1 / 8
プロローグ
僕はニコラ。17歳で、二年前から戦場のゴミ処理係をしている。
戦場では多くの魔道具が使われる。使い捨ての魔道具の残骸や、起動しなかった魔道具、折れた剣や槍、壊れた防具やなんかもある。
防具や武器なんかは別にいいんだけど、問題は魔道具だ。魔石を使い切って捨ててくれればいいんだけど、戦いの最中に魔力が切れるのは困るとかで、まだ魔力が残っているのに捨てられる魔道具がある。何かの拍子に発動してしまったり、上手く起動しなかったものは暴発の恐れがあるから危険だ。
僕はそんな危険な魔道具に浄化をかけて魔力を自然に還す、そんな仕事をしている。それと、魔道具を分解してそれぞれ素材ごとに分けて素材として売る。こっちは副業ってところかな。
軍に直接雇用されているわけじゃない。下請けって感じだから給料は安いけど、その分素材を売ったりするのは自由だから食べていくのに問題はない。
戦場は広いから、色んなところにゴミ捨て場があって、一日に何ヶ所も回るのはちょっと難しい。頑張っても一日に二ヶ所ってところかな。距離が遠いと難しい。
今日のゴミ捨て場は東の一番端。ここは一番戦いが激しいと言われている場所で、流れた魔術が飛んでこないとも限らないから、結界の魔道具を発動させながらゴミ捨て場に向かった。
「ひっ」
怖かった……
一瞬足を止めると、僕のすぐ目の前を氷の矢が掠めていった。氷の矢、あれは魔術でたぶん威力の強いアイスランスだと思う。氷の矢を目で追うと、スピードを落とすことなく飛んでいって、僕の右手後方にある岩を破壊した。
結界の魔道具を発動させているとはいえ、強力な魔術だと結界も壊れるし、例え守られていたとしても魔術が向かってくるのは怖い。
ここは前線からは離れているし、矢だったり投擲のナイフが飛んでくるとか、敵が斬り込んでくることはないけど、こうして魔術が飛んでくることがある。
やっとの思いでゴミ捨て場に到着すると、先客がいた。
先客? その男はゴミの山にもたれて眠っているようだった。
給料が安い割に危険な仕事だし、ゴミ処理係は少ない。珍しいけど、全く会わないってわけでもない。挨拶でもしておこうと近づいてみると、その人はどう見てもゴミ処理係じゃなくて兵士だった。
「大丈夫? ねえ、こんなところに救護班は来ないから、救護班の所行った方がいいんじゃない?」
「ん……うう……」
これ、結構ヤバい状態なんじゃない? 防具とかボロボロだし、この人の血なのか返り血なのか分からないけど、血だらけって感じに見える。
綺麗にするために浄化をかけてみる。綺麗にはなったけど、脇腹からダラダラと血が流れ出していて、防具についている血は返り血じゃなくてこの人の血だった。
僕が持ってるポーションは低級で、こんな大怪我に効き目あるのかな? 不安になりながらポーションを傷口に半分かけて、半分は無理やり口を開けて飲ませた。
ゴミの山にもたれてるなんて危なすぎる。
僕は男を引きずってゴミの山から離すと、ポーションが効いてくるまで今日の仕事をすることにした。
魔道具を探し出しては浄化をかけて無力化して、分解していく。
あの男はいつ起きるんだろう?
作業を進めながらチラチラと眺めているけど、全然起きない。まさか間に合わずに死んじゃったりしてないよね?
戦争をしているんだから、人が死ぬのは珍しくない。でも僕の目の前で誰かが死んでしまうのは怖いと思った。
不安になった僕は、慌てて男の元に行って、分厚い胸に耳を当てた。
トクッ、トクッ、トクッ……
まだ心臓はちゃんと動いてる。でも起きないってことは大丈夫ってわけでもないんだよね?
ここは東の外れで、救護班のテントまでは遠い。救護班のテントなんて、兵でもない僕が近づいてもいいものなのかも分からない。
仕方ない。僕は男を背負って帰ることにした。
男が重いから、今日は素材の回収を諦めた。
この男は僕より大きくて背負っても足を引き摺る。もうそれは仕方ないよね。
そんなに得意じゃない身体強化を使って街の外れの家に帰ると、もう魔力がなくなりそうでフラフラだった。
なんとか男をベッドに寝かすことはできたけど、そこで僕は力尽きた。
あなたにおすすめの小説
妹の身代りに生け贄にされたんだけどガチでマジ恋しちゃいました~世界にただ1人の男Ωは、邪神の激愛に絆される~
トモモト ヨシユキ
BL
邪神の生け贄になることが決まった妹王女の身代わりになるように命じられた不遇な王子は、Ωになるという秘薬を飲まされて邪神の洞に落とされる。
エブリスタにも掲載しています。
不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です
新川はじめ
BL
国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。
フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。
生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり
記憶喪失になったら弟の恋人になった
天霧 ロウ
BL
ギウリは種違いの弟であるトラドのことが性的に好きだ。そして酔ったフリの勢いでトラドにキスをしてしまった。とっさにごまかしたものの気まずい雰囲気になり、それ以来、ギウリはトラドを避けるような生活をしていた。
そんなある日、酒を飲んだ帰りに路地裏で老婆から「忘れたい記憶を消せる薬を売るよ」と言われる。半信半疑で買ったギウリは家に帰るとその薬を飲み干し意識を失った。
そして目覚めたときには自分の名前以外なにも覚えていなかった。
見覚えのない場所に戸惑っていれば、トラドが訪れた末に「俺たちは兄弟だけど、恋人なの忘れたのか?」と寂しそうに告げてきたのだった。
トラド×ギウリ
(ファンタジー/弟×兄/魔物×半魔/ブラコン×鈍感/両片思い/溺愛/人外/記憶喪失/カントボーイ/ハッピーエンド/お人好し受/甘々/腹黒攻/美形×地味)
男だって愛されたい!
朝顔
BL
レオンは雑貨店を営みながら、真面目にひっそりと暮らしていた。
仕事と家のことで忙しく、恋とは無縁の日々を送ってきた。
ある日父に呼び出されて、妹に王立学園への入学の誘いが届いたことを知らされる。
自分には関係のないことだと思ったのに、なぜだか、父に関係あると言われてしまう。
それには、ある事情があった。
そしてその事から、レオンが妹の代わりとなって学園に入学して、しかも貴族の男性を落として、婚約にまで持ちこまないといけないはめに。
父の言うとおりの相手を見つけようとするが、全然対象外の人に振り回されて、困りながらもなぜだか気になってしまい…。
苦労人レオンが、愛と幸せを見つけるために奮闘するお話です。
待て、妊活より婚活が先だ!
檸なっつ
BL
俺の自慢のバディのシオンは実は伯爵家嫡男だったらしい。
両親を亡くしている孤独なシオンに日頃から婚活を勧めていた俺だが、いよいよシオンは伯爵家を継ぐために結婚しないといけなくなった。よし、お前のためなら俺はなんだって協力するよ!
……って、え?? どこでどうなったのかシオンは婚活をすっ飛ばして妊活をし始める。……なんで相手が俺なんだよ!
**ムーンライトノベルにも掲載しております**
断罪回避のために親友と仮婚約したはずが、想像以上に執着されていた。
鷲井戸リミカ
BL
ある日アーサーは、自分がネット小説の世界に転生していることに気が付いた。前世の記憶によれば親友のフェルディナンドは、悪役令息という役割らしい。最終的に婚約者から婚約破棄され、断罪後は国外追放されてしまうのだとか。
大事な親友が不幸になるのを見過ごすわけにはいかない。とにかく物語の主人公たちから距離をとらせようと、アーサーはフェルディナンドを自分の婚約者にしてしまった。
とりあえず仮婚約という形にしておいて、学園を卒業したら婚約を解消してしまえばいい。そう考えていたはずがアーサーのとある発言をきっかけに、フェルディナンドの執着が明らかになり……。
ハッピーエンドです。