃を仕掛けてみる。白い彼女は純白の翼を羽ばたかせてその水の弾を凍らせる。凍った水の弾は勢いが落ちてそのまま雪の中へ突き刺さる。次は風魔法で翼を狙ってみるがそれも羽ばたきによって完全に無効化されてしまう。
「困りましたね…この魔法以外は使えないのですが…」
再び氷の銃を作り出して発砲する。白い彼女は単調な攻撃にパターンを覚えて夢希の攻撃をすべて躱す。そして、氷の弾丸をかいくぐって夢希へ距離を詰めて肩をわしづかみにして夢希を上空へと連れ去る。夢希は足に向けて発砲をするが、足は弾丸をはじいてしまい全く意味をなさない。だんだんと高度が上がりやがて白い彼女は氷の建造物の頂上まで夢希を連れてくる。建造物の頂上へ目を向けると雪が入らないようにドーム型になっており穴を通っていくと暖かい空気とともに血なまぐさい酸っぱい匂いが鼻孔内へ広がる。夢希は鼻を覆いながらされるがままに白い彼女の巣穴の内部へ入っていく。
「……これは酷い…」
思わず口走った夢希の眼前に広がったのは骨の山だった。小動物、熊のような太い骨、貝殻、そして、人骨。様々な骨がその山を作っている。そのさらに中心へ目を向けると最低限の衣に身を包んだ小さな白い塊が3匹ほど見える。夢希と目が合うと口元についた血を拭って骨のかけらをスイカの種飛ばしのように口から吐き出す。夢希は異様な光景に白い彼女へ目を向けて口を開く。
「あなたたち、国から支援を受けてないのですか!?こんなまるで魔獣みたいなことをして……お子さんの教育にも悪いですよ!!」
彼女は夢希の語りかけに耳を傾けずに餌である夢希を巣の中心へもっていく。巣の中心へ夢希を置くとそのまま足で夢希の衣服を破り始める。白い肌が見えやがてその肌へも爪を食い込ませる。血がにじむ腹の痛みに耐えかねて夢希はうめき声をあげながら、拙い炎魔法で彼女の足へ炎の弾をぶつける。奇声を上げて彼女は夢希を離して巣に引火しないように羽ばたいて巣から出ていく。夢希はその間にどうにか逃げられないかあたりを見渡すが、小さな白い翼たちは夢希の血の匂いに興奮したのか彼女のような咆哮をあげながらゆっくりと近づいてくる。
「野生に帰化したのでしょうか……それとも……いや、今はこの場から逃げることを考えないと………………仕方ない…」
夢希は全身に力を入れて魔力も増幅させる。半魔である夢希は魔力を使わないと魔族の血を活性化できない。そのため魔族化すると一時的に魔力が大幅に減ってしまい、魔法や魔術を使うことができなくなるのだ。白い翼を携えて手足を猛禽類の爪へ変える。
「はぁ…これなら逃げられる。」
白い翼を羽ばたかせるとそのまま巣から離脱する。そのまま巣から出ようとするが、鎮火し終った白い彼女が戻ってきて行く手を阻む。魔法が使えない夢希はそのまま踵を返して逃げようとするが、白い彼女は素早く先回りしてここからは逃がさないという意思を示す。
「これは、詰みですね…ですが、だからと言ってあきらめるわけには行きません。」
夢希は翼を羽ばたかせて必死に巣の中を逃げ回る。白い彼女はそのあとを追いながら夢希を追い詰めていく。数分の鬼ごっこの後、夢希はついに白い彼女に追いつかれてしまい、そして、巣の端に追いやられる。白い彼女は夢希へ手を伸ばすがその手は突然止まる。
「…?」
不審に思った夢希は彼女の顔へ目を向ける。涙が頬へ伝うと彼女はようやく人語を話した。
「私の子供たち…私の…こども、たち…」
白い彼女は巣を壊してそのまま外へ出ていき建造物の屋上で小さくうずくまって膝を抱える。夢希は彼女を追いかけて膝を抱えて泣いている彼女の傍へと立つ。彼女は夢希が傍に来たのを悟って口を開いた。
「故郷が、銀色の魔族に襲われたの…その時に子供たちともはぐれてしまって…」
「ですが、巣の中に三人ほど、お子さんが見えた気がしますが…」
「アレは子供じゃない。アレは私が魔法で作った私の分身のようなもの…私が魔法を解けばアレは全部消える。」
「故郷を銀路の魔族に襲われたと言っていましたが、いつの話ですか?」
「数日前よ。ひどい雷雨の日があったでしょう?あの日のあとすぐに大群で襲ってきて…」
夢希は白い彼女を慰めようと手を伸ばした時、夢希が伸ばした腕が彼女につかまれ噛みつかれた。夢希は手を引いて、彼女から距離をとる。彼女は自分で自分の体を制御できないまま目に涙をためて最後の力をふり絞って夢希へ逃げるように叫ぶ。
「襲われたときに何かを刺されたの!何か銀色の液体を体に注射された!そこから私、体の制御ができなくて…意識がないまま人を襲ってしまって…もう、どうしていいか…とりあえず、あなたは逃げて!」
「私は逃げませんよ…さて、銀色の魔族と言ったら銀色の使徒ですね…絶対に許せません。ということで、あなたを止めます。全力で。」
夢希は深呼吸をして全身の力を抜いて回復した魔力をすべて血管に流し込み魔族の血をさらに活性化させた。
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「困りましたね…この魔法以外は使えないのですが…」
再び氷の銃を作り出して発砲する。白い彼女は単調な攻撃にパターンを覚えて夢希の攻撃をすべて躱す。そして、氷の弾丸をかいくぐって夢希へ距離を詰めて肩をわしづかみにして夢希を上空へと連れ去る。夢希は足に向けて発砲をするが、足は弾丸をはじいてしまい全く意味をなさない。だんだんと高度が上がりやがて白い彼女は氷の建造物の頂上まで夢希を連れてくる。建造物の頂上へ目を向けると雪が入らないようにドーム型になっており穴を通っていくと暖かい空気とともに血なまぐさい酸っぱい匂いが鼻孔内へ広がる。夢希は鼻を覆いながらされるがままに白い彼女の巣穴の内部へ入っていく。
「……これは酷い…」
思わず口走った夢希の眼前に広がったのは骨の山だった。小動物、熊のような太い骨、貝殻、そして、人骨。様々な骨がその山を作っている。そのさらに中心へ目を向けると最低限の衣に身を包んだ小さな白い塊が3匹ほど見える。夢希と目が合うと口元についた血を拭って骨のかけらをスイカの種飛ばしのように口から吐き出す。夢希は異様な光景に白い彼女へ目を向けて口を開く。
「あなたたち、国から支援を受けてないのですか!?こんなまるで魔獣みたいなことをして……お子さんの教育にも悪いですよ!!」
彼女は夢希の語りかけに耳を傾けずに餌である夢希を巣の中心へもっていく。巣の中心へ夢希を置くとそのまま足で夢希の衣服を破り始める。白い肌が見えやがてその肌へも爪を食い込ませる。血がにじむ腹の痛みに耐えかねて夢希はうめき声をあげながら、拙い炎魔法で彼女の足へ炎の弾をぶつける。奇声を上げて彼女は夢希を離して巣に引火しないように羽ばたいて巣から出ていく。夢希はその間にどうにか逃げられないかあたりを見渡すが、小さな白い翼たちは夢希の血の匂いに興奮したのか彼女のような咆哮をあげながらゆっくりと近づいてくる。
「野生に帰化したのでしょうか……それとも……いや、今はこの場から逃げることを考えないと………………仕方ない…」
夢希は全身に力を入れて魔力も増幅させる。半魔である夢希は魔力を使わないと魔族の血を活性化できない。そのため魔族化すると一時的に魔力が大幅に減ってしまい、魔法や魔術を使うことができなくなるのだ。白い翼を携えて手足を猛禽類の爪へ変える。
「はぁ…これなら逃げられる。」
白い翼を羽ばたかせるとそのまま巣から離脱する。そのまま巣から出ようとするが、鎮火し終った白い彼女が戻ってきて行く手を阻む。魔法が使えない夢希はそのまま踵を返して逃げようとするが、白い彼女は素早く先回りしてここからは逃がさないという意思を示す。
「これは、詰みですね…ですが、だからと言ってあきらめるわけには行きません。」
夢希は翼を羽ばたかせて必死に巣の中を逃げ回る。白い彼女はそのあとを追いながら夢希を追い詰めていく。数分の鬼ごっこの後、夢希はついに白い彼女に追いつかれてしまい、そして、巣の端に追いやられる。白い彼女は夢希へ手を伸ばすがその手は突然止まる。
「…?」
不審に思った夢希は彼女の顔へ目を向ける。涙が頬へ伝うと彼女はようやく人語を話した。
「私の子供たち…私の…こども、たち…」
白い彼女は巣を壊してそのまま外へ出ていき建造物の屋上で小さくうずくまって膝を抱える。夢希は彼女を追いかけて膝を抱えて泣いている彼女の傍へと立つ。彼女は夢希が傍に来たのを悟って口を開いた。
「故郷が、銀色の魔族に襲われたの…その時に子供たちともはぐれてしまって…」
「ですが、巣の中に三人ほど、お子さんが見えた気がしますが…」
「アレは子供じゃない。アレは私が魔法で作った私の分身のようなもの…私が魔法を解けばアレは全部消える。」
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夢希は白い彼女を慰めようと手を伸ばした時、夢希が伸ばした腕が彼女につかまれ噛みつかれた。夢希は手を引いて、彼女から距離をとる。彼女は自分で自分の体を制御できないまま目に涙をためて最後の力をふり絞って夢希へ逃げるように叫ぶ。
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「私は逃げませんよ…さて、銀色の魔族と言ったら銀色の使徒ですね…絶対に許せません。ということで、あなたを止めます。全力で。」
夢希は深呼吸をして全身の力を抜いて回復した魔力をすべて血管に流し込み魔族の血をさらに活性化させた。
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