転生したら上司(オーナー)がもふもふ過ぎて、正直可愛い

ふぇりちた

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バリスタ、転生する

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「慧さん、調子どうですか?」
「微妙」
「ええっ。あと2週間ですよね。間に合うんですか!」


 そんなの、こっちが知りたい。

 イタリアで開催されるワールド・バリスタ・チャンピオンシップ。そして俺は、2大会連続出場を決めた新星バリスタ白川と呼ばれている。
 重い、重過ぎる。名前が一人歩きしている。
 だいたい、日本人の連続出場者は珍しくない。
他にもいるはずだ。

 何故、こんな恥ずかしい名前をつけられたのか。
それは昨年の大会のせいである。
 バリスタ歴2年のヒヨコだったはずなのに、先輩バリスタに無理矢理出場させられてしまったのだ。
さぞや悲惨なものになるだろうと、誰もが思った。
しかし、ビギナーズラックというか、棚から牡丹餅と言うべきか。
ギリギリで決勝に進出しただけでも驚かれたのに、まさかの世界2位である。
1位と3位のイタリア人に挟まれた身長172cmの俺。辛かったな。色んな意味で。


「無理」
「何言ってんですか!
慧さんは1位候補筆頭なんですよ!
優勝しましょう」
「無理。もう何が正解なのか分かんない」


 大会用にさまざまなブレンド、炒り方、挽き具合、温度、湿度に至るまで試行錯誤しているが、理想の味に辿り着けていない。
 朝から晩まで何杯もエスプレッソを飲むもんだから、俺の胃は限界だ。もう、粘膜保護の薬だけじゃ誤魔化せない。


「自身持ってくださいよっ。
私、慧さんのコーヒー好きです」
「ありがとう」


 大学生アルバイトの岡田さん。彼女は、元気で仕事もテキパキこなす優秀な子だ。
ウチに就職してくれないかな、なんてスタッフでよく話している。
だけど、今日はそんな良い子からの励ましも、ノーヒットだ。
 心がどんどん荒んでいく気がする。

 ああ。胃が痛い。


「慧さん、具合悪いんですか?
顔色が………てか、冷や汗かいてません?」
「え?
あれ、ほんとだ。汗かいて、る……」
「キャァ─────! ちっ、血が!!
慧さんっ! しっかりしてください、慧さん!
誰か、チーフ! 救急車!」


 岡田さんの悲鳴が聞こえる。
 俺、もしかして倒れたのかな。
情けねえ。あーでも、これで今日はコーヒー飲まなくても大丈夫だ。


「うわ、白川! 大丈夫かっ!
岡田ちゃん、救急車は呼んだからオーナーに連絡して」
「はっはい」
「他のスタッフは、オープンできるように準備!
あと1人だけ店の前立ってろ。救急車来たら、すぐ案内してくれ」
「「「………」」」
「グズグズするなっ」
「「「っはい!」」」


 チーフがいるのか。だったら店は安心だな。
チーフのコーヒーは美味いから。
 あ~、オーナー心配するだろうな。
あの人、気が弱くて優し過ぎるから。
 みんな、ごめん。ちょっと………寝るわ。










「──さまっ、エドアルド様!」


 んん、何だ。うるさいな。
 やっと休めるんだ。もう少し静かにしてくれ。


「誰か奥様をっ。イーシャ様もよ!
エドアルド様の瞼が少し動いたわっ」


 同室は、海外の人なのか。
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