71 / 72
11.里帰りと建国の書
71.※
しおりを挟む僕たちは王宮に客間を用意してもらい、そこに数日滞在することになった。
みんなで一緒に食事をして、みんなでいろんな話をした。昔に戻ったみたいだ。
エルヴァニアに連れてきてくれた皇帝には本当に感謝している。
オルフレートが王になることで混乱はなかったのかと不思議だったけど、貴族たちも王家の横暴に嫌気がさしている人が多かったのだとか。皇帝は武力で押さえつけることも考えたけど、その必要もなかったと笑っていた。
追放されて新国王が誕生した日にはお祭り騒ぎだったそうだ。
平民は誰が王でもそんなに興味はなかった。だけどオルフレートが王になって皇帝が食糧を援助するようになると、興味がなかった平民たちも喜んだそうだ。
エデラーさんの目が光っていたから、きっといいことばかりではなかったんだろう。
そして約束を取り付けた日、神殿へみんなで向かった。
神殿の地下に案内されると、小さな泉があった。とても綺麗な場所で、泉は薄っすらと光を放っている。
「アルフレート様、資料を調べたのですが、『豊穣を願い光を込める』というような漠然とした表現しか記されておらず、加護を付与する方法は見つけられませんでした」
申し訳なさそうに神官が答えてくれたけど、それだけ分かれば問題ない。なぜか分からないけど、この泉はエルヴァニア全土と帝国にも少し繋がっている気がしたんだ。
僕は泉の前で膝をつき、祈りを込めて光魔法をゆっくりと流していった。
光がどんどん強くなっていくのが分かる。でもまだだ。もっと国の全土に広がるよう光を込めないと……
「アルフ! もうダメだ」
僕は皇帝に止められると、皇帝の手の中に倒れ込んだ。意識が遠のいていく……
目覚めると神殿の部屋に寝かされていた。心配そうな顔で皇帝が僕の顔を覗き込んでいる。
「無茶をするな。魔力を全部使い果たして倒れたんだ」
「そっか、でもまだ足りないんです。もっと光を込めないと」
「ダメだ。今日はもう城に帰る。明日だ」
「分かりました」
体がだるくて起き上がれない僕を皇帝は横抱きにして運んでくれた。病気でも怪我でもないから、治癒の魔法も効かない。休んで魔力を回復させるしかないそうだ。
こうして僕は毎日倒れる寸前まで泉に光魔法を流し、やっと五日目に泉の色が虹色に変わった。
きっと今までは、王族が定期的に訪れて光魔法を流していたんだろう。
土地の加護は復活した。これでエルヴァニアにも豊穣が戻るだろう。弟と妹にも豊穣の祈りを込めて光魔法を流した。僕がエルヴァニアを出ても、これで数十年は持つはずだ。あとは弟か妹に光魔法の適性を持つ子が生まれればエルヴァニアも帝国も安泰だ。
あれ? こんなところに鍵が落ちてる。
泉が虹色に輝いて、辺りが昼間みたいに明るくなると、鍵が落ちているのを見つけた。
「これって……」
「そうかもしれん」
王宮に戻り、緊張しながら鍵のかかった本の鍵穴に鍵を差し込んで回してみる。カチャッと小さな音と共に鍵が開いた。
僕は皇帝の膝の上で本を開いた。でもエルヴァニアの古い言語で書かれていたから、僕が読んであげた。
「これは、建国の物語だったんだな」
「うん、そうみたい」」
「だがこっちの本の方がより詳細だ。竜の血を引く者が大雑把なのは太古から変わらないらしい」
「この本、みんなが読めるように僕が現代の言葉で書き直すよ。封印しておくより、みんなに知ってほしい」
僕は本を書き直し、何部か皇帝に複写してもらった。
役目は終わったからそろそろ帝国へ帰ろう。皇帝がこんなに長く国を空けているのはよくない。
「グレオン様、我が家に帰りましょう」
「我が家か。それはいい」
なぜかグレオン様は嬉しそうだ。やっぱり住み慣れた帝国がいいんだろう。
僕は一つだけ気になっていたことがある。アルバン様のことだ。僕と違い小さい頃から教育を受けてきたアルバン様は帝国で重用されているということも考えられる。いつの間にか皇帝の右腕になってるなんてことないよね?
やっぱり僕は心が狭いみたいだ。
「アルバン様はどうなったんですか?」
「ああ、あいつは自分はケットシーの血を引くと豪語しているから娼館に送った。妊娠したら解放するという条件でな」
「そ、そうなんだ……」
「なかなか人気になっているぞ。当たり前だが妊娠はしない。あいつはただの猫人族の男だからな」
一族は追放され、彼も行く場所がないんだろう。それともケットシーの血筋だと信じて頑張ってるんだろうか?
でも人気になっているなんて、なぜ皇帝が知っているんだろう?
「もしかして、グレオン様もアルバン様を買ったんですか?」
「は? 冗談を言うな。あんな奴は金を積まれても無理だ」
「そっか……」
だって僕はカスパーがお腹にいるとき、ずっと我儘を言って夜の相手もしなかった。だから皇帝が他で発散していても仕方ないって思った。嫌だけど、そんなことは言えない。
「嫉妬か? お前は本当に可愛いな」
「嫉妬かもしれない……」
独り言みたいに小さく呟くと、皇帝に引き寄せられて抱きしめられた。そうだった、皇帝は耳がいいんだ……
「俺が愛しているのはお前だけだ。抱きたいのもお前だけだ。そろそろ俺の愛を信じろ」
「はい」
「子が生まれるまで我慢してたんだ。生まれてからも忙しかった。もうそろそろ俺も我慢が限界だ。今夜は寝かさない」
僕はケットシーの血筋だ。皇帝を救えるのは僕だけ。もう迷わず皇帝に愛を伝えられる。心から大好きだと伝えていいんだ。
「グレオン様、愛してます」
組み敷かれて皇帝の真っ赤な目が僕を見下ろしている。
「抱いてほしいんだろ?」
「はい。抱いてほしいです」
そんなこと聞かなくても答えは分かってるくせに。皇帝は僕に言わせたいんだ。
「上に乗れ」
「はい」
「自分で挿れれるな?」
「はい」
皇帝の大きいのを後ろに押し当ててゆっくり沈み込む。
「んっ……」
「練習をサボっていたからな。ほら、もっと動けるだろ?」
「あっ……やだぁ、前触っちゃダメ……そんなのされた動けないよ……」
寝かさないと言った言葉は本当だった。中にたくさん注がれすぎて、僕のお腹はぽっこり膨らんでる。
「出すか」
そう呟いた皇帝に抱えられ、僕はお風呂に連れて行かれた。後ろからトロトロと白濁したものが流れていく……
「もう一人ほしいな」
「アルフ、お前俺のこと煽ってんのか? 可愛いな」
全然煽ってなんかない。もう終わりだと思ったのに、お風呂でも僕は立ったまま抱かれることになった。
体液でベタベタになった体は皇帝が洗ってくれた。
「アルフ、お前風呂嫌いだろ」
「なんで知ってるんですか?」
「見ていれば分かる。耳に水がかかるのが嫌なんだろ?」
「はい」
そんなことまでバレていたなんて……
皇帝はなぜか悪戯が成功したみたいに、クスクスと楽しそうに笑っている。
お風呂を出ると、体も髪も耳まで丁寧に皇帝が拭いてくれた。耳の付け根には触れないように拭いてくれる。僕のこと本当に見ていてくれたんだ……
寝巻きはボタンまで留めてくれて、また横抱きにしてベッドまで運ばれた。皇帝はいつも優しい。
「そんなに俺のことを見つめてどうした?」
「大好きになっていい?」
「いいぞ。俺はもうアルフのことが大好きだ」
「僕は幸せです」
「そうか。俺も幸せだ」
皇帝は僕の手を取って頬を寄せた。
641
あなたにおすすめの小説
猫の王子は最強の竜帝陛下に食べられたくない
muku
BL
猫の国の第五王子ミカは、片目の色が違うことで兄達から迫害されていた。戦勝国である鼠の国に差し出され、囚われているところへ、ある日竜帝セライナがやって来る。
竜族は獣人の中でも最強の種族で、セライナに引き取られたミカは竜族の住む島で生活することに。
猫が大好きな竜族達にちやほやされるミカだったが、どうしても受け入れられないことがあった。
どうやら自分は竜帝セライナの「エサ」として連れてこられたらしく、どうしても食べられたくないミカは、それを回避しようと奮闘するのだが――。
勘違いから始まる、獣人BLファンタジー。
異世界オークションで売られた俺、落札したのは昔助けた狼でした
うんとこどっこいしょ
BL
異世界の闇オークションで商品として目覚めた青年・アキラ。
獣人族たちに値踏みされ、競りにかけられる恐怖の中、彼を千枚の金貨で落札したのは、銀灰色の髪を持つ狼の獣人・ロウだった。
怯えるアキラに、ロウは思いがけない言葉を告げる。
「やっと会えた。お前は俺の命の恩人だ」
戸惑うアキラの脳裏に蘇るのは、かつて雨の日に助けた一匹の子狼との記憶。
獣人世界を舞台に、命の恩人であるアキラと、一途に想い続けた狼獣人が紡ぐ、執着と溺愛の異世界BLロマンス。
第一章 完結
第二章 完結
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
侯爵様の愛人ですが、その息子にも愛されてます
muku
BL
魔術師フィアリスは、地底の迷宮から湧き続ける魔物を倒す使命を担っているリトスロード侯爵家に雇われている。
仕事は魔物の駆除と、侯爵家三男エヴァンの家庭教師。
成人したエヴァンから突然恋心を告げられたフィアリスは、大いに戸惑うことになる。
何故ならフィアリスは、エヴァンの父とただならぬ関係にあったのだった。
汚れた自分には愛される価値がないと思いこむ美しい魔術師の青年と、そんな師を一心に愛し続ける弟子の物語。
もふもふ聖獣様に拾われた不遇オメガは、空に浮かぶ島で運命の番として極上の溺愛を注がれる
水凪しおん
BL
「オメガがいるから、村に災いが降りかかったのだ」
理不尽な理由で村人たちから忌み嫌われ、深い雪の森へと生贄として捨てられた十九歳の青年、ルカ。
凍える寒さの中、絶望に目を閉じた彼の前に現れたのは、見上げるほど巨大で美しい「白銀の狼」だった。
伝説の聖獣である狼に拾われたルカが目を覚ましたのは、下界の汚れから切り離された雲海に浮かぶ美しい島。
狼は人間の姿——流れるような銀髪と黄金の瞳を持つ壮麗なアルファの偉丈夫、レオンへと変化し、ルカにこう告げる。
「君は、俺の運命の番だ」
これまで虐げられ、自分を穢れた存在だと思い込んでいたルカは、レオンの甘く深いアルファの香りと、恐ろしいほどの優しさに戸惑うばかり。
温かい食事、美しい庭園、そして決して自分を傷つけない大きな手。
極上の溺愛に包まれるうち、ルカの心に固く巻きついていた冷たい恐怖の糸は、少しずつほどけていく。
そして、ルカを捨てた村人たちが強欲にも島へ足を踏み入れたとき、ルカは自らの意志とオメガとしての本当の力に目覚める——。
これは、孤独だった不遇のオメガが、伝説の聖獣の番として永遠の幸せと自分の居場所を見つけるまでの、心温まる溺愛ファンタジー。
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる