僕の過保護な旦那様

cyan

文字の大きさ
144 / 570
二章

142.みんなで森へ

しおりを挟む
 
 
「ママ、パンにのっておでかけしたい」
「うん? どこに行きたいの?」
「もり!」
 森か。僕一人では連れて行けない。これはラルフ様に要相談だ。

「森か~、私も行こうかな」
 シルと庭で話していると後ろから急に声が聞こえて、振り向いてみるとフェリーチェ様がいた。また来たんですね。
 最近ようやくラルフ様の許可が下りて花屋の仕事を再開したんだけど、フェリーチェ様は僕が仕事で家にいなくても来ているらしい。

 この前は仕事から帰ってみると、フェリーチェ様とルカくんが庭でお茶をしていた。意外な組み合わせだと思ったけど、二人は意外と話が合うようだ。

「うちに来るならいいですが、王都から出て森に行くとなると旦那様の許可をとった方がいいんじゃないですか? 僕は戦闘能力がないので一人でシルを連れて行くことはできませんし、森に行く日はラルフ様に相談します」
「相談か……正直面倒だな。あいつついてきそうだし」
 フェリーチェ様は少し困ったような様子だった。僕が勝手に王都の外へ出したと言われても困るから、是非とも旦那様に許可をとってもらいたい。

「いいんじゃないですか? みんなで一緒に森に行くのも楽しいですよ」
「そっか。みんなでってのは楽しそうだね。森でウサギか猪か鹿でも狩って焼いて食べる?」
 騎士の人ってみんなこんなワイルドな思考なんだろうか? 僕としてはサンドイッチでも持って出掛けて、お茶を飲みながらのんびりしようと思ってたんだけど、狩りをしたいなら反対はしない。

「ラルフ様の部下の皆さんは狩りをするかもしれませんが、僕はサンドイッチをシェフに作ってもらって持っていきます」
「それもいいね。そっか、野営しないなら作ったものを持って行くのもありなんだね。じゃあルカくんに美味しい焼き菓子でも頼もうかな。なんか悩んでるみたいだったし」
 ルカくんはフェリーチェ様に相談してたのか。フェリーチェ様がどう答えたのかちょっと気になる。


 当日、森に行くメンバーとして集まったのは、僕とシルとラルフ様、フェリーチェ様とリヴェラーニ副団長、ハリオとルカくん、リーブとリズ。ルーベンとタルクも、ちょうど森に行こうと思っていたとかで一緒に行くことになった。
 みんなそれぞれ馬に乗っているけど、僕だけラルフ様と相乗りだ。ハリオはパンの手綱を引いて自力で走る係だ。

「フェリーチェ、俺と相乗りするか?」
「しないし。お前と乗ったら狭いし馬が可哀想だ」
 僕がラルフ様と相乗りしているのを見て副団長は羨ましいと思ったのか、フェリーチェ様に相乗りを提案していた。残念ながら振られていたけど。
 ルカくんも馬に乗れるなんて知らなかった。ルカくんが乗ってる馬はハリオの馬だ。

 二列に並んでゆっくりと歩いていく。
 パンは大きな馬に囲まれて最初は耳がペタンとしていたけど、シルを乗せたらキリッとした。
 きっとパンはシルを乗せることが自分の使命だと思っているんだ。そういえばこの前、パンの小屋にポポファミリーの新作が増えていた。きっとシルがパンにあげたんだ。
 木を組んだだけの殺風景な小屋に色が増えて、今では少し可愛い感じになっている。

 木彫りの置物であるはずのチンアナゴが武器でない武器? になったりしていたけど、パンの小屋では置物として本来の使い方で落ち着いている。

「みんなで森に行くのもいいな」
 フェリーチェ様が今日はとてもご機嫌だ。そしてそんなフェリーチェ様をニコニコと見つめる強面の副団長がちょっと可愛い。二人はお似合いだ。

「ラルフ様、フェリーチェ様と副団長はお似合いの夫夫ですね」
「俺とマティアスの方が似合っている」
 そこ対抗心燃やすところじゃないと思うよ。
 それでもラルフ様が僕たちがお似合いだと思ってくれていることが嬉しかった。

 僕たちはのんびりと楽しく馬に乗っていたんだけど、ルーベンとタルクにとっては退屈だったみたいで、「鍛錬があるので先に行きます」と言って二人だけ先に駆けていってしまった。あの二人もブレないな。

 王都を出て森に入り、森の中を駆けて少し開けた場所で馬から降りた。
 大きな荷物を背負っていたハリオが、椅子やら敷物やら色々とセッティングしてくれて、リーブとリズはお湯を沸かしてお茶を淹れてくれた。

「野営でも訓練でも仕事でもなく森に入ったのなんて初めて」
 フェリーチェ様は両手を上に上げて伸びをすると、森の空気を大きく吸ってそう言った。

「こんな休みの過ごし方もいいな。フェリーチェ、またこよう」
 副団長も森でのんびりと過ごす休日を気に入ったようだ。森は木々が適度に陽射しを遮ってくれるから、涼しくていい。
「うん。そうだね」
「いいのか? 俺と二人きりでもいいか?」
「いいよ。ほら、そんな顔するな。私たちは夫夫だ。手を出してみろ」
 恐る恐るといった感じで出した副団長の手をフェリーチェ様は指を絡めてギュッと握った。
 見ているこっちまで幸せになる。副団長よかったね。
 そして二人に対抗するようにラルフ様も僕の手をギュッと握ってきた。

 チラッと横を見ると、ルカくんがジッとリヴェラーニ夫夫を見ていた。きっと羨ましいんだろう。
 せっかく勇気を出して告白したのに信じてもらえなかったルカくんは、もう一度勇気を出せるんだろうか?

「ハリオ、手、握ってもいいぞ」
 手を繋ぎたいとは言えなかったか。でもルカくん勇気出したんだね。
「それではお言葉に甘えて。それにしてもルカくん急にどうしました? 寒いですか? 膝掛けを出しましょうか?」
「……ハリオは本当に酷い」
「あ、ごめん。ルカくん、俺の手は硬くて不快だったか?」
 ハリオはルカくんと繋いだ手を放してしまった。なんで気付かないのかな?

「ルカくん、ちょっと話そう。ハリオはついてくんなよ」
 俯いてしまったルカくんを連れ出したのは、リヴェラーニ夫夫だった。正確にはフェリーチェ様なんだけど、副団長がフェリーチェ様の手を放さなかった。
 今回ルカくんを誘ったのもフェリーチェ様だから、責任を感じたのかもしれない。
 というか面倒見がいいのかな?

 シルはパンとリズと一緒にてんとう虫を手に乗せて遊んでいる。こっちはこっちで見ているだけでほっこりする。
 鞄からポポを取り出してその上に乗せたりしているけど、それも可愛いの一部に含めていいだろう。

 
しおりを挟む
感想 220

あなたにおすすめの小説

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

いい加減観念して結婚してください

彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話 元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。 2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。 作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。

紳士オークの保護的な溺愛

flour7g
BL
■ 世界と舞台の概要 ここはオークの国「トールキン」。 魔法、冒険者、ギルド、ダンジョン、獣人やドラゴンが存在する、いわゆる“典型的な異世界”だが、この国の特徴はオークが長命で、理知的な文明社会を築いていることにある。 トールキンのオークたちは、 灰色がかった緑や青の肌 鋭く澄んだ眼差し 鍛え上げられた筋骨隆々の体躯 を持ち、外見こそ威圧的だが、礼節と合理性を重んじる国民性をしている。 異世界から来る存在は非常に珍しい。 しかしオークは千年を生きる種族ゆえ、**長い歴史の中で「時折起こる出来事」**として、記録にも記憶にも残されてきた。 ⸻ ■ ガスパールというオーク ガスパールは、この国でも名の知れた貴族家系の三男として生まれた。 薄く灰を帯びた緑の肌、 赤い虹彩に金色の瞳孔という、どこか神話的な目。 分厚い肩と胸板、鍛え抜かれた腹筋は鎧に覆われずとも堅牢で、 銀色に輝く胸当てと腰当てには、代々受け継がれてきた宝石が嵌め込まれている。 ざらついた低音の声だが、語調は穏やかで、 貴族らしい品と、年齢を重ねた余裕がにじむ話し方をする。 ● 彼の性格 • 極めて面倒見がよく、観察力が高い • 感情を声高に表に出さないが、内側は情に厚い • 責任を引き受けることを当然のように思っている • 自分が誰かに寄りかかることだけは、少し苦手 どこか「自分は脇役でいい」と思っている節があり、それが彼の誠実さと同時に、不器用さでもあった。 ⸻ ■ 過去と喪失 ――愛したオーク ガスパールはかつて、平民出身のオーク男性と結ばれていた。 家柄も立場も違う相手だったが、 彼はその伴侶の、 不器用な優しさ 朝食を焦がしてしまうところ 眠る前に必ず手を探してくる癖 を、何よりも大切にしていた。 しかし、その伴侶はすでにこの世を去っている。 現在ガスパールが暮らしているのは、 貴族街から少し離れた、二階建ての小さな屋敷。 華美ではないが、掃除が行き届き、静かな温もりのある家だ。 彼は今も毎日のように墓参りを欠かさない。 それは悲嘆というより、対話に近い行為だった。 ⸻ ■ 現在の生活 ガスパールは現在、 街の流通を取り仕切る代表的な役職に就いている。 多忙な職務の合間にも、 洗濯、掃除、料理 帳簿の整理 屋敷の修繕 をすべて自分でこなす。 仕事、家事、墓参り。 規則正しく、静かな日々。 ――あなたが現れるまでは。

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

拗らせ問題児は癒しの君を独占したい

結衣可
BL
前世で限界社畜として心をすり減らした青年は、異世界の貧乏子爵家三男・セナとして転生する。王立貴族学院に奨学生として通う彼は、座学で首席の成績を持ちながらも、目立つことを徹底的に避けて生きていた。期待されることは、壊れる前触れだと知っているからだ。 一方、公爵家次男のアレクシスは、魔法も剣術も学年トップの才能を持ちながら、「何も期待されていない」立場に嫌気がさし、問題児として学院で浮いた存在になっていた。 補習課題のペアとして出会った二人。 セナはアレクシスを特別視せず、恐れも媚びも見せない。その静かな態度と、美しい瞳に、アレクシスは強く惹かれていく。放課後を共に過ごすうち、アレクシスはセナを守りたいと思い始める。 身分差と噂、そしてセナが隠す“癒やしの光魔法”。 期待されることを恐れるセナと、期待されないことに傷つくアレクシスは、すれ違いながらも互いを唯一の居場所として見つけていく。 これは、静かに生きたい少年と、選ばれたかった少年が出会った物語。

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

処理中です...