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拾/漆之巻:夏休みの山で修…行……?
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木々が揺れ動き、鳥は逃げるように飛び去って行き、風が不自然に吹き荒れる。
「なんだ、この胸騒ぎは……」
寝起きの朧はそういうとトイレに行くために部屋を出た。その時、目の前が一瞬で真っ暗になった。
「な、にが……」
そのまま倒れこむ朧の背後には少女が立っていた。
「やっと、やっと会えたね、朧くん。」
少女はその細身の腕で朧を抱えて朧とともに姿を消した。
─────────────
朝、目が覚めて九頭竜 誠は朧がいないことに気づく。きっといつものルーチンが抜けなくて早めに目覚めてしまったのだろうと考え朧のことはそう深く考えずに部屋を出て昨日の修行をこっそりと再開する。
「皆が集まるまでには余裕でできるようにならねぇと。」
昨日の場所へ行き座禅を組んで集中力をあげる。全開で放出したエナジーを空気弁を調整するようにだんだんと弱めていく.、弱めて、弱めて、「ここだ」と何かをつかんだ九頭竜はそこで力を込めずに自然体でエナジーを止めることを意識する。
「で、きた。これだ。」
昨日ラストでやった時よりも力を入れずにエナジーを安定化させることに成功した九頭竜は静かにガッツポーズを決めた。
「これを、始まるギリギリまで保つ!」
そういって九頭竜は今の状態を保ちながら部屋へと戻った。さすがに朧は戻ってきているだろうと部屋へ入るが、朧はまだ姿を見せていなかった。諸星と武田は戻ってきた九頭竜を見て驚いた。
「まさか、夜月くんは一緒じゃないの?」
「いや?朝のルーチンから戻ってないだけだろ…?」
表情は焦らずにそう言った九頭竜だが、何かおかしいと勘付く。そしてその違和感は見事的中した。茂木が集合をかけてクラス全員が集合したが、朧だけがまだ戻ってきていなかった。
「おいおい、まさかルーチンの時の事故ったとかか……?」
ザワザワする茂木クラスだったが、茂木はそのざわつきを止める。
「焦るな。外に出て遭難しているのなら我々教師陣でポイントごとに探す。だから、君たちは修行にいそしんでくれ。」
不安要素を残しつつ合宿二日目がスタートした。
「おい、諸星、俺らもさっさと修行クリアして探しに行くぞ。」
「……そうね。でも九頭竜くん、集中の修行をクリアできる?正直私は自信がないわ。」
「わ、私も、不安です……」
「そうだな。でも夜月のためだ。がんばるぞ。」
三人はうなずき早速座禅の再修行をしに緑化のもとへ向かった。
─────────────
小学生のころを思い出す。避けられて、無視されて、心がすさんでいた毎日。そんなオレに話しかけてくれた子がいた。名前は確か、朝比奈 明美。運動音痴で体育の時はいつも見学していて、でも座学は得意で周りからはひがまれることも逆に和気あいあいとすることもない適度な距離間の少女だった。とても目が悪いのか度の強い分厚い眼鏡を着用していたような気がする。たまに図書館で会ってはこの本がどうだったとか、あの本はそうだったとかを話していた。その時はオレも苦にならずに話すことができていた。いや、正直好きだったのかもしれない。
ふと目が覚める。薄暗くて湿った空気が頬をかすめて耳にはどこからか雫が伝う音が聞こえてくる。自分が今どうなっているのかを確認するために体を動かすと洞窟の鍾乳洞の柱に縛られているのが分かった。
「な、なんで、こんなことに。」
朝、起きて部屋を出たあたりで思い出す。誰かに何かされて眠らされたんだ。それで今こんなことに……でも誰が?何のために?とりあえずここは逃げよう。そう思ってナイフのギアを取り出そうとするが、ポケットにギアがない。寝るときも風呂にいるときも、ギアはどこか手の届くところに置いてある。なのに……
「なぜ、ギアがないか不思議に思うよね……」
背後から声が聞こえた。弱弱しくか細い声。だが、聞き覚えのある声だ。どこだったか……いつだったか……
あ。
そう、この声は朝比奈 明美の声だ。小学生以来会っていないが分かる。この声は朝比奈 明美だ。足音がだんだんと近づいてきてついに目の前に現れた。あの時と同じだ。あの時の朝比奈 明美そのままだ。変わったことと言えば、身長と目の下の異常なクマだ。睡眠時間をあまりとっていないのか?心なしか細くも見えてきた。
「あ、さひなさん?」
「はい、朝比奈 明美です。久しぶりね。やっと会えたわ…朧くん……」
朝比奈さんはオレの頬に手を伸ばしてうっとりとしている。オレも当時の記憶がよみがえってきて懐かしい気持ちになった。数分見とれているとはっと我に返る。
「そうだ、オレ今朝起きて旅館の部屋から出たら誰かにここに連れてこられてたんだ……助かったよ。朝比奈さん。縄をほどいて早くここから出よう。誰が戻ってくるのかもわからないし……」
そんなオレの説明を受けても朝比奈さんは手を動かそうとはしないで、微笑み続けている。
「朝比奈さん……?」
「なんで、ここから出ようと思うんですか?」
「は?あ、オレ今合宿に来てて、それでクラスメイトたちが心配するから……」
「でも、誰も探しに来てませんよ?」
「いや、わかるはずだ。オレがいなくなったら誰かは気づいてくれているはずだ。」
「でも、誰も来てません。」
「そりゃ、だって、まだオレの場所が分からないはずだから……」
何か様子がおかしい。朝比奈さんの目、あんなに黒かったか?あんなに渦巻いて、あんなに執着していたか?
「朝比奈さん。この数年に何があったの?」
朝比奈さんはやっと聞いてくれたと言わんばかりに口角を上げてさらにぎこちなく微笑んだ。
「聞きたい?私の中学校三年間の生活……」
目が笑っていないように感じるその目からは影か、闇か、そのどちらでもない黒い何かがあふれ出ているように感じたオレはただ黙ってうなずいて見せた。
拾/漆之巻:夏休みの山で修…行……?
「なんだ、この胸騒ぎは……」
寝起きの朧はそういうとトイレに行くために部屋を出た。その時、目の前が一瞬で真っ暗になった。
「な、にが……」
そのまま倒れこむ朧の背後には少女が立っていた。
「やっと、やっと会えたね、朧くん。」
少女はその細身の腕で朧を抱えて朧とともに姿を消した。
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朝、目が覚めて九頭竜 誠は朧がいないことに気づく。きっといつものルーチンが抜けなくて早めに目覚めてしまったのだろうと考え朧のことはそう深く考えずに部屋を出て昨日の修行をこっそりと再開する。
「皆が集まるまでには余裕でできるようにならねぇと。」
昨日の場所へ行き座禅を組んで集中力をあげる。全開で放出したエナジーを空気弁を調整するようにだんだんと弱めていく.、弱めて、弱めて、「ここだ」と何かをつかんだ九頭竜はそこで力を込めずに自然体でエナジーを止めることを意識する。
「で、きた。これだ。」
昨日ラストでやった時よりも力を入れずにエナジーを安定化させることに成功した九頭竜は静かにガッツポーズを決めた。
「これを、始まるギリギリまで保つ!」
そういって九頭竜は今の状態を保ちながら部屋へと戻った。さすがに朧は戻ってきているだろうと部屋へ入るが、朧はまだ姿を見せていなかった。諸星と武田は戻ってきた九頭竜を見て驚いた。
「まさか、夜月くんは一緒じゃないの?」
「いや?朝のルーチンから戻ってないだけだろ…?」
表情は焦らずにそう言った九頭竜だが、何かおかしいと勘付く。そしてその違和感は見事的中した。茂木が集合をかけてクラス全員が集合したが、朧だけがまだ戻ってきていなかった。
「おいおい、まさかルーチンの時の事故ったとかか……?」
ザワザワする茂木クラスだったが、茂木はそのざわつきを止める。
「焦るな。外に出て遭難しているのなら我々教師陣でポイントごとに探す。だから、君たちは修行にいそしんでくれ。」
不安要素を残しつつ合宿二日目がスタートした。
「おい、諸星、俺らもさっさと修行クリアして探しに行くぞ。」
「……そうね。でも九頭竜くん、集中の修行をクリアできる?正直私は自信がないわ。」
「わ、私も、不安です……」
「そうだな。でも夜月のためだ。がんばるぞ。」
三人はうなずき早速座禅の再修行をしに緑化のもとへ向かった。
─────────────
小学生のころを思い出す。避けられて、無視されて、心がすさんでいた毎日。そんなオレに話しかけてくれた子がいた。名前は確か、朝比奈 明美。運動音痴で体育の時はいつも見学していて、でも座学は得意で周りからはひがまれることも逆に和気あいあいとすることもない適度な距離間の少女だった。とても目が悪いのか度の強い分厚い眼鏡を着用していたような気がする。たまに図書館で会ってはこの本がどうだったとか、あの本はそうだったとかを話していた。その時はオレも苦にならずに話すことができていた。いや、正直好きだったのかもしれない。
ふと目が覚める。薄暗くて湿った空気が頬をかすめて耳にはどこからか雫が伝う音が聞こえてくる。自分が今どうなっているのかを確認するために体を動かすと洞窟の鍾乳洞の柱に縛られているのが分かった。
「な、なんで、こんなことに。」
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「なぜ、ギアがないか不思議に思うよね……」
背後から声が聞こえた。弱弱しくか細い声。だが、聞き覚えのある声だ。どこだったか……いつだったか……
あ。
そう、この声は朝比奈 明美の声だ。小学生以来会っていないが分かる。この声は朝比奈 明美だ。足音がだんだんと近づいてきてついに目の前に現れた。あの時と同じだ。あの時の朝比奈 明美そのままだ。変わったことと言えば、身長と目の下の異常なクマだ。睡眠時間をあまりとっていないのか?心なしか細くも見えてきた。
「あ、さひなさん?」
「はい、朝比奈 明美です。久しぶりね。やっと会えたわ…朧くん……」
朝比奈さんはオレの頬に手を伸ばしてうっとりとしている。オレも当時の記憶がよみがえってきて懐かしい気持ちになった。数分見とれているとはっと我に返る。
「そうだ、オレ今朝起きて旅館の部屋から出たら誰かにここに連れてこられてたんだ……助かったよ。朝比奈さん。縄をほどいて早くここから出よう。誰が戻ってくるのかもわからないし……」
そんなオレの説明を受けても朝比奈さんは手を動かそうとはしないで、微笑み続けている。
「朝比奈さん……?」
「なんで、ここから出ようと思うんですか?」
「は?あ、オレ今合宿に来てて、それでクラスメイトたちが心配するから……」
「でも、誰も探しに来てませんよ?」
「いや、わかるはずだ。オレがいなくなったら誰かは気づいてくれているはずだ。」
「でも、誰も来てません。」
「そりゃ、だって、まだオレの場所が分からないはずだから……」
何か様子がおかしい。朝比奈さんの目、あんなに黒かったか?あんなに渦巻いて、あんなに執着していたか?
「朝比奈さん。この数年に何があったの?」
朝比奈さんはやっと聞いてくれたと言わんばかりに口角を上げてさらにぎこちなく微笑んだ。
「聞きたい?私の中学校三年間の生活……」
目が笑っていないように感じるその目からは影か、闇か、そのどちらでもない黒い何かがあふれ出ているように感じたオレはただ黙ってうなずいて見せた。
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