55 / 75
七章:帝都 ロディ視点
55.俺の中に潜むもの
アダムは帰っても難しい顔をしている。きっと事件のことを考えているんだろう。俺ができることはアダムを包み込んであげることだけだ。
「アダム、おいで」
ソファに仰向けに寝ると、アダムは俺の上にうつ伏せに乗ってきた。そのまま抱きしめて、背中を撫でているとアダムがふぅ~っとゆっくり息を吐いた。
きっとこれで大丈夫だ。
アダムは苦しいことを考える時、息を止める癖がある。だから俺がちゃんと息ができるように背中を撫でるんだ。
アダムはそのまま、俺の首筋に顔を埋めて匂いを嗅いでいる。
さっき詰んだ『モジャ』は新鮮で、とてもいい匂いがすると思う。アダムが癒されるなら、『モジャ』をアダムの部屋にも生けてみようか。花瓶というのを借りなければならないけど、『モジャ』は兵舎裏にたくさんあるから、毎日摘んでも大丈夫だ。
アダムを上に乗せて撫でていると、呼吸がだんだん整って、体の力を抜いて俺に身を預けてくれる。力を抜いてくれた時の重みと柔らかさがとても心地いい。温かくて幸せな気持ちになる。
「アダムが愛しくて可愛くてどうしよう」
俺はいつでもアダムに触れたいし、たまに少しだけ意地悪したくなってしまう。
時々怖くなる。『キラキラした石がついた服を着た男』は俺が魔術を当てられて痛いと泣いていた時、たぶん嬉しくて楽しんでいた。俺はアダムが気持ちいいと泣く時、どうしようもなく愛しくて嬉しいと感じてしまう。
自分の中に嗜虐的な悪魔がいるんじゃないかと不安な気持ちになることがある。いつか、アダムを傷つけたらどうしよう。
「ロディ、キスしたい」
「うん。いいよ」
待っていると、アダムが少し迷いながら俺の唇に軽く触れるだけのキスをして、恥ずかしかったのか俺の首筋に顔を埋めて隠れてしまった。
あぁ、やっぱり可愛い。
「俺のアダムは世界一可愛い」
少しだけ。そう思いながら、前に兵舎の裏でフライツがアストロにやっていたように、アダムの上衣の裾から手を忍ばせて、直に背中を撫でてみた。
ツルツルでスベスベだ。すごく気持ちいい。
「あっ……やだ、そんなことされたら……」
「されたら?」
また意地悪したい悪魔の俺が出てきた。
「ロディ、格闘したい」
「うん。しよう」
アダムが求めてくれるなら何度でもする。たくさん幸せを感じてもらいたい。
でも俺が悪魔だったらどうしよう。
これだけは、怖くて打ち明けられそうにない。
俺はアダムを抱き上げて、ベットに向かう。アダムの少し伸びた髪が頬にかかって、すごく綺麗だ。丁寧に脱がして、せっかくアダムが買ってくれた俺の服もそっと脱いで端に避けた。
「入れるよ」
アダムの中に洗浄剤を入れると、柔らかくてプルンとした唇に吸い付く。あぁ愛しい。
「アダム、大好きだよ」
「うん。僕も好き」
やっぱりネーベル様は神様だと思う。俺があの地下の部屋から出ても、こんなに幸せな日々が待っているなんて分からないはずだ。
別の家の地下に入れられたかもしれないし、戦場に放り込まれたかもしれない。幸せな未来が待ってるって知ってたんですよね?
アダムには何度言っても足りない気がする。俺はまだ言葉をよく知らないんだ。だからアダムに思いを伝える言葉が「好き」「愛してる」しか出てこないのが歯痒い。もっともっと大切で、大好きで、宝物なんだ。
「ロディ、気持ちいい」
「うん。アダム。可愛いよ。綺麗だよ。愛してるよ」
またアダムを泣かせてしまった。宝石みたいに綺麗な目が潤んで、ポロッと涙が溢れて、ツーッと綺麗な涙が流れていく。アダムが綺麗すぎて、俺はいつもドキドキしている。アダムを泣かせて嬉しいなんて、やっぱり俺はおかしいのかもしれない。
俺は眉毛のおじいちゃん先生に教えてもらったようにアフターケアを行うんだが、その中には少し懺悔の気持ちも入っている。だから丁寧に丁寧に、絶対に壊れないように、大切に大切にするんだ。
泣かせてごめんね。でもアダムの涙も好きなんだ。どうしようもなく好きなんだ。
「アダム、大好きなんだ」
「うん。僕も大好きだよ」
アダムの大好きと、俺の大好きが同じだといいな。そう願いながら、アダムのスベスベの肌にオイルを塗って、丁寧にマッサージをする。そして柔らかい肌のアダムを俺の腕に閉じ込める。今日も幸せだ。
あなたにおすすめの小説
呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない
波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。
異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。
強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。
彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。
しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。
「俺に触れられるのは、お前だけだ」
呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。
となります。
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。
処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。
なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、
婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・
やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように
仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・
と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ーーーーーーーー
この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に
加筆修正を加えたものです。
リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、
あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。
展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。
続編出ました
転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668
ーーーー
校正・文体の調整に生成AIを利用しています。
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
騎士は魔石に跪く
叶崎みお
BL
森の中の小さな家でひとりぼっちで暮らしていたセオドアは、ある日全身傷だらけの男を拾う。ヒューゴと名乗った男は、魔女一族の村の唯一の男であり落ちこぼれの自分に優しく寄り添ってくれるようになった。ヒューゴを大事な存在だと思う気持ちを強くしていくセオドアだが、様々な理由から恋をするのに躊躇いがあり──一方ヒューゴもセオドアに言えない事情を抱えていた。
魔力にまつわる特殊体質騎士と力を失った青年が互いに存在を支えに前を向いていくお話です。
他サイト様でも投稿しています。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。