【完結】王子様の身代わりになった僕は最恐と恐れられる皇帝を肉球で癒す

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11.里帰りと建国の書

70.

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「それより兄さんの子どもがいるってどういうこと? 誰に産ませた子?」
 オルフレートの疑問はもっともだ。僕でもたまにあれは夢だったんじゃないかと思う時があるくらいだ。だって僕は男だ。

「カスパーは僕が産んだ。皇帝と僕の子だよ」
「え!? 兄さん女だったの? 姉さんなの?」
「僕は男だよ。ケットシーの血筋は男でも子ができるんだ。僕も実際に産むまで信じられなかった。カスパーがお腹の中で動いても、そんなわけないと思ってた。でも生まれた」

 弟も妹も信じられないという感じで驚いているけど、母さんだけは「あらアルフレートが産んだのね」なんて普通に受け止めている。
 驚かれてもどうしていいのか分からないけど、当たり前のように受け止められるのもなんだか複雑な気分だ。
 大勢人がいて結構騒がしくしているのに、カスパーは最初に泣いた以降は大人しくしている。

「へえ、兄さんの子か。兄さんには全然似てないね」
「だよね。それは僕も思う」
 目は赤いし、耳は横についてるし、髪は黒だ。全部皇帝に似ている。

「そんなことないわよ。眉なんてアルフレートそっくりじゃない」
「俺も眉はアルフにそっくりだと思っていた」
 母さんと皇帝の言葉にカスパーの眉を見てみたけど、全然分からなかった。二人して僕のことを慰めてくれているんだろうか?

「エデラーさん、オルフレートの前の王様たちはどこに行ったんですか?」
「国外にでも出たのではないかな?」
「国外に?」

 獣人は他の種族と比べて体が小さい人が多い。ヴェストみたいに危険な国もあるのに他国になんて行くだろうか?

「彼らは長きにわたり国民を欺いてきましたからな。意図的に歴史を隠匿し、自分たちがあたかもケットシーの血筋であるように振る舞い、更に国内で飢餓が起きても対処するどころか食料の買い占めを行なった。国内にその話が広まっておりますので、エルヴァニアに彼らの居場所などないんですよ」
「そうですか……」

 エデラーさんが目を赤く光らせながら言うから、僕は何も言えなくなってしまった。
 いつも優しいエデラーさんでも腹に据えかねるようなことをやっていたんだろう。

 それにしても僕がケットシーの血筋だったなんて、本当に信じられない。でも、それならなぜエルヴァニアは気候変動が起きているんだろう?

「オルフレート、ミレオフレート、ベティーナ、誰か光魔法の適性はあるの?」
「残念ながら誰もないんだ」

 三人は首を振った。ねえ、もしかしてエルヴァニアが天候不良になったのって、僕のせいだったりする?
 エルヴァニアの光の加護はとっくに切れていて、僕が帝国に行ったから、国内に光魔法の適性者も光魔法の加護を受けた人もいなくなった。時期的にもそんな気がしてきた。血の気が引いていく……

「アルフ、どうした? 体調が悪いのか?」
「グレオン様……大変なことに気づいてしまったかもしれません……」
「ほら、こっち来い」

 グレオン様に手を取られ引き寄せられたと思ったら、もう腕の中に収まっていた。少し冷たい手が僕の心を少し落ち着けてくれた。背中を撫でてくれる手が優しい。
 まだしっかり整理できていないまま、ポツリ、ポツリと気づいたことを伝えていく。

「僕のせいかも……」
「違う。全てはただの猫でありながら王の椅子に座り続けた奴らのせいだ」
「そうですよ。アル様のせいではありません。対策を一緒に考えましょう」
「……はい」

 僕はショックでまだ上手く考えられそうにない。みんなが一緒に考えてくれるならありがたい。

 みんなで一緒に光魔法の本を書庫から持ってきて調べていく。
 土地の加護ってのはどこでどうやってやればいいんだろう? 僕はケットシーの血筋だから加護を与えることができると思うんだ。──たぶん。でもどの本を調べても載っていなかった。

「陛下、ご歓談中に申し訳ありません。神殿からアルフレート皇后にお会いしたいという者が来ておりますが、いかがいたしますか?」

 神殿で魔法の適性を確かめることができるんだから、もしかしたら加護のことも分かるかもしれないと思った。

「オルフレート、神殿の人に会ってみていい?」
「兄さんに用事みたいだし、兄さんがいいなら構わないよ」
 オルフレートは皇帝をチラッと見た。皇帝が反対するかもしれないのか……
 僕も皇帝を見ると「俺も同席する」と許可してくれた。

 僕と皇帝を帝国から連れてきた護衛が囲むようにして、神官がいるという部屋に向かった。
 案内してくれる人がちょっと怯えているのは申し訳ない。案内してくれる人は犬人族だから僕と同じように帝国の人たちと比べると頭一つ分小さいから、ちょっと怖いんだろう。

「ヴェルナー帝国皇帝陛下並びに皇后陛下が入られます」
 部屋に入ると神官と思われる人が三人平伏して待っていた。皇帝を前にしたらそれが普通なのかもしれないけど、僕は慣れないからどうしていいのか分からなくなる。

「我が皇后に何の用か?」
「アルフレート様が神殿で魔法の鑑定を受けられたとき、失礼な態度をとってしまったことをお詫びしたく参上いたしました。アルフレート様、申し訳ございませんでした」

 お詫びしに来たと言われても、僕には何のことだか分からなかった。
「アルフ、何か失礼なことをされたのか?」
「特にそのような記憶はないんですが……」

 話を聞いてみると、平民だと思い蔑んだような態度をとってしまったことを気に病んでいたそうだ。そんなことがあったような……どうだったかな?
 僕は特に気にしていなかった。

 僕は気にしていないことを伝え、せっかく会えたのだからと聞きたかったことを聞いてみることにした。
「王家の光魔法の適性がある人が行っていた、土地への加護は知っていますか? どこでどのように行うのか知っていたら教えていただきたいです」

 どうやら土地への加護も、ケットシーの血を継ぐ者への加護も、神殿の地下にある泉で行っていたらしい。やり方は分からないそうだ。でも神殿に資料があるかもしれないとのことだった。
 翌々日に訪れると約束を取り付け、カスパーと弟たちが待つ部屋へ戻った。

 
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