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2/33:雪
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その日は雪が酷く積もっている日だった。今でも思い出すだけで背筋が凍り、手足の先が冷えるような感覚に陥る。白い息が黒い空へ散り散りになって消えて肌を擦る音だけが私の耳に入ってくるような静寂。そんなときに赤く燃える熱いくらいの温かい炎が目の前に現れた。
そうだった。生まれた地域はものの見事に燃えて灰となって私の記憶に今も残り続けている
─────────────
「満上で一匹の氷の翼が大雪を起こして住民を襲っているそうです。第一班は直ちに向かってください。」
その一言に雪白 夢希の表情がこわばる。琉聖は通信で断ろうと口を開いたが、夢希はそれを止め、琉聖は変な風に返事をして通信を切った。そして、バックミラーに映る夢希へ話しかける。
「本当に大丈夫なの?満上って夢希ちゃんの……」
「構いません。いつかはこんなこともあるんだろうと覚悟していましたから……お兄様行きましょう。これは任務です。」
そうだねと琉聖はアクセルを踏み第一班 班長としてハンドルを握りなおした。満上町とは、星々 琉聖の義妹である雪白 夢希の出身の地域である。約10年前に魔族による大火災が起こって全体の100世帯程が被害を被った地域であり現在は復興も終了しニュー満上として名が知られている。
夢希はその満上という単語よりも氷の翼という単語に表情を険しくしているのだ。氷の翼という魔族の母と人間の父の間に生まれたのが夢希であり、母は人間界での生活が合わなかったのか、よく体調を崩しておりやがて病床に伏したまま亡くなった。父親はと言うと母が亡くなってから性格が暴力的になりよく夢希へ殴る蹴るなどの暴力をしてやがて家も夢希も投げ出して見知らぬ女と姿を消したのだ。夢希の男嫌いはここからきている。
「……夢希ちゃん大丈夫かい?嫌なら無理にとは……」
「ですから、お兄様…これは任務です。私はいえ、私たち一班は満上で暴れている氷の翼を食い止めるために行くだけです。それ以外でもそれ以下でもないです。」
琉聖はそこから何も言わずにアクセルを踏みなおして満上へと向かった。そんな夢希を見て義妹の凪は静かにため息を吐きゲームを再開する。彩虹寺は事情こそ知っていたがそこまで慎重になるまでのものだとは知らずに少し気まずくなる。そんな彩虹寺と目があった夢希は思い出したように口を開く。
「そういえば、晴山さんにはこのこと連絡しなくていいんですか?」
「優吾くんは別件で三班と獅子王くんと一緒に動いてもらってるよ。というか、今回の任務は優吾くんがいなくても僕らだけでなんとかなるよ……いや、なんとかするよ。」
「……当たり前です。もともとは私たちだけだったんですから……」
第一班はそのまま満上へ到着すると現状に目を大きく見開いた。まだ、秋に入る前だというのに、町は一面銀世界でまるでここだけいち早く冬になったような感覚になる。しかし、残暑特融の夏の残り香に班員たちはターゲットを探した。数時間歩き回り民家のドアやインターホンなどにも触れるが、誰も何も言わない。というより、この町全体に人の気がないというのが正解だろう。死んでしまった?それともすでに非難した?答えは否、人自体は建物ないにもいる。しかし、凍ってしまって動けないのだ。そんな銀世界の町に夢希は肌で温度を感じ、そして琉聖へ報告する。
「……温度が常に下がり続けています。というより、一度瞬間的に絶対零度にして、そこから放置して気温が上がってきたらまた下げるを繰り返しています。住民たちは死んではいませんがこのままだと死にます。」
「わかった……早くターゲットを探そう……半分氷の翼の君へ聞くけど習性的にどこに行きそう?」
「そうですね……私だったら、ここを食糧庫として…あの位置を寝床にします。」
夢希の指さす方向は曇りで見えないが、何か高い建造物の影が出来ているのを目視できる。
「よし、向かってみよう。ターゲットがいるかもしれない。」
琉聖の呼びかけで一班は大きな建造物があるであろう方向へと足を進めた。数分歩いているとだんだんと雪が吹いてきて前が見えなくなってきた。凪は前に立ち、炎で照らしながら進む。やがて凪の炎も消えるほどの勢いになった吹雪は人間である琉聖と彩虹寺の動きを鈍くしていく。
「お兄様大丈夫ですか?」
「大丈夫さ…それよりも、あれを見て。」
琉聖が指さす方向にはこの町に似合わない氷でできた大きな木のような建造物が現れた。その上空に一匹。ただ孤独に町全体を見渡す影があった。
「氷の翼ですね。」
「あぁ、まさしくそうだ。この魔力量……多分長寿の個体だ。それよりも何が彼女を怒らせているのか夢希は分かるかな?」
夢希は首を横に振って上空を見上げてその氷の翼をもつ者と視線をぶつけ合った。
「生体は分かっても感情までは分かりません。まして、魔族が怒る理由なんて人間歴が長い私は知る由もないですよ……ただ、これだけは言える。彼女は私と同じ目をしている。大切なものを失った目を……」
夢希は魔法で氷の銃を創造して彼女へ向かって構える。殺気を察知したのか白い彼女は翼を大きく広げて思い切り凍てつく空気を吸い込み口を開けると鳥のような獣のような声を周辺の吹雪を吹き飛ばすように叫んだ。オノマトペでも音でも、言葉でも表現できない咆哮に夢希以外の者は耳をふさぐ。
「私は半分だけ同族です。あなたの咆哮はしゃべり声と同じですよ。」
「……」
白い彼女は翼を羽ばたかせると一瞬で目の前に現れる。夢希は琉聖を彩虹寺と凪の方へ投げつけて一人で白い彼女の相手をした。
2/33:雪
そうだった。生まれた地域はものの見事に燃えて灰となって私の記憶に今も残り続けている
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「満上で一匹の氷の翼が大雪を起こして住民を襲っているそうです。第一班は直ちに向かってください。」
その一言に雪白 夢希の表情がこわばる。琉聖は通信で断ろうと口を開いたが、夢希はそれを止め、琉聖は変な風に返事をして通信を切った。そして、バックミラーに映る夢希へ話しかける。
「本当に大丈夫なの?満上って夢希ちゃんの……」
「構いません。いつかはこんなこともあるんだろうと覚悟していましたから……お兄様行きましょう。これは任務です。」
そうだねと琉聖はアクセルを踏み第一班 班長としてハンドルを握りなおした。満上町とは、星々 琉聖の義妹である雪白 夢希の出身の地域である。約10年前に魔族による大火災が起こって全体の100世帯程が被害を被った地域であり現在は復興も終了しニュー満上として名が知られている。
夢希はその満上という単語よりも氷の翼という単語に表情を険しくしているのだ。氷の翼という魔族の母と人間の父の間に生まれたのが夢希であり、母は人間界での生活が合わなかったのか、よく体調を崩しておりやがて病床に伏したまま亡くなった。父親はと言うと母が亡くなってから性格が暴力的になりよく夢希へ殴る蹴るなどの暴力をしてやがて家も夢希も投げ出して見知らぬ女と姿を消したのだ。夢希の男嫌いはここからきている。
「……夢希ちゃん大丈夫かい?嫌なら無理にとは……」
「ですから、お兄様…これは任務です。私はいえ、私たち一班は満上で暴れている氷の翼を食い止めるために行くだけです。それ以外でもそれ以下でもないです。」
琉聖はそこから何も言わずにアクセルを踏みなおして満上へと向かった。そんな夢希を見て義妹の凪は静かにため息を吐きゲームを再開する。彩虹寺は事情こそ知っていたがそこまで慎重になるまでのものだとは知らずに少し気まずくなる。そんな彩虹寺と目があった夢希は思い出したように口を開く。
「そういえば、晴山さんにはこのこと連絡しなくていいんですか?」
「優吾くんは別件で三班と獅子王くんと一緒に動いてもらってるよ。というか、今回の任務は優吾くんがいなくても僕らだけでなんとかなるよ……いや、なんとかするよ。」
「……当たり前です。もともとは私たちだけだったんですから……」
第一班はそのまま満上へ到着すると現状に目を大きく見開いた。まだ、秋に入る前だというのに、町は一面銀世界でまるでここだけいち早く冬になったような感覚になる。しかし、残暑特融の夏の残り香に班員たちはターゲットを探した。数時間歩き回り民家のドアやインターホンなどにも触れるが、誰も何も言わない。というより、この町全体に人の気がないというのが正解だろう。死んでしまった?それともすでに非難した?答えは否、人自体は建物ないにもいる。しかし、凍ってしまって動けないのだ。そんな銀世界の町に夢希は肌で温度を感じ、そして琉聖へ報告する。
「……温度が常に下がり続けています。というより、一度瞬間的に絶対零度にして、そこから放置して気温が上がってきたらまた下げるを繰り返しています。住民たちは死んではいませんがこのままだと死にます。」
「わかった……早くターゲットを探そう……半分氷の翼の君へ聞くけど習性的にどこに行きそう?」
「そうですね……私だったら、ここを食糧庫として…あの位置を寝床にします。」
夢希の指さす方向は曇りで見えないが、何か高い建造物の影が出来ているのを目視できる。
「よし、向かってみよう。ターゲットがいるかもしれない。」
琉聖の呼びかけで一班は大きな建造物があるであろう方向へと足を進めた。数分歩いているとだんだんと雪が吹いてきて前が見えなくなってきた。凪は前に立ち、炎で照らしながら進む。やがて凪の炎も消えるほどの勢いになった吹雪は人間である琉聖と彩虹寺の動きを鈍くしていく。
「お兄様大丈夫ですか?」
「大丈夫さ…それよりも、あれを見て。」
琉聖が指さす方向にはこの町に似合わない氷でできた大きな木のような建造物が現れた。その上空に一匹。ただ孤独に町全体を見渡す影があった。
「氷の翼ですね。」
「あぁ、まさしくそうだ。この魔力量……多分長寿の個体だ。それよりも何が彼女を怒らせているのか夢希は分かるかな?」
夢希は首を横に振って上空を見上げてその氷の翼をもつ者と視線をぶつけ合った。
「生体は分かっても感情までは分かりません。まして、魔族が怒る理由なんて人間歴が長い私は知る由もないですよ……ただ、これだけは言える。彼女は私と同じ目をしている。大切なものを失った目を……」
夢希は魔法で氷の銃を創造して彼女へ向かって構える。殺気を察知したのか白い彼女は翼を大きく広げて思い切り凍てつく空気を吸い込み口を開けると鳥のような獣のような声を周辺の吹雪を吹き飛ばすように叫んだ。オノマトペでも音でも、言葉でも表現できない咆哮に夢希以外の者は耳をふさぐ。
「私は半分だけ同族です。あなたの咆哮はしゃべり声と同じですよ。」
「……」
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