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8(桐崎視点)
しおりを挟む「桐崎くん、キスしていい?」
「は? ……んん……」
俺はいきなりこの真面目くん? 元真面目くん? に唇を奪われた。
突然のことに思考が停止する。何が起きてる?
「ねえ、したい」
「は?」
真面目くんに押し倒されて、腹の上には真面目くんが乗っているし、そのド派手なアロハのボタンを外していっている。
こいつ、ボクシングだけじゃないよな。護身術的な何かをやっているとみえる。そうじゃなきゃ、俺がこんなに簡単に組み敷かれるはずがない。
「いや、待て。マジで待て」
「嫌? 僕とするの嫌?」
「嫌とかそういう問題じゃなく、とにかく待て。ボタンを外すな」
堂島はマジで真面目くんを辞めたらしい。
残念そうにしているが、この状況、本当におかしいと思うぞ。
「桐崎くん、僕さ、桐崎くんのこと好きなんだよね」
「そうか。っては? 好き? どういう意味でだ?」
「それ聞く? セックスしたいって意味。恋愛的な好き」
「俺がαだからか? 残念だが俺は劣等だ。他のαを当たってくれ」
堂島はΩだもんな。αに惹かれるんだろう。堂島ほどの男なら俺を選ばずとも、他にいくらでもいるだろう。
「僕は桐崎くんのことが好きで、αが好きなんじゃない。僕がαなら誰とでもやると思ってんの?」
「いや、そういう意味ではないが……」
「桐崎くんが強い人が好きって言うから、僕は強くなろうって思ったのに」
「は?」
そういえば言ったような気がする。俺にとってそれは目指している男という意味なのかと思ったが、堂島はどうやら恋愛対象として受け取っていたらしい。
まさか真面目くんが俺に、恋愛対象の好みを聞いてくるなどと思う訳ない。
ボクシングを始めたって言ったのもそういう意味だったのか。
「格好いいし優しい。桐崎くんは僕の憧れなんだよ。好き。僕は桐崎くんだけが好きなんだよ」
「そ、そうか」
「僕みたいなつまんない優等生、桐崎くんは嫌いだよね。分かってる」
いや、どこが優等生なんだ? そんなド派手な格好して俺にキスしてきて、しかも俺を押し倒して腹に乗ったままそんなことを言われても、全然説得力がない。
ふはっ、思わず堪えきれず笑いが漏れてしまった。
「優等生がそんな格好で、俺みたいな奴の上に乗って迫ってこないだろ」
「えっと……そう、かな」
こんな大胆なことをしておいて、今になって堂島は照れ始めた。
「ごめん。降りる」
堂島が俺から目を逸らして立ちあがろうとするのを、俺は思わず腕を掴んで引き寄せていた。
「降りるな」
「え?」
俺の胸の上に倒れてきた堂島を、俺は抱きしめた。
あの瞬間、この手を放したら、こいつが二度と手に入らないんじゃないかと思った。
俺、もしかしてこいつのこと好きなのか?
髪からは、さっき使ったこいつの家のシャンプーの香りがする。まだしっとり濡れていて、冷たくて気持ちいい。
真面目くんからの大変身と、この大胆に迫ってくる感じがツボというか、俺の心をぐわっと掴んだ。
恋に落ちるのは、きっかけさえあれば一瞬なのかもしれない。
「強い奴ってのは、俺がなりたい理想の男であって、好きな子じゃない。しょうがねえな、お前の彼氏になってやるよ」
「本当ですか?」
「ああ」
「じゃあしますよね? すぐに風呂にーー」
「待て」
すぐにやろうとするのも面白すぎるが、俺はやりたいから付き合うわけじゃないと、風呂に行こうとする堂島を止めた。
「お前さ、頭の中それしかねえの? 俺は抱くだけじゃなくて、一緒に勉強すんのも楽しかったし、その……デートとか、したいんだけど」
なんか恥ずかしかった。デートしたいなんて、俺の口からそんな言葉が出てきたのが自分でも意外で、全身が熱くなっていく。これはきっと夏のせいだ。
「うん。僕もデートしたい。ふふ、桐崎くんドキドキしてますね」
「なっ、そんなこと言うならもう降りろ」
「やだ」
「降りろ」
「やだ~」
こいつは思った以上に変な奴だ。
でも、そんなのを好きになったのは俺だ。仕方ない。
(終)
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