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二章:ロディ視点
14.結婚の意思
アダムの部屋の前で控えめにノックをして名乗ると、扉が勝手に開いた。これも魔術? アダムはやっぱり凄いな。それに比べて俺は……
怒られるのを覚悟しながら、ゆっくり進むと、ソファに座るよう言われた。座っていいの?
「婚姻書類のことなんだが、ロディはすぐに提出したいか? それとも結婚式をしてから提出したいか?」
「え? 俺と結婚、してくれるのか?」
てっきり怒られるのだと思っていたから、予想もしていない話に戸惑った。昨日頷いてくれたけど、その後は警戒してカーテンのところに隠れていたし、迷惑もかけたから無理かもしれないと思っていた。
「王命だしな」
「そうだよな……」
そういえば言っていた。『キラキラした石がついた服を着た男』が「陛下の御命令だ」と。そうか、アダムも逆らえないんだな。
自分ではどうしようもないことがあるのは、俺が一番知っている。優しくて魔術が上手なアダムなら、俺じゃなくても、もっといい人がいるんじゃないかと思った。
「僕との結婚は嫌かもしれないけど、王命だから諦めてほしい。ロディが過ごしやすいように、努力はするから、何でも言ってほしい。
その……僕はロディと結婚するのは嫌じゃない」
やっぱりアダムは優しいな。断れないのは分かってるけど、それでも……俺にはアダムに相応しくない部分が多すぎる。
「俺は、魔力が少ない」
「知ってる」
「俺は、教育というものをほとんど受けていないし、森へ戻ると思って鍛えたけど、たぶん弱い」
魔術が使えないし、強い魔術で攻撃されたら、たぶん死んでしまう。こんな弱い奴、嫌だよな。
「そうか」
「俺は、帰る場所も無いし、アダムと結婚しなければ殺されるかもしれないから結婚したいとは思う」
「分かった。じゃあもう直ぐにでも婚姻の書類は提出しよう」
は? なんでそうなる? 結婚したいけど、迷惑をかけたいわけじゃない。俺は要らない存在だろ?
「でも……こんな俺を貰わないといけないなんて、アダムが可哀想だ。俺を気遣って嫌じゃないと言ってくれたのか?」
一番苦しいのは、俺が痛い思いをすることじゃない。アダムが俺のせいで嫌な思いをしたり、迷惑がかかったりすることだ。優しいアダムが苦しいのが一番嫌だ。
「僕は魔力量のことは本当に気にしていない。教育は、勉強が嫌いじゃないなら家庭教師をつけてもいい。大人になったら勉強をしてはいけないなんて決まりはないからな。それと剣も、本格的に習いたいなら兵士の剣が上手い奴に教えてもらうよう手配する」
「なんで……」
「なんでって、ロディは僕のお婿さんだからだ」
会って間もないのに、アダムは俺に知らない感情を教えてくれる。アダムのことが好きだと思った。初めて、嬉しい時にも涙が出るんだって知った。失礼だって分かってたけど、部屋を飛び出して、俺の部屋に行って泣いた。めちゃくちゃ泣いた。それでやっと落ち着くと、顔を洗ってアダムの部屋に戻った。泣いたことがバレていないといいんだが……
婚姻の書類を一緒に書いた。俺には紙に何が書いてあるのか分からなかったけど、ここにサインをすると言われて、俺が唯一書ける自分の名前を書いた。
アダムはサラサラと手紙を書いて、それと共に書類を部屋の入り口に立っているセドリックに渡していた。
「アダム、ありがとう」
どうしてもお礼が言いたかった。ありがとうなんて一言じゃ言い表せないくらい感謝しているけど、嬉しくて感動もしているけど、俺はありがとう以上の感謝を伝える言葉を知らない。
「うん。僕もありがとう。これからよろしくね」
そんなことを言われたからまた涙が出そうになって、でもまた部屋に戻るなんてできないから、アダムを抱き上げてギュッと抱きしめた。
アダムは軽い。森で倒して街まで運んだ『毛玉』よりも、怖い生き物よりも軽い。力を込めすぎたら、崩れてしまうんじゃないかって思うくらい小さくて細かった。でも温かくて、抱きしめると幸せだった。
俺は何があってもアダムを守る。これからはアダムと一緒に生きていくと決めた。
ずっと抱きしめていたら、アダムが俺の肩に顔を擦り付けてきた。可愛い。心臓がドキドキして、体が全部温かくなった。
「可愛い。アダムは格好いいのに、可愛い」
俺の憂いを無くしてくれて、魔術も上手い。格好いいのに、こんなに小さくてこんなに可愛い。アダムを好きだという気持ちがどんどん体を熱くしていく。
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