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7(桐崎視点)
しおりを挟むなんか最近変な奴に付き纏われている。
害はない。むしろいい影響しかないような奴だ。
お礼だとか言って、追試の勉強の手伝いをしてくれている。
何を飲むか聞いたら、水道水とか意味の分からないことを言うし、急に鼻血出した時は焦ったが、真面目に教えてくれるし、なんなら学校の先生より分かりやすい。
「ねえ、桐崎くんってどんな人が好きなの?」
「は? 好きな奴? んー強い奴」
何言ってんだ? 好きな奴? やっぱ格闘技とかやってる強い奴は憧れるよな。
俺はただの喧嘩しかしたことがないけど、ファイターには憧れる。あんな格好いい男になりたいって。
そんなこと聞いてどうすんだ? 変な奴だな。
きっとこいつは学者とか弁護士とか、そんな偉そうな奴に憧れるんだろうな。
追試が終わるまで、マジでこいつは毎日俺の家に来た。自分の勉強はいいのかよとも思ったが、学年で1位を取るような奴なんだから余裕なんだろう。
「連絡先交換してくれませんか?」
追試が終わる日に、わざわざ下駄箱で待ち伏せされてそんなことを言われた。
真面目くんはたまに俺に敬語を使う。たまに馴れ馴れしいし、急に距離置かれるし、訳が分からん。
「追試終わったんだから必要ないだろ」
真面目くんと俺が関わることなどもう無いと思った。
「そっか、そうだよね」
なんかものすごく悲しそうな顔をされて、肩を落としてトボトボと哀愁漂う背中で帰っていった。
なんか俺が悪いみたいじゃないか。
真面目くんなんだから俺なんかと関わらずに真面目に生きろよ。
そして間も無く夏休みに入った。
退屈な日々だった。
俺は意外と真面目くんと2人で勉強する時間が好きだったらしい。
あれ、あいつ教科書忘れてんじゃん。
俺もたまには真面目くんの真似をして、宿題でもと思って教科書を並べていたら、数学の教科書が2冊あった。
裏を見ると真面目くんらしく、ちゃんと名前がフルネームで書いてある。
これは困ってんだろうな。
そう思った俺は、前に一度送って行った真面目くんの家に教科書を持って行くことにした。
いなかったら玄関ポストにでも入れておけばいいだろ。
前は気にせずそのまま行ったが、真面目くんの家に俺みたいな奴が行って、真面目くんが近所から変な奴と付き合いがあると誤解されてもいけないと思った。
髪は立てたりせず真面目くん風に七三に分けた。うわー似合わなすぎて引くし。
真面目な服なんか持ってないから暑いのに制服を着ることにした。
髪でピアスホールが開けられた耳も隠す。
これでメガネでもかければ立派な真面目くん2号が爆誕だ。
そして俺は今、真面目くんの家の玄関で固まっている
「よお! 桐崎くんどうしたの~? そんな真面目な格好して、一瞬誰か分かんなかったよ~」
「お前こそどうした? なんでそんな格好してんだ?」
真面目くんは派手なピンクのアロハシャツに黄色のジャージを穿いており、紫色に染めた髪をイソギンチャクのように立てている。
それはチャラ男か? 何があった?
そして真面目くん2号を爆誕させた俺の苦労は?
「桐崎くんのこと真似してみた」
まさかのチャラ男ファッションは俺の真似? いや俺そんな服着たことねえし。
俺は慌てて真面目くんを家の中に押し込むと、風呂の場所を聞いてその紫の頭を洗った
「お前何してんだよ、そんなのお前らしくねーだろ親が心配するぞ」
「ちょっと反抗期?」
幸い紫の髪はカラースプレーでシャンプーで落とすことができた。
「そんなことすんなよ。似合わねーだろ?」
「そっか、残念。少しでも桐崎くんに近づきたかったんだけど」
「なんでだよ。そんなことする意味が分かんねえ」
「あ、でも僕ボクシング始めたんだ」
「は? なんの報告だ?」
「強くなりたいから」
「なるほど?」
強くなりたい気持ちは分かる。真面目くんでも強い男に憧れたりするんだな。
ちょっと親近感が湧いた。
「僕このままお風呂入るね」
「は? ああ、分かった。じゃあ俺は帰るわ」
謎の風呂に入る宣言。俺にそんな宣言をする必要はない。どうぞ勝手に入ってください。
「え! なんで?」
「いや、なんでってお前が忘れてった教科書届けに来ただけだし」
「そうなんだ。強引にお風呂に連れてこられたし、セックスしに来たのかと思った」
「なっ、ちょっ、お前何言ってんだよ」
格好だけおかしくなったのかと思ったが、どうやら真面目くんは中身までおかしくなったらしい。その口からセックスなどという単語が出るなど、もう真面目くんと思うのはよそうか。
「する?」
「しねぇよ」
「そっか。じゃあお風呂入るのやめる」
「そ、そうか」
俺とやるために風呂入ろうとしたのか? え? 俺らってそういう関係じゃないよな? したけど、あれはやむを得ずというか、え? 違うのか? 俺がおかしいのか?
俺らの関係って……
聞きたいような、それを聞くのが怖いような、こいつ何を考えているんだ?
そんな思いでじーっと見ていると目が合った、そしてしばらく見つめ合っていたと思う。
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