5 / 20
おじさんデートをする
しおりを挟む「ヤバイ。シモンの中、気持ちよすぎた~
やっぱり俺たち相性抜群だね。結婚しよ? あ、その前に清浄かけとくね。お腹痛くなるといけないから。それと腰痛い? 治癒もかけておくね」
「ありがとう」
「シモン、気持ちよかった?」
「……気持ち良かった、です。はぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~」
「え? え? 何その長いため息。何か不満? 俺のテク不足とか? それ困る~」
「こんなの知りたくなかった。こんなの知ったら抜け出せなくなりそうです……」
「抜け出さないでよ~、逃げないよね? ね? ね? 逃げないで?
ホント、何にも制限しないし、仕事も好きなようにしていいし。だから結婚しよ?」
「なぜそんなに結婚に拘るんです?」
「好きだから。俺以外の誰のものにもなってほしくないし」
「少し考えさせてもらえませんか?」
「……分かった」
眉尻を下げて泣きそうな顔をされると心が痛むが、結婚なんてそんなすぐに決められないだろう。
「私はそろそろ家に帰ります」
「え? なんで? ここにいればいいじゃん」
「1人で考えたいんです」
「そっか……じゃあ、帰り送っていくし、ご飯一緒に食べようよ」
「分かりました」
食事くらいは、いいか。
彼は私の手を指を絡ませるように握ると、ニコニコしながら歩いていく。
私の子供でもおかしくない年齢の彼と結婚?
しかも彼はこの国でもかなり重要なポストについている。そんな偉い人と私が結婚?
考えを放棄したいほどに色々な情報が頭の中をぐるぐると回っている。
今までの人生の中でこれほど頭が混乱したことはあっただろうか?
「シモン、何が好き~? 何食べたい~?」
「何でもいいです。ラウロの好きなもので」
「ん~、ピザ。あとトマトとチーズのサラダと、野菜スープかな」
「いいですよ」
意外にもラウロは肉より野菜が好きなのか。
若いから肉をガツガツ食べるのかと思った。
適当な店に入ると、ラウロはメニューを見て勝手に色々頼んでくれた。
「これ、美味しいよ。シモンも食べてみて」
「あ、はい」
「シモンと一緒にご飯食べれるなんて嬉しい」
「そうですか」
「シモンは? 楽しい?」
「あ、えっと、楽しいです」
人と一緒に食事をするなどいつぶりだろうか? 魔力がないせいで友達などいなかったからな。まだ両親が生きていた頃に食事をしたのが最後かもしれない。
ニコニコしながら美味しそうにピザを頬張るラウロを見ているのは楽しいし、嬉しい。
友人がいればこんな楽しい時間もあったのかもしれない。
貴重な体験をさせてくれるラウロには感謝しないとな。
店を出ると、ここでいいと言っているのにラウロは私の家まで付いてきた。
「シモン、寂しい。離れたくない。結婚しよ?」
「少し考えさせてください」
「……分かった。明日の仕事は何時から?」
「9時からです」
「そっか。何時に家出るの?」
「え? 8時半です」
「そっか。シモン、おやすみ」
「送ってくれてありがとうございました。おやすみなさい」
そう言うと、ラウロは私の首に腕を絡めてキスをしてから去っていった? いや、消えた。
これも魔術か。
私はその夜、あまり寝れなかった。
ラウロが私を騙そうとか貶めようとか考えているわけではないことは分かったが、受け止めきれない自分がいる。
嫌いではない。好きかは分からない。ただ、私の中に分不相応という言葉が大きくのしかかってきて、やはり断ろうと思った。
ラウロの悲しそうな顔を想像すると胸が痛むが、ラウロのためにはそれがいいんだと思った。
104
あなたにおすすめの小説
不憫王子に転生したら、獣人王太子の番になりました
織緒こん
BL
日本の大学生だった前世の記憶を持つクラフトクリフは異世界の王子に転生したものの、母親の身分が低く、同母の姉と共に継母である王妃に虐げられていた。そんなある日、父王が獣人族の国へ戦争を仕掛け、あっという間に負けてしまう。戦勝国の代表として乗り込んできたのは、なんと獅子獣人の王太子のリカルデロ! 彼は臣下にクラフトクリフを戦利品として側妃にしたらどうかとすすめられるが、王子があまりに痩せて見すぼらしいせいか、きっぱり「いらない」と断る。それでもクラフトクリフの処遇を決めかねた臣下たちは、彼をリカルデロの後宮に入れた。そこで、しばらく世話をされたクラフトクリフはやがて健康を取り戻し、再び、リカルデロと会う。すると、何故か、リカルデロは突然、クラフトクリフを溺愛し始めた。リカルデロの態度に心当たりのないクラフトクリフは情熱的な彼に戸惑うばかりで――!?
【完結】悪妻オメガの俺、離縁されたいんだけど旦那様が溺愛してくる
古井重箱
BL
【あらすじ】劣等感が強いオメガ、レムートは父から南域に嫁ぐよう命じられる。結婚相手はヴァイゼンなる偉丈夫。見知らぬ土地で、見知らぬ男と結婚するなんて嫌だ。悪妻になろう。そして離縁されて、修道士として生きていこう。そう決意したレムートは、悪妻になるべくワガママを口にするのだが、ヴァイゼンにかえって可愛らがれる事態に。「どうすれば悪妻になれるんだ!?」レムートの試練が始まる。【注記】海のように心が広い攻(25)×気難しい美人受(18)。ラブシーンありの回には*をつけます。オメガバースの一般的な解釈から外れたところがあったらごめんなさい。更新は気まぐれです。アルファポリスとムーンライトノベルズ、pixivに投稿。
強面龍人おじさんのツガイになりました。
いんげん
BL
ひょんな感じで、異世界の番の元にやってきた主人公。
番は、やくざの組長みたいな着物の男だった。
勘違いが爆誕しながら、まったり過ごしていたが、何やら妖しい展開に。
強面攻めが、受けに授乳します。
悪役のはずだった二人の十年間
海野璃音
BL
第三王子の誕生会に呼ばれた主人公。そこで自分が悪役モブであることに気づく。そして、目の前に居る第三王子がラスボス系な悪役である事も。
破滅はいやだと謙虚に生きる主人公とそんな主人公に執着する第三王子の十年間。
※ムーンライトノベルズにも投稿しています。
生まれ変わったら知ってるモブだった
マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。
貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。
毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。
この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。
その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。
その瞬間に思い出したんだ。
僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
幼馴染の王子に前世の記憶が戻ったらしい
325号室の住人
BL
父親代わりの叔父に、緊急事態だと呼び出された俺。
そこで、幼馴染の王子に前世の記憶が戻ったと知って…
☆全4話 完結しました
R18つけてますが、表現は軽いものとなります。
悪役令息に転生したらしいけど、何の悪役令息かわからないから好きにヤリチン生活ガンガンしよう!
ミクリ21 (新)
BL
ヤリチンの江住黒江は刺されて死んで、神を怒らせて悪役令息のクロエ・ユリアスに転生されてしまった………らしい。
らしいというのは、何の悪役令息かわからないからだ。
なので、クロエはヤリチン生活をガンガンいこうと決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる