【完結】破壊神のお婿さんはイケメンらしい

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二章:ロディ視点

15.紹介

  


 アダムはみんなに俺のことを紹介してくれると言った。だから俺はアダムを抱えたまま移動した。
 俺は今、人生で一番幸せかもしれない。『キラキラした石がついた服を着た男』に魔術をバンバン当てられて床をのたうち回っていた頃の俺に、言ってやりたい。今を耐えれば、幸せが待っているから頑張れと。

 黄色の花の形の石を首からかけた人が言った「必ず出られるから、希望を持って」という言葉を思い出した。今ならその意味が分かる。
 あの人は神様だったのかもしれない。だからこの未来を知っていて、俺に伝えてくれたのかもしれないと思った。

 アダムにみんなの前では下ろしてほしいと言われて、残念に思いながら下ろしたら、屋敷で働いている人たちの前で彼は言った。
「この人は、僕のお婿さんでローデリックだ。大切な人だから、大切に扱ってほしい」

 ーー大切な人。

 なんでそんなことばかり言うんだ。そんなこと初めて言われた。その辺の石ころよりも雑に扱われていたのに、なんでそんなに優しい言葉をかけてくれるんだ?
 俺はもう一度アダムを抱き上げて、壊れないようそっと力を込めた。
「アダム、好きだ」
 閨のことを教えてくれた眉毛のおじいちゃん先生が言っていた。好きになったら分かるって。分かったよ。これが好きって気持ちだ。好きだ、好きだ、好きだ、好きだ、好きだ。
 柔らかいパンや、甘辛いのがかかった肉が好きなのとは違う。同じ「好き」なのに、何かが違うんだ。これが愛なんだろうか? 
 ずっと触れていたいし、大切にしたいし、俺だけのものでいてほしいと思った。

「アダムの夫のローデリックです。よろしくお願いします」
 アダムを抱きしめたまま、みんなに挨拶をした。誰にも渡したくない。俺のアダムだから誰も取るな。
 そう思ったのに、屋敷で働く人たちは、笑顔で拍手をしてくれた。なぜ? いいのか? 俺がアダムの夫だと認めてくれるのか?

 次に兵がいるところに連れて行ってくれた。
 抱き抱えて移動しようとしたら、アダムがこのまま行くのかと聞いてきた。ずっと抱きしめていたいと本心を言ったら、嫌じゃないと言ってくれた。小さくて可愛いアダムはたくさん歩いたら疲れてしまうのかもしれない。
 このままずっとアダムを抱きしめていたい。

 俺は知らなかったんだが、辺境ってのは国の一番端で、隣の国はいつも戦を仕掛けてくるらしい。だからアダムが兵たちと共に戦争を止めているのだとか。なぜアダムがそんな危険なことをしなければならないんだ? 全く分からない。
 こんなに小さく可愛いアダムが戦うなんて、信じられなかった。

 途中で『モジャ』がたくさん生えている場所を見つけた。今はアダムを抱えているから摘みに行けないが、また今度摘みに行こうと思う。そうだ、『モジャ』も好きだ。でもアダムの方がもっと好きだ。

 兵が戦いの練習をする場所はたくさんあって、その中で一番大きなところにみんなを集めたのだとか。
 兵たちの前に出るのにアダムは下りたいと言った。「威厳が」と言っていた。兵たちはアダムと違って体が大きいし筋肉の塊のような体型だから、子どものように抱えられていたら威厳がないのかもしれない。
 だから仕方なく下ろした。でも、何かあった時には俺がアダムを連れて逃げようと思う。そのためにアダムと手を繋いだ。相変わらず小さくて柔らかくて、戦いを知らないような可愛い手だ。

 戦いの練習をするところは、ざわざわと騒がしく、朝に囲まれた兵たちもいるんだろうと思ったら緊張した。こんなに大勢に怒鳴られたら、平静を装うことはできないと思う。少し怖い。
 建物の中に入ったら、見たことないくらいたくさんの人がいて、騒がしかったのが一瞬で静かになった。まさか俺のせいじゃないよな?
 緊張していると、アダムが手をギュッと握ってくれた。
 やっぱりアダムは優しい。なぜ俺が緊張したことに気づいたんだろう? それともアダムも少し怖かったんだろうか?

 俺の紹介が終わると、屋敷で働く人とは違って拍手はなかった。やはり俺では力不足だと思われているんだろうか?
 みんなに認めてもらうために、俺もできる限り頑張ろうと思う。食事だって、苦手だと言って諦めずちゃんと練習しよう。
 アダムを抱き上げて部屋に戻ってソファに座ると、アダムがまた魔術でお茶を入れてくれた。アダムが淹れてくれるお茶は特別美味しい。きっとアダムの隣で飲むからだ。
 好きだな。可愛いなと思いながら、その日はずっとアダムの横顔を眺めて過ごした。

 勉強ってのが好きかは分からない。料理を食べるのは難しくて苦手だと思ったけど、アダムが用意してくれた家庭教師という勉強を教えてくれる先生は、魔力が少ない俺にも丁寧に文字や数字を教えてくれる。怒鳴ることも叩くこともなかった。

 文字は扱えるようになりたい。アダムの仕事を見ていると、紙にたくさん文字が書いてあるのを読んで、何か書いている。
 文字を読んだり書いたりできるようになったら、アダムの仕事を手伝うこともできるかもしれない。だから俺は文字を覚えることにした。
 紙を束ねた本ってやつを読むと、誰かに教えてもらわなくても、色々なことを知ることができる。これは凄いことだ。
 マナーと、ダンスと、食事も教えてもらった。ここに来る前に教えてくれた人よりも分かりやすく、失敗しても手を上げられることがないから、ゆっくり落ち着いて勉強することができる。



 
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