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二章
275.みんなの訓練
しおりを挟む「チェー! くんれん、おねがいします」
フェリーチェ様が来る度にシルは訓練をお願いしている。早朝訓練は続けながらだ。
訓練が楽しくて仕方ないみたいだ。
ラルフ様はシルの好きにさせているみたいだけど、息子が他の人に教えてもらっているのはいいんだろうか?
心配だから僕もいつもパンと共に見守っている。
最近、なぜかアマデオが積極的にリーノたちの訓練に立ち会っている。
ロッドとグラートとハリオはたまにという感じだ。ここにきて、なぜかルーベンも顔を出す頻度が増えた。もちろんタルクを連れてくる。ルーベンは人を教えるのが好きそうだけど、アマデオもそうなんだろうか?
リーノたちは休みの日にもうちにやってきて、しっかりと訓練している。フェリーチェ様はジーノとルキオが途中で逃げ出すと思っていたみたいだけど、全然そんなことなく、三人揃ってしっかりと訓練を続けている。
森に行ったり、アックアまでは行かなくても、街道の途中まで雪の中を走ったりもしているそうだ。
そして度々うちに屍となって運び込まれる。みなさんお疲れ様です。
シルも森にはついていくと言って聞かないので、ラルフ様に見ておいてもらうようお願いして連れて行ってもらうことになった。
今日のメンバーはリーノたち三人と、シルとラルフ様の他にアマデオとルーベンとタルクも一緒だ。
「あれ? 今日はシルくんいないの?」
毎日フェリーチェ様が来ると、走って訓練をお願いに行くシルが来ないから不思議に思ったらしい。
「今日はリーノたちと一緒に森に行きました」
「そうなの? 私を置いていくなんて……マティアス様も置いていかれちゃったの?」
「いえ、僕は足手纏いになるのでお留守番です」
雪深い森の中をチェーンメイルを着せられて歩くのは本当に辛いんだ。ラルフ様には「一緒に行くか?」と聞かれたけど、僕は丁重にお断りした。
寒いし僕がいたら行軍は遅れる。せっかく訓練に来ているのにそれは申し訳ない。
「マティアス様がいた方が訓練はキツイものになるかもね」
「え?」
僕が遅いせいで遅くてイライラしてしまうから、精神的にキツイってことだろうか?
そんなのもっと申し訳ない。行かなくてよかった。
「まだ出発してそんなに経ってないんだよね? 私もちょっと覗きに行ってみようかな」
ちょっと近所まで行ってみる、って感じで軽く言えるフェリーチェ様が羨ましい。
フェリーチェ様なら、本当に軽い感じで追いかけて雪深い森を楽しむんだろう。
「じゃあ行ってくるねー!」
フェリーチェ様を見送って、厩舎のパンの様子を覗いてみると、まだ拗ねていた。
「パン、次に行く時は連れて行ってもらおうね」
勝手に出かけていかなくて偉いね。
パンなら勝手に出ていってシルを追いかけることもできそうなのに、拗ねているけど厩舎で大人しくしている。
急にパンが方向を変えたから、やっと機嫌が直ったのかと思って見ていたら、厩舎の柵に括り付けてあるポポ一族を眺め始めた。何してるんだろう?
もしかして願いを叶える妖精だと知っていて、何かをお願いしているんだろうか?
パンが何かをお願いするとしたら、シルともっと遊びたいってことかな?
パンの機嫌も直ったみたいだし、フェリーチェ様も森に行っちゃったから、僕は暇になってキッチンでチェルソの仕事を見ていた。キッチンは暖かいし、使用人も仕事が終わると集まってくるから、みんながいて寂しくない。
「ただいまー!」
シルの元気な声が聞こえた。みんなが帰ってきたみたいだ。今日の訓練はどうだったのかな?
慌てて出迎えに行くと、屍になったリーノたち三人と、元気なシル、他はいつも通りだ。
今日も大変な訓練だったみたいですね。
三人はとりあえず客間へ運んでもらい、ルーベンたちも夕食はどうかと誘うと、今日もコレッティ家で家族と食べると断られた。
フェリーチェ様は食べていくそうだ。
リーノたちが起き上がれるようになった頃、副団長も合流して一緒に夕食をいただいた。
「今日は森に行ってきた。楽しかったよ」
「俺も行きたかった」
「じゃあ次の休みに一緒に行くか?」
「行く」
リヴェラーニ夫夫は今日も仲良しだ。
元気なリヴェラーニ夫夫を見送ると、リーノたちがフラフラと帰り支度を始めた。
「帰るの? 泊まっていけばいいのに」
「いえ……」
なんだか歯切れの悪い感じでリーノが俯き、ジーノとルキオも大人しくしている。
もしかして、要らんこと言う先輩が出ましたか?
「ラルフ様」
僕はラルフ様を見た。ラルフ様は気付いているんだろうか? 気付いていても、自分たちでなんとかしろって思ってるんだろうか?
「分かっている。
お前ら、そんな状態で戻って対処できるのか? 泊まっていけ」
「はい。ありがとうございます」
対処するって何? もしかして、もう既に彼らへの虐めは始まっているんだろうか?
人の足を引っ張るような奴は中に入れたくないけど、ラルフ様に訓練してほしければ、ジーノとルキオみたいにお願いしますと頭を下げればいいのに。
リーノたちは泊まっていくことになったんだけど、気になったから聞いてみることにした。
「ラルフ様、リーノたちはやっぱり虐められているんですか?」
「まだ攻撃をされるまではいっていない」
攻撃? ちょっとした嫌がらせじゃなくて攻撃までしてくるのか……
「ジーノとルキオの同期とその上の辺りの貴族の生まれの連中だが、あいつらは群れるだけで実力は無い」
「実力は無いと言っても、群れるってことは大勢ってことですよね? 数の脅威ってやつじゃないんですか?」
ラルフ様から何度か聞いた、『数の脅威』という言葉を出してみた。使い方合ってる?
僕は戦闘に関しては詳しくないから使い方が間違っていないといいんだけど……
「ふむ、そうだな。さすがマティアスだ。念のため監視をつけるか。そろそろ行動に起こしそうな気がしている」
「そうなんですか? そんなこと分かるんですか?」
「ふっ、それくらい分かる」
ラルフ様は自慢げに胸を張って言った。それも戦場で培った能力なんだろうか?
行動を起こすって、一体何をするつもりなんだろう? 訓練中にわざと怪我をさせる? 階段から突き落とす? 人気がないところに呼び出してボコボコにする?
「マティアスの関心は若い男ばかりに向く」
僕が色々と考え込んでいると、ラルフ様が不貞腐れていた。まるで拗ねている時のパンのようだ。
「そんなことありませんよ。僕が愛してるのはラルフ様だけですから」
僕がそんなことを言ったものだから、一瞬にしてラルフ様に攫われてベッドの上で裸だった。
リーノたちはあんなにヘロヘロになっていたのに、ラルフ様はまだまだ元気だ。
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