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二章
221.街での歓迎
迎えにきてくれた私兵と共に街に向かう。僕たちは宿や馬車の停車場を探す手間もなく、なんと街長のお屋敷に泊めてもらえることになった。
「ママ、おまつり?」
「お祭りかな? そうかもね」
これはお祭り、そうだお祭りだ、僕はそう思うことにした。
ここの街長はサンチェス侯爵の義弟。イルデフォンソ様の叔父の当たる人だそうだ。そう言われても僕たちは誰もサンチェス侯爵とは面識もなければ文をやり取りしたこともない。ましてや侯爵の奥様の弟と言われたら、もう本当に他人みたいなものだ。
「ようこそお越しくださいました。長旅お疲れ様でした。私も娘もあなた方にお会いできるのを楽しみにしていたんですよ」
ニコニコと優しい笑みを浮かべている街長は本当に歓迎してくれているようだ。
夕飯はせっかくなので街でと言われ、前後左右を私兵に囲まれての移動となった。ここまでしなくてもいいと思うんだけど……
街は日が暮れてもランプの灯りが並んでいて綺麗だ。屋台もランプが灯されているから、ランプを持って歩かなくてもいいくらい明るい。
とても賑わっていて、みんな屋台で色々な料理を買ってその辺で食べている。串焼きなんかは歩きながら食べている人もいる
「ママ、あれたべたい!」
シルが串に刺さったソーセージを指差したら、付き添ってくれていた私兵が買いに走ってくれた。それくらい自分たちでできるのに。
カラフルなピンクのスープもシルはとても喜んでいる。ラルフ様たちはやっぱりソーセージがいいのかと思ったら、豚肉のカツレツってのをおかわりしていた。
食べやすいように大きなカツレツを一口サイズに切り分けているのはルーベンだ。それをせっせとタルクの取り皿に乗せてあげている。取り分けるだけじゃなく、カットしてあげるなんて優しい。
僕はやっぱりジャガイモのピエロギが好きだ。もちもちして美味しい。作り方を聞いてメモをして帰って、チェルソに作ってもらおうかな。
「口の横にソースがついていますよ」
「リーブ様、とって」
「あなたは……わざとですね? 仕方ない子ですね」
リーブとグラートは相変わらずイチャイチャしながら食事をしている。仕方ないとか言いながら、リーブの頬が緩んでいるのを見た。しかしグラートに「俺以外は見ちゃダメ」と言って視界を遮られた。
僕はリーブを取ったりしませんから安心してください。
街長の娘であるサリー嬢が僕の服の袖をツンツンと引っ張った。
「どうかしましたか?」
イルデフォンソ様の従姉妹に当たるサリー嬢はとても大人しそうな感じで、まだ十歳を少し過ぎたくらいだろうか。挨拶した時も、小さな声でとても緊張した様子だった。それなのに僕に話しかけてきたのはなんでだろう?
「マティアス様にお聞きしたいことが……」
「僕で答えられることなら、お答えしますよ」
彼女はモジモジとしながら伏し目がちに話し始めた。席を空けて隣に座るよう促す。
「お金より愛を取ったと聞いていますが、少しは気持ちが揺れたのでしょうか?」
それって例の物語の話のことだよね?
「全く揺れていませんよ。お金があってもラルフ様やシルがいない世界に幸せなんてありませんし」
だいたいあの時に僕はランバートという男の素性どころか名前すら知らなかったんだ。揺れるわけがない。
「まあ!」と感動したように、彼女は声を上げた。周りを囲んでいた私兵や、その周囲にいた街の人たちまで「おお!」なんて感嘆の声を上げている。あなたたち盗み聞きですか?
そんなに感動するシーンじゃないよね? 普通のことじゃない?
「マティアス……愛してる」
ラルフ様まで僕に熱い視線を向けながらそんなことを言うから、ますます場が盛り上がってしまった。そこら中で木のジョッキをぶつける音が聞こえ、楽器が演奏されたり歌ったり笑ったり踊ったり、それはかなり遅い時間まで続いたようだ。
僕たちは明日も移動があるということで早めに下がらせてもらい、柔らかく清潔なベッドを借りることができた。
「ところで騎士の方々は分かるのですが、マティアス様はなぜチェーンメイルを?」
それ、聞いちゃいます?
街長に不思議そうに尋ねられて、僕は言い淀んでしまった。僕だって着たくて着ているわけじゃないんだ。
ラルフ様は騎士だと知られているし、ルーベンとグラートは騎士って感じだし、タルクも馬に乗っていたから護衛騎士だと思われたんだろう。リーブは執事服に上手いこと隠れるチェーンメイルだし、シルは騎士の真似をしたい年頃なんだと思われたのか。
そう考えると全く戦えそうにない僕がチェーンメイルなんて着ているのは違和感しかない。
ローブを着てフードも目深に被っていればよかった……
「夫に言われて……」
期待するような視線に耐えられなくなった僕はラルフ様のせいにしてみた。ごめんねラルフ様。
「おお! 夫を守るためにラルフ様はマティアス様にチェーンメイルを用意されたのですね! なんと愛が深い!」
なんか分からないけど、僕の答えは正解だったらしい。そんな感動されても複雑だけど、喜んでもらえてよかったよ。僕は疲れたから、もう寝ようと思います。
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