15 / 19
15.温泉と病 (※)
夜会の翌日になると、お茶会の招待状が何通か届いた。声をかけてきたシアスター伯爵からも、僕宛に届いた。なぜ? まだ僕のことを揶揄い足りないんだろうか?
「フィリップ様、どうしましょう?」
「そんなものは無視だ、無視!」
軽い殺気を飛ばしながら不機嫌そうに言うと、旅の支度を整え、早々に王都を出立した。
怒ってる?
「ほら来い」
「一緒に入るのですか?」
「何だ? 恥じらっているのか?」
フィリップ様は豪快にバサっと服を脱いで歩いていったけど、こんなに明るいところで裸を見られるのは恥ずかしい。
温泉っていう、温かい地下水が湧いている街なんだけど、この街はお湯が豊富にあるから公衆浴場がたくさんある。その一つを貸し切って一緒に入ろうと言われたのは数時間前のことだ。
石を積み重ねた池みたいなところにお湯が並々とあって、周りは壁で囲まれているから、人に見られることは無いんだけど、昼間だから明るいんだ。
「俺はお前の体は全部見てる。今更恥ずかしがっても遅いぞ」
もたもたしていると、フィリップ様に服を剥ぎ取られた。
お湯に浸かると、肌がツルツルした。このお湯はただのお湯じゃないんだ。凄い。
「フィリップ様、肌がツルツルです!」
「よかったな。ここの湯に浸かると美肌になるらしいぞ」
「ほら、ツルツル。触ってみてください」
そう言って腕を出したら、その腕を掴まれて引き寄せられた。
後ろから抱きしめられるみたいな格好で湯に浸かる。明るいし、外だし、いけないことをしているみたいでドキドキした。広いんだからこんなに密着しなくてもいいのに。でも、少しだけ嬉しかった。
「どれ、ツルツルになったんだって?」
「あっ、やだ、そんなとこ……」
フィリップ様が優しいってのは撤回しようと思う。フィリップ様は意地悪だ。こんなところで僕の胸や陰茎を弄り倒して、僕は何度も吐精してしまった。
「挿れてほしくなったか?」
「フィリップさま、いじ、わ、る……」
「おいテオ、顔が真っ赤だぞ。のぼせたか?」
本当はこの街では温泉に入るだけで、今日は次の街まで行って泊まる予定だったんだけど、僕が倒れたからこの街で泊まることになった。
「悪かった」
ベッドに寝かされて、窓から生温かい風が入ってくる。フィリップ様は本当に悪いと思ってるみたいで、扇子で僕にずっと風を送ってくれている。
そんなトラブルもあったけど、長い馬車の旅も終わって、やっとベルガー辺境伯領に戻ってきた。
やっぱり王都よりこっちの方が涼しい。
窓から入ってくる風も、そこまでの熱は含んでいなくて心地いい。
領地に戻ってひと月ほどすると、僕は体調を崩した。夏バテってやつかもしれない。そう思ってたのに、どんどん悪化して、お気に入りだったトマトの冷たいパスタも食べられなくなった。
もしかして、僕は死ぬんだろうか?
「テオ、お前もしかして……」
「僕は死ぬのかもしれません」
怖くて夜になるとフィリップ様に縋り付いて泣いた。
それなのに、フィリップ様はちょっと嬉しそうな顔をしている。やっぱり僕のことが嫌だったんだ。いなくなった方が嬉しいんだと思った。
山が緑から黄色や赤に変わり、庭から聞こえていた秋の虫の鳴き声も止んだ頃、少しだけ体調はマシになった。
「支えてやるから少し散歩をするか」
「僕になんて優しくしなくていいですよ」
「また拗ねてるのか? ほら体も回復してきただろ?」
仕方なく一緒に庭を散歩した。庭師が綺麗に整えてくれている庭園、窓から眺めるだけであまり来たことはなかったけど、ここにはこの地でしか育たない花も植えてあるらしい。
この花たちを愛でながら、残りわずかの命を穏やかに過ごしたいと思った。
僕は毎日、メイドたちと庭園に向かった。体力が落ちた僕のために、眺めがいい場所にベンチも用意してくれた。
「綺麗ですね」
「冬は寂しいですが、また春になったら別のお花も咲きますよ」
そっか。でも春の花は、僕は見られないかもしれないな。
最近、フィリップ様は昼間は忙しく動いている。使用人なのか愛人なのか分からないけど、見たことのない女の人も何人か見かけるようになった。
不貞は働かないなんて言ったけど、僕の体調が悪いせいで夜の相手ができないから、欲求不満なのかもしれない。仕方ないよね。僕が勤めを果たせないんだから。
胸の奥が、ズキズキと痛んだ。
僕はフィリップ様を独り占めしたかったのかもしれない。僕だけのフィリップ様でいてほしかったのかもしれない。
もう先のない僕がそんなこと願っても仕方ないんだけど。
あなたにおすすめの小説
【完結】転生した悪役令息は、お望み通り近付きません
カシナシ
BL
「お前など、愛す価値もない」
ディディア・ファントム侯爵令息が階段から落ちる時見たのは、婚約者が従兄弟を抱きしめている姿。
(これって、ディディアーーBLゲームの悪役令息じゃないか!)
妹の笑顔を見るためにやりこんでいたBLゲーム。引くほどレベルを上げた主人公のスキルが、なぜかディディアに転生してそのまま引き継いでいる。
スキルなしとして家族に『失敗作』と蔑まれていたのは、そのスキルのレベルが高すぎたかららしい。
スキルと自分を取り戻したディディアは、婚約者を追いかけまわすのを辞め、自立に向けて淡々と準備をする。
もちろん元婚約者と従兄弟には近付かないので、絡んでこないでいただけます?
十万文字程度。
3/7 完結しました!
※主人公:マイペース美人受け
※女性向けHOTランキング1位、ありがとうございました。完結までの12日間に渡り、ほとんど2〜5位と食い込めた作品となりました!あああありがとうございます……!。゚(゚´Д`゚)゚。
たくさんの閲覧、イイね、エール、感想は、作者の血肉になります……!(o´ω`o)ありがとうございます!(●′ω`人′ω`●)
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
【完結/番外編準備中】
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
----------
追記:読んでくださった皆さま、本当にどうもありがとうございました!!
完結しましたが回収しきれていないエピソードが私の中でいくつかあるので笑、後日番外編をアップしたいなと現在準備中です。
詳しい更新日まだ未定ですが、もしよろしかったらゼヒまた覗いてやってくださいねー!
死ぬだけの悪役令息に転生したら、待っていたのは攻略対象達からの溺愛でした。
きうい
BL
病でで死んでしまった優は、気が付いたら読んでいた小説の悪役令息として転生していた。
それもどのルートでも十五歳という歳になると、死ぬ運命にある悪役———フィオレン・オーレリウス。
前世で家族に恵まれず、家族愛とは程遠い世界で生きてきた優は、愛されたいという願望を捨て、ひとりで生きることを決意する。
しかし、家族に対して表情と感情を隠し、言葉も発さず、一人で生きて行く術を身につけようと家族から距離をとるフィオレンとは裏腹に、家族や攻略対象達は異常なほどの愛を注ぐ。
フィオレンの知らない所で、小説のシナリオとは正反対の道を辿ることになるも、愛に無頓着で無自覚なフィオレンは溺愛されていき………?
アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました
あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」
穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン
攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?
攻め:深海霧矢
受け:清水奏
前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。
ハピエンです。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
からかわれていると思ってたら本気だった?!
雨宮里玖
BL
御曹司カリスマ冷静沈着クール美形高校生×貧乏で平凡な高校生
《あらすじ》
ヒカルに告白をされ、まさか俺なんかを好きになるはずないだろと疑いながらも付き合うことにした。
ある日、「あいつ真に受けてやんの」「身の程知らずだな」とヒカルが友人と話しているところを聞いてしまい、やっぱりからかわれていただけだったと知り、ショックを受ける弦。騙された怒りをヒカルにぶつけて、ヒカルに別れを告げる——。
葛葉ヒカル(18)高校三年生。財閥次男。完璧。カリスマ。
弦(18)高校三年生。父子家庭。貧乏。
葛葉一真(20)財閥長男。爽やかイケメン。
麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る
黒木 鳴
BL
妖精のように愛らしく、深窓の姫君のように美しいセレナードのあだ名は「眠り姫」。学園祭で主役を演じたことが由来だが……皮肉にもそのあだ名はぴったりだった。公爵家の出と学年一位の学力、そしてなによりその美貌に周囲はいいように勘違いしているが、セレナードの中身はアホの子……もとい睡眠欲求高めの不思議ちゃん系(自由人なお子さま)。惰眠とおかしを貪りたいセレナードと、そんなセレナードが可愛くて仕方がない義兄のギルバート、なんやかんやで振り回される従兄のエリオットたちのお話し。完結しました!