【完結】王子様の身代わりになった僕は最恐と恐れられる皇帝を肉球で癒す

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11.里帰りと建国の書

71.※

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 僕たちは王宮に客間を用意してもらい、そこに数日滞在することになった。
 みんなで一緒に食事をして、みんなでいろんな話をした。昔に戻ったみたいだ。
 エルヴァニアに連れてきてくれた皇帝には本当に感謝している。

 オルフレートが王になることで混乱はなかったのかと不思議だったけど、貴族たちも王家の横暴に嫌気がさしている人が多かったのだとか。皇帝は武力で押さえつけることも考えたけど、その必要もなかったと笑っていた。

 追放されて新国王が誕生した日にはお祭り騒ぎだったそうだ。
 平民は誰が王でもそんなに興味はなかった。だけどオルフレートが王になって皇帝が食糧を援助するようになると、興味がなかった平民たちも喜んだそうだ。
 エデラーさんの目が光っていたから、きっといいことばかりではなかったんだろう。

 そして約束を取り付けた日、神殿へみんなで向かった。
 神殿の地下に案内されると、小さな泉があった。とても綺麗な場所で、泉は薄っすらと光を放っている。

「アルフレート様、資料を調べたのですが、『豊穣を願い光を込める』というような漠然とした表現しか記されておらず、加護を付与する方法は見つけられませんでした」

 申し訳なさそうに神官が答えてくれたけど、それだけ分かれば問題ない。なぜか分からないけど、この泉はエルヴァニア全土と帝国にも少し繋がっている気がしたんだ。
 僕は泉の前で膝をつき、祈りを込めて光魔法をゆっくりと流していった。
 光がどんどん強くなっていくのが分かる。でもまだだ。もっと国の全土に広がるよう光を込めないと……

「アルフ! もうダメだ」
 僕は皇帝に止められると、皇帝の手の中に倒れ込んだ。意識が遠のいていく……

 目覚めると神殿の部屋に寝かされていた。心配そうな顔で皇帝が僕の顔を覗き込んでいる。
「無茶をするな。魔力を全部使い果たして倒れたんだ」
「そっか、でもまだ足りないんです。もっと光を込めないと」
「ダメだ。今日はもう城に帰る。明日だ」
「分かりました」

 体がだるくて起き上がれない僕を皇帝は横抱きにして運んでくれた。病気でも怪我でもないから、治癒の魔法も効かない。休んで魔力を回復させるしかないそうだ。
 こうして僕は毎日倒れる寸前まで泉に光魔法を流し、やっと五日目に泉の色が虹色に変わった。
 きっと今までは、王族が定期的に訪れて光魔法を流していたんだろう。

 土地の加護は復活した。これでエルヴァニアにも豊穣が戻るだろう。弟と妹にも豊穣の祈りを込めて光魔法を流した。僕がエルヴァニアを出ても、これで数十年は持つはずだ。あとは弟か妹に光魔法の適性を持つ子が生まれればエルヴァニアも帝国も安泰だ。

 あれ? こんなところに鍵が落ちてる。
 泉が虹色に輝いて、辺りが昼間みたいに明るくなると、鍵が落ちているのを見つけた。
「これって……」
「そうかもしれん」
 王宮に戻り、緊張しながら鍵のかかった本の鍵穴に鍵を差し込んで回してみる。カチャッと小さな音と共に鍵が開いた。

 僕は皇帝の膝の上で本を開いた。でもエルヴァニアの古い言語で書かれていたから、僕が読んであげた。
「これは、建国の物語だったんだな」
「うん、そうみたい」」
「だがこっちの本の方がより詳細だ。竜の血を引く者が大雑把なのは太古から変わらないらしい」
「この本、みんなが読めるように僕が現代の言葉で書き直すよ。封印しておくより、みんなに知ってほしい」

 僕は本を書き直し、何部か皇帝に複写してもらった。
 役目は終わったからそろそろ帝国へ帰ろう。皇帝がこんなに長く国を空けているのはよくない。

「グレオン様、我が家に帰りましょう」
「我が家か。それはいい」
 なぜかグレオン様は嬉しそうだ。やっぱり住み慣れた帝国がいいんだろう。

 僕は一つだけ気になっていたことがある。アルバン様のことだ。僕と違い小さい頃から教育を受けてきたアルバン様は帝国で重用されているということも考えられる。いつの間にか皇帝の右腕になってるなんてことないよね?
 やっぱり僕は心が狭いみたいだ。

「アルバン様はどうなったんですか?」
「ああ、あいつは自分はケットシーの血を引くと豪語しているから娼館に送った。妊娠したら解放するという条件でな」
「そ、そうなんだ……」
「なかなか人気になっているぞ。当たり前だが妊娠はしない。あいつはただの猫人族の男だからな」

 一族は追放され、彼も行く場所がないんだろう。それともケットシーの血筋だと信じて頑張ってるんだろうか?
 でも人気になっているなんて、なぜ皇帝が知っているんだろう?

「もしかして、グレオン様もアルバン様を買ったんですか?」
「は? 冗談を言うな。あんな奴は金を積まれても無理だ」
「そっか……」

 だって僕はカスパーがお腹にいるとき、ずっと我儘を言って夜の相手もしなかった。だから皇帝が他で発散していても仕方ないって思った。嫌だけど、そんなことは言えない。

「嫉妬か? お前は本当に可愛いな」
「嫉妬かもしれない……」
 独り言みたいに小さく呟くと、皇帝に引き寄せられて抱きしめられた。そうだった、皇帝は耳がいいんだ……

「俺が愛しているのはお前だけだ。抱きたいのもお前だけだ。そろそろ俺の愛を信じろ」
「はい」
「子が生まれるまで我慢してたんだ。生まれてからも忙しかった。もうそろそろ俺も我慢が限界だ。今夜は寝かさない」

 僕はケットシーの血筋だ。皇帝を救えるのは僕だけ。もう迷わず皇帝に愛を伝えられる。心から大好きだと伝えていいんだ。
「グレオン様、愛してます」

 組み敷かれて皇帝の真っ赤な目が僕を見下ろしている。
「抱いてほしいんだろ?」
「はい。抱いてほしいです」
 そんなこと聞かなくても答えは分かってるくせに。皇帝は僕に言わせたいんだ。

「上に乗れ」
「はい」
「自分で挿れれるな?」
「はい」

 皇帝の大きいのを後ろに押し当ててゆっくり沈み込む。
「んっ……」
「練習をサボっていたからな。ほら、もっと動けるだろ?」
「あっ……やだぁ、前触っちゃダメ……そんなのされた動けないよ……」

 寝かさないと言った言葉は本当だった。中にたくさん注がれすぎて、僕のお腹はぽっこり膨らんでる。
「出すか」
 そう呟いた皇帝に抱えられ、僕はお風呂に連れて行かれた。後ろからトロトロと白濁したものが流れていく……

「もう一人ほしいな」
「アルフ、お前俺のこと煽ってんのか? 可愛いな」
 全然煽ってなんかない。もう終わりだと思ったのに、お風呂でも僕は立ったまま抱かれることになった。
 体液でベタベタになった体は皇帝が洗ってくれた。

「アルフ、お前風呂嫌いだろ」
「なんで知ってるんですか?」
「見ていれば分かる。耳に水がかかるのが嫌なんだろ?」
「はい」
 そんなことまでバレていたなんて……
 皇帝はなぜか悪戯が成功したみたいに、クスクスと楽しそうに笑っている。

 お風呂を出ると、体も髪も耳まで丁寧に皇帝が拭いてくれた。耳の付け根には触れないように拭いてくれる。僕のこと本当に見ていてくれたんだ……
 寝巻きはボタンまで留めてくれて、また横抱きにしてベッドまで運ばれた。皇帝はいつも優しい。

「そんなに俺のことを見つめてどうした?」
「大好きになっていい?」
「いいぞ。俺はもうアルフのことが大好きだ」

「僕は幸せです」
「そうか。俺も幸せだ」

 皇帝は僕の手を取って頬を寄せた。

 
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