【完結】破壊神のお婿さんはイケメンらしい

cyan

文字の大きさ
54 / 75
七章:帝都 ロディ視点

54.帝国とアダムの母

 

 >>帝国にて

「悪夢様は帰ったか?」
「えぇ、スラムで事件の犯人を見つけたと言って拘束して帰りました」

「我らを利用したフェイル・クライバーという男を調べよ。六年前に何が起きたかもな」
「畏まりました」

「それで悪夢様の夫が見目麗しいというのは本当だったのか?」
「えぇ、それはもう。
 皇帝、間違っても手を出そうなどと考えないでくださいね。下手したら帝都が更地になります」
「分かっておる。だが一目見てみたかったな」

 こうしてロディが見目麗しいという噂は国境を超えた。
 アダムの帝国での二つ名は『破壊神』ではなく『悪夢様』のようだ。


 *


 家に帰ると、アダムの両親から手紙が届いていた。
 アダムの部屋でソファーに横並びになって一緒に読む。今はアダムの母上という人しかロイター領にはいないけど、それでもいいならおいでと書いてあった。
 父上という人は王都にいて、すぐには帰ってこられないそうだ。夫婦が離れて過ごすのは寂しくないんだろうか?
 俺はアダムと何日も離れて過ごすなんて考えられないから、不安になってアダムの手をギュッと握った。

「ロディ、どうした?」
「俺は大好きなアダムと離れて過ごしたくない」
「うん? そんな予定はないから安心して」
「そうか」
 よかった。俺はずっとアダムと一緒にいたい。ただ一緒にいるだけじゃなく抱きしめたくなって、アダムを引き寄せてギュッと抱きしめた。アダムは細くて小さい。俺の腕の中にスッポリとちょうどいいサイズで、俺専用に神様が作ってくれたみたいだ。

 アダムが網で吊るして連れてきた人は、地下の柵がついた部屋に入れているそうだ。
 この家にもそんな部屋があるなんて知らなかった。あの部屋に入ると硬いパンを投げつけたりするんだろうか?
 あれは痛いからやめてあげてほしい。

「ロディ、今日は移動で疲れたろ、明日の夕方までにはカミーユとフライツも戻ってくるだろうから、明日と明後日は休みにして、それから僕の両親の家に行こう」
「分かった。母上という人がいるんだよな?」

 兵舎裏の『モジャ』がたくさん生えているところに向かった。今ではあまり兵たちは『モジャ』を摘まない。アダムが香水を作ってくれたから、それを使う人が増えたんだ。

 でも俺はこのふわふわした感触が好きだ。モジャモジャして可愛い。
 少し多めに摘んで、途中で窓を拭いていたメイドの女の人に『モジャ』を部屋に飾りたいと言ったら、花瓶というのを貸してくれた。

 アダムの母上に会いに行く日、動きにくい服を着て、髪を整えてもらった。王城に行く時と同じ格好だ。胸ポケットには『モジャ』を入れている。
 緊張しながら馬車に乗り、アダムの母上がいる家に向かう。

「は?」
 到着して馬車を降りたアダムはいきなり大きな声を出した。

「アダム、どうした?」
 アダムは固まったまま一歩も動かない。
 アダムの視線の先を見ると、俺たちが住んでいる家の隣にあるのと同じ兵舎があった。ここにも兵舎があるんだな。
 訓練場は無いように見えるが、裏にあるか、少し離れた場所にあるのかもしれない。

 兵舎から一人の女の人が出てきた。スカートを穿いているからたぶん女の人だ。白い長いシャツを羽織って、紙の束を小脇に抱えている。
 こっちに歩いてくるから、きっと俺たちを迎えにきたんだろうと見ていたら、近付くにつれてその人がアダムにそっくりなことに気づいた。
 髪型は違うが髪の色は同じ水色で、目の色も同じ紫色、細くて小さいところまでそっくりだ。
 少し微笑んでいるように見える。

「アダム、あの人はアダムに似ている」
「あぁ、うん、あれは僕の母だ。俺を産んだ人」
 アダムを産んだ人。俺も誰かから産まれたんだろうか?

「アダム、久しぶりね。ローデリックさん、初めましてクロエよ」
 アダムの母が目の前まで来ると、俺にも挨拶をしてくれた。怒ってはいない気がする。
「お初にお目にかかります。ローデリックです。アダムを産んでくれてありがとう」
 怒られても、これだけは言いたかった。

「まぁ、いい子」
 俺はいきなり距離を詰められてアダムの母に抱きしめられた。
 女の人に抱きしめられたのは初めてで、どうしたらいいのか分からなかった。アダムにそっくりなのにアダムとは少し違う。
「母上、ロディを離してください」
「アダムはケチねぇ。噂には聞いていたけど、本当に綺麗な子ね」
 アダムに注意されるとやっと離れてくれた。

 そして家に入って三人で話をした。
「ロディを巻き込みたくないから、ロディは待っててくれる?」
「嫌だ。俺はいつでもアダムと一緒だ」
「いいじゃない。あなた達は夫夫ふうふなんだから」
 アダムの母が許してくれたから、俺も一緒に話を聞くことになった。
 防音の結界というのを張って、外に話が漏れないようにして、内緒の話をしたんだ。

 アダムが学校の建物を破壊してしまった事件は、アダムのせいじゃなかった。他の人が『薬』を隠すためにアダムに罪を着せた。そこには色々な人が関わっていると聞いた。
 アダムのせいじゃないのに、アダムは人に恐れられて一人になって寂しい思いをした。許せないと思った。
 アダムが帝国から網で連れてきた人はそのうちの一人だ。

 地下の柵がある部屋に閉じ込められていると聞いて、可哀想だと思ったが、全然可哀想じゃなかった。
「エリスレーベンは私が預かるわ」
「しかし……」
「アダム、あなたが苦しい時に私たちはそばにいることができなかった。後始末はあなたの親としてやらせてちょうだい。
 それと、あなた達にとっては意外な協力者もいるのよ。それはいずれね。ふふふ。
 言い訳はしない。だけど、全てが終わったら説明させてちょうだい」
 アダムの母は、アダムのように真っ直ぐ強い目をしていた。きっとアダムのように強い人なんだ。

「あなた達は日々を幸せに過ごしなさい」
 アダムの母に言われると、アダムに言われているような気分になる。声は全然違うのに不思議だ。

「分かりました。それと、関係ないですが一つ質問をしていいですか?」
「えぇ、何かしら?」
「あの外の建物は兵舎ではありませんか?」
「ふふふ、そうであってそうでないわ」
 そうであってそうではない? 俺にはよく分からなかった。

 あの兵舎は元々ロイター領都にあったらしい。外観は兵舎だけど、中はアダムの母の研究室で、アダムが学校を退学して領地に戻ってくる時にここに移動させたのだとか。
 建物を移動させることができるなんてすごい。アダムの母は、やはりアダムの母だ。アダムを産んだというのも納得だ。

 アダムは目を見開いて固まって、そして上を向いた。
「やっぱり兵舎が八棟あったのは、僕の記憶違いじゃなかった」
 そういえば、王都から帰った時にそんな話をしていた。俺も一、ニ、三……と数えたんだ。

 そして俺たちは、帝国で捕まえた人をアダムの母に引き渡す手筈を整えて、馬車に乗って帰った。


 
感想 10

あなたにおすすめの小説

呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない

波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。 異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。 強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。 彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。 しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。 「俺に触れられるのは、お前だけだ」 呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。 となります。

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

騎士は魔石に跪く

叶崎みお
BL
森の中の小さな家でひとりぼっちで暮らしていたセオドアは、ある日全身傷だらけの男を拾う。ヒューゴと名乗った男は、魔女一族の村の唯一の男であり落ちこぼれの自分に優しく寄り添ってくれるようになった。ヒューゴを大事な存在だと思う気持ちを強くしていくセオドアだが、様々な理由から恋をするのに躊躇いがあり──一方ヒューゴもセオドアに言えない事情を抱えていた。 魔力にまつわる特殊体質騎士と力を失った青年が互いに存在を支えに前を向いていくお話です。 他サイト様でも投稿しています。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。 処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。 なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、 婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。 最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・ やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように 仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。 クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・ と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」 と言いやがる!一体誰だ!? その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・ ーーーーーーーー この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に 加筆修正を加えたものです。 リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、 あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。 展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。 続編出ました 転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668 ーーーー 校正・文体の調整に生成AIを利用しています。

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年の乙女ゲー転生BLです。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★