【完結】王子様の身代わりになった僕は最恐と恐れられる皇帝を肉球で癒す

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6.打ち明けるとき(グレオン視点)

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 ── 闇の皇帝として光を守る。それが私の使命だ。

 俺もアルを守ればアルに愛されるのか?
 そう思っていた矢先、アルは軍の敷地で襲われた。

 アルは部屋を出るとき、経理に行ってその後は軍の会計に行くと言っていた。
 経理に行ったがアルはおらず、仕方なく軍の会計に行くことにした。あいつらはアルをいつも引き留める。アルがちっとも帰ってこないときは、大抵軍の会計部にいるんだ。

「アルはどこだ?」
「陛下お疲れ様です! 今日はまだアル様は来ていませんよ」
 そんなはずはない。経理を出て軍に来る途中でアルは見かけなかった。ここ以外に寄り道をするところなどあるか?

 会計部を出ると、やけに闇の魔力が漂っているのが気になり、誰かが無茶をして闇魔法を使ったのかと思った。
 様子を見に行こう。闇の魔力に耐えられなくなる奴が出るかもしれん。

「誰か! 助けて!」
 アル?
 アルの声が聞こえ、俺は影となり一瞬でアルの元へ飛んだ。

 男を闇魔法で拘束して無力化し、引き剥がしてアルを抱き上げる。
 男に掴まれたアルの腕は赤くなっており、来るのが遅かったのだと悟った。まさか俺のアルを襲う奴がいるなど……

 アルは大丈夫と言ったが、抱き上げた体は小刻みに震えている。
 種族の特性かアルは小さい。小さなアルが、でかい男に襲われたんだ、怖いに決まっている。いつも俺を癒してくれるアルを今度は俺が癒してやりたい。だが俺には柔らかい手もないし、優しい顔もできない。迷った挙句、背中をそっと撫でてやることしかできなかった。

「まだ会計に書類を届けていないんです」
「分かった、帰りに寄ろう」
 震えるほど怖い思いをしたくせに、アルは自分の仕事を投げ出したりはしない。最後までやり抜こうとする。
 アルは強い。戦闘力はなくとも心が強い。

 ふと気になって猫パンチをしたのかと聞いたら、したらしい。
 本当にしたのか……見ることができなかったのは残念だ。アルが危機に陥ることなど許せはしないが、アルの猫パンチはいつか見てみたい。
 猫パンチ、いつか見せてくれるだろうか?

 その日から俺はアルを常に隣に置くようになった。
 どこへ行くにも連れて行き、隣に座らせる。
 我が国に俺のものであるアルに手を出そうと思うような奴はいない、その思いは見事に裏切られた。
 そして会議や軍議に連れて行くと、アルに殺気を飛ばす者まで現れた。

 そしてエデラーからもたらされた噂。俺がアルに骨抜きになっている、などという誰が流したのか分からないがふざけた噂話。当たらずとも遠からずだが、そんなことを説明してやる道理はない。

 俺は最恐だ、恐怖で支配する皇帝だからできることもある。大切なものを守るためには、力が必要だ。
 アルによからぬ視線を送る奴は徹底的に排除した。
 威厳を保ちながら、恐怖で周りを黙らせる。

 アルは小さく弱々しい。そのせいで侮られているふしがある。
 そろそろアルの立場を皆に分からせる時が来たのだと、見せしめにちょうどいい奴を見つけて殴りつけ、中央広場へ引きずっていった。パフォーマンスとしては、時間も場所も完璧だろう。

「こいつはアルに余計なことを言った。お前らは分かってないようだな。アルはエルヴァニアの王族であり俺の所有物だ。身分はお前らより上だということを認識しておけ!」

 アルは見た目は小さく可愛らしいが王族だ。決してこいつらが侮っていい身分ではない。だが、それでも一部は納得していないのか、何か言いたそうな顔をしている。
 言ってみろ、お前らがアルに勝る部分があるというのなら、聞かせてもらおうではないか。

「お前、何か言いたそうだな。言ってみるがいい」
 一度は言い淀んだ男だったが、俺が言えと怒鳴りつけると血の気が引いた顔で口を開いた。

「身分は王族でも、役に立たない者を敬うのは難しいと思っただけです」
 俺が無理やり言わせた男は、内容はどうあれ俺の質問にはしっかり答えた。こいつは会話の受け答えはできるようだ。こいつは知らないだけだ。アルはこう見えてかなり優秀だ。

「ほう、アル様がお役に立っていないと? それほどのことを言う君はさぞ国の役に立っているんでしょうな?」
 俺が口を開く前にエデラーが出てきて、勝手に男を無能と呼び、アルの功績を広めてくれた。

 エデラーは優しい顔をして、やることはえげつない。エデラーがいるところでアルを「役に立たない者」などと言ったのだから、もう俺は知らん。
 あとはエデラーに任せて俺はアルを連れて部屋に戻った。

 しかし珍しいな。エデラーはあのような場で声を上げる者ではない。
 密かにターゲットを定め、自分の手を汚さず相手を潰すような男だ。アルのために声を上げたんだろうが、思った以上にエデラーはアルを気に入っている。だが決して渡しはしない。アルは俺のものだ。

 
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