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41.ランディーの失踪
しおりを挟むファルマの突然の訪問から5日後のこと。
「何?ランディーが帰ってない?どういうことだ?もう外は真っ暗だぞ。」
「昼過ぎに屋敷を出たのを門番が確認していますが、それ以降の行動は分かりません。」
「とりあえず使用人や私兵たちに街に聞き込みに行かせよう。街でも人気の高いランディーのことだ。誰かしら見ているだろう。」
「そうですね。」
「そう言えば父上、ランディーの帝国の友人たちが会いにくるとか言っていませんでしたか?」
「そうだな。到着は明後日ごろとか。ランディーはみんなに紹介できるのが楽しみだと嬉しそうに話してくれた。」
「そんな時に自ら行方を晦ますなど考えられません。どこかの話好きな領民に捕まっているだけならいいんですが。」
そんな父や兄の思いも虚しく、ランディーの行方は分からなかった。
領民に聞いて回るも、その日にランディーと話をした者はおらず、見かけた者もいなかった。
「これはもう連れ去られたと考えて、捜索活動を始めましょう。」
「いったい誰が・・・リオか?」
「ファルマ王子がランディーのことを気に入ったらしく、リオを許せないとかで辺境の小競り合いが続く戦地に向かわされたと聞いているのでリオではないかと。」
「そんなことになっていたのか。なぜ知っている?」
「寝る前に、ランディーがファルマ王子から手紙が来たと教えてくれました。」
「そうか。あの事件以降お前たちはまた一緒に寝ていたんだったな。」
「えぇ。なのでリオは除外されます。」
「だとすると、ファルマ王子か?連れ去ったのか、連れ出したのか。何の知らせもなくか?」
「王族がそのようなことをするでしょうか?発覚したら大問題ですよ。王族ならそのようなことはせずとも、堂々と寄越せと圧をかければいいだけなのでは?」
「確かにな。」
「ランディーを諦めていない貴族でしょうか?」
「確かにまだ釣書はしつこいほどに届いているしな。」
「それ以外にも、ファルマ王子が目をつけたと知れば、奪ってやろうと思う者も出てくるのでは?」
「そうなるともう全てが怪しく思える。」
「友人たちにはどう説明しましょうか?」
「彼らにはそのまま伝えればいい。それまでに見つかるといいのだが・・・。」
こうしてランディーが見つからないまま、帝国の友人を名乗る者が到着した。
「初めまして。ランディーとは学園で仲良くさせていただいておりました。ラウルと申します。」
「私はミルトと申します。」
「ラウル殿、ランディーが帝国で過ごす間、屋敷に滞在させていただいたと聞いています。ミルト殿もランディーのことを守ってくれていたとか、感謝いたします。」
「ランディーは大切な友人ですから。」
「そうですよ。ところでランディーは?まだ支度中ですか?」
「すまない。ランディーはいないんだ。」
「お出掛け中でしたか。それはタイミング悪く到着してしまいましたね。」
「いや、そうではない。2日前から行方が分からないんだ。」
「どういうとこですか?」
「我らにも分からない。君たちが訪ねてくるのを楽しみにしていたから、自らいなくなったとは考え難い。誰かに連れ去られた可能性がある。」
「嘘ですよね?
もしや、ランディーをしつこく追い回して帝国まで来たリオという男ですか?」
「あいつは辺境に飛ばされているから違うだろう。」
「では誰が?」
「それは調べているところだ。」
「そんな・・・。何でランディーが連れ去られなければならないんだ。」
「あの・・・マルクという従者はどうです?」
「マルクも行方知れずだが、あいつは見つけるのが困難なんだ。」
「私たちが帝国でリオとやり合っている隙にランディーがあいつに攫われたことはご存知ですか?」
「は?リオを追い返した後は馬車で帰ってきたのではないのか?」
「違いますよ。おそらく見つからないように森を抜けて2人でここまで帰ったのでしょう。ランディーからマルクに送ってもらったと手紙がきましたから間違いないです。」
「そうだったのか・・・」
「あの男はランディーの希望はだいたい叶えようと動きます。しかし怪しい点が多い。帝国まで連れてきたのはランディーが復学を望んだから。ここまで帰ったのは、ランディーが心配をかけたご家族に謝りたいと言ったから。その目的が終わったら、ランディーを連れ去ることも考えられます。」
「マルクか・・・、確かにあり得ない話ではない。」
「あの男がランディーに何をしたのかご存知ですよね?」
「そのことなんだが、何かの間違いということはないのか?」
「私たちはランディーの口から聞いていますので間違いではありません。あの男は、何も知らないランディーに、貴族の嗜みだから必要なことだと言いくるめて、まだ精通もない頃から口で奉仕させています。ランディーはまだあの行為は貴族の嗜みだと思っているのかもしれません。行為も一度や二度ではありませんよ。」
「そんな・・・」
父はその場に崩れた。さすがに子供の頃からずっとなどとは思っていなかったんだろう。
「とにかく我らは一度帝国に戻ります。卒業の時に、帝国に戻ってみんなで仕事をしようという話をしているので、あの男がランディーを帝国まで連れてくるかもしれません。」
「分かった。こちらでも引き続き、マルクの線と他の貴族の線で調べを進めてみる。何か分かったら知らせてくれるとありがたい。」
「分かりました。」
こうしてラウルとミルトはすぐに屋敷を出て帝国を目指した。
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