月光霧刀の魔幻導士~The Phantom Story’s~

河鹿 虫圭

文字の大きさ
17 / 20

拾/漆之巻:夏休みの山で修…行……?

しおりを挟む
木々が揺れ動き、鳥は逃げるように飛び去って行き、風が不自然に吹き荒れる。

「なんだ、この胸騒ぎは……」

寝起きの朧はそういうとトイレに行くために部屋を出た。その時、目の前が一瞬で真っ暗になった。

「な、にが……」

そのまま倒れこむ朧の背後には少女が立っていた。

「やっと、やっと会えたね、朧くん。」

少女はその細身の腕で朧を抱えて朧とともに姿を消した。

─────────────

朝、目が覚めて九頭竜 誠は朧がいないことに気づく。きっといつものルーチンが抜けなくて早めに目覚めてしまったのだろうと考え朧のことはそう深く考えずに部屋を出て昨日の修行をこっそりと再開する。

「皆が集まるまでには余裕でできるようにならねぇと。」

昨日の場所へ行き座禅を組んで集中力をあげる。全開で放出したエナジーを空気弁を調整するようにだんだんと弱めていく.、弱めて、弱めて、「ここだ」と何かをつかんだ九頭竜はそこで力を込めずに自然体でエナジーを止めることを意識する。

「で、きた。これだ。」

昨日ラストでやった時よりも力を入れずにエナジーを安定化させることに成功した九頭竜は静かにガッツポーズを決めた。

「これを、始まるギリギリまで保つ!」

そういって九頭竜は今の状態を保ちながら部屋へと戻った。さすがに朧は戻ってきているだろうと部屋へ入るが、朧はまだ姿を見せていなかった。諸星と武田は戻ってきた九頭竜を見て驚いた。

「まさか、夜月くんは一緒じゃないの?」

「いや?朝のルーチンから戻ってないだけだろ…?」

表情は焦らずにそう言った九頭竜だが、何かおかしいと勘付く。そしてその違和感は見事的中した。茂木が集合をかけてクラス全員が集合したが、朧だけがまだ戻ってきていなかった。

「おいおい、まさかルーチンの時の事故ったとかか……?」

ザワザワする茂木クラスだったが、茂木はそのざわつきを止める。

「焦るな。外に出て遭難しているのなら我々教師陣でポイントごとに探す。だから、君たちは修行にいそしんでくれ。」

不安要素を残しつつ合宿二日目がスタートした。

「おい、諸星、俺らもさっさと修行クリアして探しに行くぞ。」

「……そうね。でも九頭竜くん、集中の修行をクリアできる?正直私は自信がないわ。」

「わ、私も、不安です……」

「そうだな。でも夜月のためだ。がんばるぞ。」

三人はうなずき早速座禅の再修行をしに緑化のもとへ向かった。

─────────────

小学生のころを思い出す。避けられて、無視されて、心がすさんでいた毎日。そんなオレに話しかけてくれた子がいた。名前は確か、朝比奈あさひな 明美あけみ。運動音痴で体育の時はいつも見学していて、でも座学は得意で周りからはひがまれることも逆に和気あいあいとすることもない適度な距離間の少女だった。とても目が悪いのか度の強い分厚い眼鏡を着用していたような気がする。たまに図書館で会ってはこの本がどうだったとか、あの本はそうだったとかを話していた。その時はオレも苦にならずに話すことができていた。いや、正直好きだったのかもしれない。

ふと目が覚める。薄暗くて湿った空気が頬をかすめて耳にはどこからか雫が伝う音が聞こえてくる。自分が今どうなっているのかを確認するために体を動かすと洞窟の鍾乳洞の柱に縛られているのが分かった。

「な、なんで、こんなことに。」

朝、起きて部屋を出たあたりで思い出す。誰かに何かされて眠らされたんだ。それで今こんなことに……でも誰が?何のために?とりあえずここは逃げよう。そう思ってナイフのギアを取り出そうとするが、ポケットにギアがない。寝るときも風呂にいるときも、ギアはどこか手の届くところに置いてある。なのに……

「なぜ、ギアがないか不思議に思うよね……」

背後から声が聞こえた。弱弱しくか細い声。だが、聞き覚えのある声だ。どこだったか……いつだったか……

あ。

そう、この声は朝比奈 明美の声だ。小学生以来会っていないが分かる。この声は朝比奈 明美だ。足音がだんだんと近づいてきてついに目の前に現れた。あの時と同じだ。あの時の朝比奈 明美そのままだ。変わったことと言えば、身長と目の下の異常なクマだ。睡眠時間をあまりとっていないのか?心なしか細くも見えてきた。

「あ、さひなさん?」

「はい、朝比奈 明美です。久しぶりね。やっと会えたわ…朧くん……」

朝比奈さんはオレの頬に手を伸ばしてうっとりとしている。オレも当時の記憶がよみがえってきて懐かしい気持ちになった。数分見とれているとはっと我に返る。

「そうだ、オレ今朝起きて旅館の部屋から出たら誰かにここに連れてこられてたんだ……助かったよ。朝比奈さん。縄をほどいて早くここから出よう。誰が戻ってくるのかもわからないし……」

そんなオレの説明を受けても朝比奈さんは手を動かそうとはしないで、微笑み続けている。

「朝比奈さん……?」

「なんで、ここから出ようと思うんですか?」

「は?あ、オレ今合宿に来てて、それでクラスメイトたちが心配するから……」

「でも、誰も探しに来てませんよ?」

「いや、わかるはずだ。オレがいなくなったら誰かは気づいてくれているはずだ。」

「でも、誰も来てません。」

「そりゃ、だって、まだオレの場所が分からないはずだから……」

何か様子がおかしい。朝比奈さんの目、あんなに黒かったか?あんなに渦巻いて、あんなに執着していたか?

「朝比奈さん。この数年に何があったの?」

朝比奈さんはやっと聞いてくれたと言わんばかりに口角を上げてさらにぎこちなく微笑んだ。

「聞きたい?私の中学校三年間の生活……」

目が笑っていないように感じるその目からは影か、闇か、そのどちらでもない黒い何かがあふれ出ているように感じたオレはただ黙ってうなずいて見せた。

拾/漆之巻:夏休みの山で修…行……?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

花鳥見聞録

木野もくば
ファンタジー
花の妖精のルイは、メジロのモクの背中に乗って旅をしています。ルイは記憶喪失でした。自分が花の妖精だったことしか思い出せません。失くした記憶を探すため、さまざまな世界を冒険します。 記憶を取り戻して真実を知った時、ルイとモクの選ぶ道は?

処理中です...