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それ差別よね?
しおりを挟む僕たちはギルドにやってきた。
もちろん仕事を斡旋してもらいお金を稼ぐためだ。
ギルドは大通り沿いに建てられた3階建ての大きな建物だった。
扉をくぐるとそこは広いロビーで大勢の人で賑わっている。
僕たちはさっそく受付カウンターに行くことにした。
と、マリスさまが振り返り僕を見上げる。
「ここの受付はあんたが対応しなさい」
「ええ? 僕、人と話するのが苦手なんだけど」
「街に入る時はわたしが門番の対応したでしょ。次はキルナよ」
無理やり僕は前に行かされた。
一応マリスさまは僕の後に付いて来ている。
仕方なく僕は受付に足を向けた。
受付には五人ほどの綺麗なお姉さんが座っている。
見ているだけで顔が赤くなりそうで足が竦む。
そんな僕のお尻をマリスさまが蹴飛ばした。
「痛ッ!」
「痛い訳ないでしょ!、さっさと行きなさい」
確かに痛くない。ただの条件反射です。
僕は背中を小突かれ受付の前に立った。
「いらっしゃいませ」
若草色の髪をした耳の長い綺麗な女の人が挨拶してくれる。
あまりにも綺麗なんで声が震えた。
「あ、あの、ぼ、僕は……」
「このぉ、デレデレすんなッ!」
またもお尻を蹴られた。
そして、「ちょっと来なさい」と、僕はロビーの端に引っ張っていかれる。
そこで眉尻を吊り上げたマリスさまが僕を睨みつける。
「照れてるの? デレてるの? どっち?」
「えっと……恥ずかしいんだと思う」
「……まぁどっちでもいいけど、ちょっと前髪をあげてオデコを見せなさい」
「え、なに?」
言われた通り前髪を持ち上げると、バチンッ!とデコピンを食らわされた。
すると、ドキドキしていた心臓がすぅーと落ち着いていった。
火照っていた顔からも熱が引いていった。
「強心の魔法よ。ちょっとは落ち着いた? 効果は十分程度。魔方陣を刻んだわけじゃないから効果が切れたらそれでお終い。まぁデレじゃないならそれで普通に話せるはずよ」
僕はその効果を信じて再び受付に向かった。
「いらっしゃいませ」
やっぱり緊張して顔が熱くなる。けどさっきほどじゃない。
「えっと、冒険者の登録をして欲しいんですけど」
「かしこまりました」
若草色の髪の綺麗なお姉さんが丁寧に頭を下げてくれる。
そして冒険者ギルドの概要というかシステム的なことを説明された。
ようは冒険者としてギルドに登録すれば、仕事を斡旋してもらえるらしい。
その斡旋される依頼のことは通常任務と呼ばれている。
冒険者には階級(A~Jの10段階)があってそのランクが上に行くほど報酬の高いクエストが受けれるのだとか。
ただそれは難易度も上がるため危険がともなうらしい。
クエストはロビー内にある掲示板に依頼書として張り出されているから、そこから好きなものを選んで受付に持っていくことで依頼を受けられる。
ただ自分のランク以下のクエストしか受けることができない。
ランクの更新はランクごとに違うが低位ランクは三ヶ月に一度。
原則としてその間に一回以上のクエストを達成しなければならない。
未達成の場合は冒険者証の剥奪もありうる。
更新時にはランクアップ試験を受けることが出来る。
そのランクアップ試験に合格すれば、ランクが一段階上がる。
クエストの条件、報酬、失敗時の罰則などはクエストごとに違うので依頼書をよく確認すること。
そして冒険者登録は年齢六歳以上。性別人種は問わない。
まぁ他にもいろいろあったけど、大まかにこんな感じだった。
そして無事登録が完了して冒険者証を貰う。
名前、種族、性別、生年月日、身長、体重などの他に、冒険者としてのランクが『J』と記載されていた。
そしてこれはそのまま身分証にもなるらしい。
早速僕たちはクエストを受けるために掲示板を見に行った。
掲示板はランクごとに別けられている。
僕たちが見るのはもちろん『J』ランクの掲示板だ。
そして『J』ランクは最低ランクなのでクエストも簡単なものばかり。
報酬もすごく安く、子供の小遣い稼ぎ的なものでしかない。
例えば――『薬草採集』換金率は薬草一本に対して石貨一枚。
石貨一枚といえば日本円に換算すればおよそ十円くらいかな。
たしかあの香ばしい串焼きは一本石貨五枚(五十円)だった。
ちなみに、このクエストは本当に十歳以下の子供が受けるような依頼らしい。
まさに子供でもできる簡単な依頼なのだろう。
だからといって数を集めるのは結構大変らしく、慣れた者でも一日探し回って百本、初心者なら三十本集められれば良いほうらしい。
つまり一日の稼ぎが日本円で多くて千円、少なければ三百円以下。
さすがにそれはどうなのと思う。
僕は他のクエストを探すことにした。
マリスさまといえば……隣の違う掲示板を見ていた。
そこはランクの制限がない掲示板だ。
誰でも受けられるランク無制限のクエストが張り出された掲示板。
それって難しい依頼しかないんじゃないの?
「マリスさま、『J』ランクはこっちだよ」
僕の呼びかけにマリスさまはフンッと鼻を鳴らす。
そして指先をちょぃちょぃと折り曲げ僕を呼ぶ。
仕方なくマリスさまの傍に行ってみると、一枚のクエストを指差された。
内容は『魔石収集』換金率は1㌘に対して金貨一枚。つまり一万円だ。
ちなみに魔石は魔物の体内に宿っているものと、鉱山など土の中に眠るものがある。
「まさかこれ受けるの?」
「ええ、『J』ランクでこれ以上に効率の良いクエストがある?」
ざっと見た感じそんな高額報酬のクエストはなかった。
でもこれは危険じゃないだろうか?
魔物から取るなんて論外、鉱山だって危険な気がする。
僕がそのことを小声で伝えると、耳をグイッと引っ張られた。
そして小さな声で耳打ちされる。
「わたしが魔法で魔石を出せばいいだけでしょ!」
えッ!
「それは不味いんじゃないの? 偽造と同じだよ」
「はぁ? 魔物が体内に宿す魔石は良くて、わたしが生成する魔石はダメなの? それって何かおかしくない? それ差別よね?」
う……そう言われれば、それでもいいのかなと思いそうになる。
でも、仮にも女神さまが魔物と一緒でいいの?
「とにかく法律に違反しなきゃいいんでしょ? 硬貨の製造は違法でも魔石の生成が違法だなんて法はないわよ」
ないって言いきっちゃったよ。すごい自信だな……もしかしたら本当にないのかな?
でも……そんな法律があったら魔物の魔石だって流通できなくなる?
つまり魔石の生成は合法ってことなのかな……。
マリスさまはそんな僕を他所にロビーの片隅で「【生成」!」と呟いていた。
手には魔石が一個握られている。
ちょっとハァハァ言ってるところが可愛い。
「この魔石でクエスト達成できるか試してきなさい」
僕は小指の爪より小さな魔石を一個手渡された。
恐る恐る依頼書を掲示板から剥がし、受付のお姉さんに持っていく。
「魔石を持っているんですけど、それでこのクエストを今すぐ達成できますか?」
聞いてみたら、問題ないですよと言われた。
なのでそのままクエストを受諾、魔石を渡し計量、換金してもらった。
そしてクエスト達成となった。
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