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二章:ロディ視点
17.謝罪と討伐
最近はやっと料理をまともに食べられるようになった。最初の頃はテーブルの上だけでなく、床にまで溢していたし、きっと掃除が大変だっただろう。申し訳ない。転がっていった豆は誰かが見つけてくれたんだろうか?
少し怖かったけど、俺は屋敷で働く人たちのところに謝りに行くことにした。
「ロディ、何しに行くんすか?」
「屋敷で働いている人に謝る」
「なんかしたんすか?」
今日の付き添いはカミーユとトミーなんだが、俺が謝りに行くというと、意味が分からないと言った。
カミーユは色々とよく話してくれるけど、トミーはあまり話さない。ムッとしているから俺のことが嫌いなのかと思っていたが、誰に対してもそうなのだと教えてくれた。トミーのような男のことを『寡黙』と言うらしい。トミーはとても強く兵たちに人気がある。
こんな俺のことを受け入れてくれた屋敷で働く人たちには感謝している。だからこそ、迷惑をかけたのだから謝らなければならないと思ったんだ。
いつも食事をテーブルに置いてくれる、恰幅のいいおばあちゃんを見つけた。
「あの」
「ローデリック様、どうかなさいましたか?」
「俺は、料理を食べるのが下手で、最初の頃はたくさんこぼしてしまったから、掃除が大変だったろ? 申し訳なかった」
「いいえ、気にされることはありませんよ」
「うん。でも、迷惑をかけたから謝りたかった」
「そうですか。最近はカトラリーの使い方も上達されてよかったです」
「これからも迷惑をかけることがあるかもしれないが、よろしく頼みます」
「あらあら、ありがとう」
優しい笑みを浮かべたおばあちゃんは、全く怒ることなく、なぜかお礼まで言ってくれた。怒られることも覚悟していたから、ちょっと緊張していたが、優しい人でよかった。
「ロディってさ、いい奴だよな」
カミーユは頭の後ろで手を組みながら歩いている。
「そうでもない。俺はまだ何の役にも立ってない。何もできなくて恥ずかしい」
「そんなことはない。俺もロディはいい奴だと思う」
いつもほとんど話さないトミーが低い声でボソリと言ってくれた。
いい奴なんて言ってくれたけど、二人だっていい奴だ。剣も教えてくれるし、色んな話も聞かせてくれる。戦争のことや、領地のことも。俺もいつか彼らの役に立てたらいいな。
一度、兵たちの森での討伐訓練に参加させてもらったことがある。
怖い生き物は、『魔物』というらしい。色んな種類がいて、それぞれ名前があるんだと言われた。でも、俺の名前がローデリックという名前のように、一体一体に名前がついているわけじゃなく、俺とアダムと兵たちが人間という種族という感じで、種族ごとに名前がついているんだと教えてくれた。
覚えることがたくさんだ。
「俺も倒せます。『毛玉』をナイフで倒していいですか?」
兵を束ねる『隊長』と呼ばれる偉い人に言ってみたら、「『毛玉』ってなんだ?」と周りがざわついたが、許可は出た。護衛をつけると言われたが、いつも一人で倒していたから大丈夫だと断った。
ナイフを片手に森を駆け回ったけど、『毛玉』は見つからなかった。仕方ないから、爪がナイフみたいな危ないやつを狩って、背負って戻ったら心配された。
「ロディ、傷だらけじゃないか」
「大丈夫か?」
確かに俺は、服も腕も足も、色んなところを爪で切られてしまった。でもこんなのは普通のことだと思っていたから、心配されて戸惑った。
『キラキラした石がついた服を着た男』やその周りの人は、俺が魔術を当てられて怪我をしても血を流しても笑っていた。心配されたのなんて初めてかもしれない。そして魔術で怪我を治してくれたんだ。
魔術って便利だな。俺にはコップ一杯の水を出すことしかできないけど、羨ましいと思った。
「ロディ、これが『毛玉』と呼んでいたやつか?」
「これは違う。『毛玉』は探したけど見つからなかったんだ」
「なるほど。じゃあ『毛玉』はまた今度だな」
「次回はちゃんと見つける」
兵のみんなは『毛玉』を知らないらしい。俺が勝手に『毛玉』と呼んでいるだけだから、別の名前があるのかもしれない。
魔術で体の傷は治ったけど、破れた服は直らなかった。せっかくアダムが用意してくれた服が破れてしまって失敗したと思った。
その日は帰ってすぐにアダムに謝りに行って、怒られるのかと思ったら心配された。
「アダムごめん。服を怖い奴に引き裂かれてしまった」
「は? 誰にやられた?」
「爪がナイフみたいな、角が生えた黒い怖い生き物だ」
「魔物を狩りに行っていたのか。服なんか破れてもいくらでも買えばいいが、ロディは一人しかいないんだから気をつけてくれ。大丈夫か? 傷は?」
「魔術で治してもらった」
アダムをギュッと抱きしめると、少し震えていた。
「どうした?」
「ロディ、いなくなるなよ」
「うん、俺はいなくなったりしない」
そう答えたら、アダムはいつもより腕に力を込めてしがみついてくれた。「早くいなくなれ」とは何度も言われたが、「いなくなるな」なんて言ってくれるのはアダムだけだ。俺の一番大切な人。
もしかして昔の傷も治ったんだろうかと思って確認してみたんだが、治ったのはさっき爪で切られたところだけだった。古い傷は魔術でも治らないらしい。傷だらけの俺の体を見たら、アダムは悲しむんだろうか?
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