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34.重なる影 ※
しおりを挟む「ジョシュア、いいんだな?」
「はい。洗浄剤も用意しました」
「ジョシュアがか?」
「はい。薬師のところに行ってきました」
「そうか。俺が入れてやるから膝を抱えて力を抜いていろ」
「え? 自分でできます」
「いいから」
やはり恥ずかしいな。こんなところ誰にも見られたことがない。ギュッと目を瞑って膝を抱える。
ふぅーっと息を吐いて力を抜いた。
「ひゃっ……」
ヒューゴ様が私の中に洗浄剤を入れると、中がそっと掻き回されるような何とも言えない感覚が訪れて、それはだんだんと引いていった。
初めての感覚だった。
「ジョシュア、可愛いな」
ヒューゴ様が優しい顔をして、唇を重ねる。舌をヌルヌルするキスをたくさんして、力が抜けた頃にヒューゴ様の指が私の胸をフニフニと刺激する。
「あっ……ひゅ、ご、さま……」
「気持ちいいか?」
「はい」
ヒューゴ様はここにいるのに触れているのに、もっと近づきたくて、私はヒューゴ様の腕を掴んだ。気持ちよくて甘えたような声が止まらなくなる。
いつもと違ったのは、その後ヒューゴ様は私に膝を抱えさせて、まさかの私のお尻に舌を這わせた。
「や……ダメです……そんなところ……」
「俺に任せておけ」
「ひっ……」
指? 何かが私の中に侵入してきた。変な感じだ。痛くはないが気持ちよくもない。違和感?
指はグネグネと動いていて、ペシェに話を聞いていなかったら、何をしているのかと不安になったかもしれない。話を聞いておいてよかった。
グネグネと解しながら奥に進んでくる。
そろそろだろうか? ペシェは気持ちいいところがあるんだと言っていた。震えるくらい気持ちよくて頭が真っ白になるとか。
本当にそんなことがあるのか分からないが、いつそれが訪れるのかと少しドキドキしながら、その時を待つ。
「ああ……まっ……ひゅ……あっ……」
ペシェの言っていたことは本当だった。視界が真っ白になって、それはすぐに戻ってきたけど、もう何も考えられなくて、必死にヒューゴ様の腕を掴んだ。気持ちいいけど、今までの気持ちよさのように、ふわふわと全身に広がっていく心地よさとは違う、体を貫くような鋭い快感は、私をどこか遠くへ攫っていってしまうのではないかとさえ思えた。ガクガクと震えて声も止まらない。
息が乱れて、苦しくなってくると、ようやくヒューゴ様の指が出ていった。
「ジョシュア、可愛い。ゆっくりするから、苦しかったら言うんだぞ」
「はい」
ヒューゴ様のものがヌルヌルとあてがわれて、私の中にゆっくりと入ってくる。指とは全然違う質量。
「んはっ……」
グイグイと中を押し広げるように進んでくるんだが、本当にゆっくり、私のことを気遣いながらだということが分かる。ヒューゴ様は本当に優しい。
ヒューゴ様のそういうところ、好きだな。
昼間に騎士たちの恋愛の話を聞いたせいか、なんだか私も恋をしているような気分になってきた。
胸がドキドキして、少し苦しくて、そして温かい。私に触れる大きな手が、その優しく見下ろす凛々しい顔が愛しい。
私はヒューゴ様のもので従者だから、ヒューゴ様に恋なんてしてはいけないんだけど、これはごっこだ。きっと愛する人との行為なら、とても幸せなんだろうなんて思いながら、ごっこ遊びを楽しんでいるだけだ。そう自分に言い聞かせた。
ヒューゴ様の質量に、少しの苦しさはあるが、まだ少し余裕があった。
吸い込まれそうな黒曜石の瞳を見つめると、ギュッと心を掴まれる。
「キス、してください」
私はヒューゴ様に手を伸ばしてキスを強請った。
今だけは、私の甘い恋人ごっこに付き合ってください。
ヒューゴ様は私が伸ばした手をギュッと握って、何度もキスを繰り返しながら私の奥に進んでくる。
「あっ……はっ……」
少し苦しいけど、今の私は恋人ごっこ中だから、この苦しさも愛おしい感じがして幸せだ。
「ジョシュア、大丈夫か?」
「はい」
奥まできたのか、ヒューゴ様は動きを止めてじっとしている。何をしているんだろう?
「ジョシュア……」
「ヒューゴ様、どうしたんですか?」
「俺は感動している。ずっとこのままでいたいくらいだ」
「はい」
ペシェの話では、女性との子作りと同じように抽送を繰り返すのだと聞いていたが、ヒューゴ様は動かない。
人それぞれのやり方があるのかもしれないが、私はこの状態で待機していていいんだろうか?
中にいるヒューゴ様のものが熱くて、本当に私の中に彼がいるのだと実感できる。自分のものではない熱が体の奥から私を焦がしていく。
私はヒューゴ様の黒曜石のような瞳をじっと眺める。その綺麗な目は、どこまでも深く続く夜空みたいだと思った。
「抱きしめていいか?」
「はい」
ヒューゴ様は私の背中に手を回すと、私を抱き起こして抱きしめてくれた。
「うあっ……」
さっきより奥にヒューゴ様がグイッと入ってきて吐息と共に声が漏れる。
ヒューゴ様の背中に手を回すと、ヒューゴ様の匂いがして、その匂いを吸い込んだ。
お腹の奥から焼けるように熱くて、苦しい感じがするが、この匂いを嗅いでいると落ち着く。私はヒューゴ様の腕の中にいるのに、ヒューゴ様は私の中にいて、これが体を重ねるということなんだと感動した。抱きしめられているだけで、頭の中が甘い蜂蜜みたいにトロリと溶けていく。
「少し動くぞ」
「はい」
抱きしめたまま私を寝かすと、手をギュッと握ってくれた。絡めた指が何だか淫らでドキドキする。
「あっ……うあっ……ひゅ、ご、さま……」
涙が滲んで、視界が霞む。
動きはゆっくりなのに、その動き全てが気持ちいい。
お腹の奥だけだった熱がどんどん全身に広がって、体がビクビクと跳ねて、声も止まらなくて、奥にトンって当たる度にゾクっとする。
「気持ちいいか? こっちも一緒にしてやるからな」
そんなことを言いながら、ヒューゴ様は私の中心で揺れているものをそっと握って扱き始めた。
「あっ、ダメ……」
頭が本当に溶けてしまったみたい。
快感以外の感覚がなくなってしまったみたいに訳が分からなくなって、快感の大きな波に飲み込まれる。
気がつくと私はヒューゴ様に抱きしめられて寝ていた。
訳が分からなくなったのは勿体なかった。
ヒューゴ様の胸に擦り寄って、甘えてみる。まだ私の頭の中は恋人ごっこの続きをしたいみたいだ。愛しい人の腕の中で眠る幸せを全身で感じている。
眠りたくないな。きっと朝になれば恋人ごっこの感情は終わってしまうだろう。いつもと同じ日常に戻るだけなんだが、それが惜しいと、寂しいと思ってしまった。
このままずっと起きていて、ヒューゴ様を愛しいと思いながら腕に包まれていたい。
それくらい恋という感情は甘美なものだった。
しかし残念ながらこの安心する匂いと、心地よい温度の中では眠気の方が勝ってしまいそうだ。夢の扉を開けて、後ろ髪引かれる思いでゆっくりと夢の中に浸かっていった。
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