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6.侵入者2
「イブ、ハサミは難しい。だが、俺でもできるように師匠は教えてくれる。師匠はすごい腕を持っているだけでなく、とても優しい。優しくて可愛い」
ん?
優しいのは分かったが、可愛いってのはなんだ? いつものようにキールの部屋の外で聞き耳を立てていた僕は、新たな単語の出現に少し動揺した。
言葉足らずなだけで、可愛いぬいぐるみを作るって意味かもしれない。きっとそうだ。キールはいつも言葉足らずだからそうに違いない。
「イブ、今日も師匠が可愛かった。小さな手が可愛いし、柔らかくて温かくて、動悸がする」
最近キールはイブに僕のことを可愛いと報告する。僕は男だし、可愛いより格好いいと言われたい。
だがキールに比べると……悔しいが格好いいには届かない。そこはどうやったって変えることはできないだろう。
それよりも僕からしたらキールの方が可愛い。毎日、悩みや報告をぬいぐるみにするなんて可愛いだろ。
見た目は美しいがおっかない。だけど彼を知れば知るほど、愛くるしく思えてくるのも事実だ。
だから僕はキールがぬいぐるみに話しかけているのをこっそり聞くことをやめられない。
「イブ、俺は…………これはイブにも言えない。俺は……よし、行動あるのみだ。どうか見守っていてくれ」
キールは何かを決意したようだ。ハサミの取り扱いにも慣れて、そろそろ縫製を始めたいということだろうか?
それは僕も歓迎だ。弟子がやる気を見せているなら、師匠として僕はしっかり教えてあげなければならない。今度は針が机に突き刺さるなんてことないよな?
キールの決意をこっそり聞いた日は、興奮して少しだけ寝つきが悪かった。
師匠として弟子を育てる。ぬいぐるみを作るのはもちろん好きだが、師匠という立場も悪くない。
ん?
真夜中にうとうとし始めた僕は、部屋に何かの気配を感じて起きた。
真っ暗な部屋だが、窓からは少し月明かりが漏れている。今日の月は明るい。
不意に重なった唇。は?
「んー、んー、んー!!」
もしかして襲われてる?
僕に覆い被さってきた大きな体は、全力で押し返してもびくともしない。男の荒い呼吸音と自分の心臓の音がうるさい。
いつの間に侵入されたのか。
キールのことが心配になった。不機嫌そうな表情をしていてもかなり見た目はいい。もしかして僕はあいつと間違って襲われているのか?
「やめろっ!」
「なぜ?」
「は? とにかくやめろ!」
なぜってなんなんだ? 夜中に知らない男に襲われて喜ぶ奴なんかいないだろ。
僕にとってはなぜと問われることの方が疑問だ。
「師匠、好き」
暴れても全く抜け出せそうになかったが、師匠という言葉を聞いて一つの可能性に辿り着いた。
もしや……
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