俺たちの××

怜悧(サトシ)

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夏休み編

やくそくの場所 →side Y

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一旦荷物を取りに帰るからと言って東流は自宅に帰っていった。
そうして2、3日すると、何もなかったかのような自然さでさらっと大きな荷物を抱えて戻ってきた。
夏休みが終わるまで一緒に過ごしてくれる気持ちがわかり、オレは上機嫌だった。
東流はどこに行くでもなく、持ってきたゲームをベッドでごろごろしながらやっているので、さては、お気に入りの狩りゲームでも取りに行きたかったんだなと思った。

「なあ、ヤス。いつさあ、海連れてってくれんだよ。俺家から海パン持ってきたんだけど」

なんの脈絡もなく、東流はオレにそう切り出した。
いや、今まで東流に脈絡なんかあったためしはない。

「……トール?どっから海に行くとかでてきた?」
「ンだよ、忘れてんのかよ。夏休みになったら、ヤスの運転で海連れてってくれるっつったじゃねえか」
確かに、免許をとったばかりのころにそんな約束をしたような気もしなくない。

多分したのだろう。

東流の記憶力はかなりズバ抜けている。理解力さえあれば、かなり上の学校にもいけたはずだ。
「……すっかり忘れていた。ゴメン」
かなり楽しみにしていた様子に罪悪感がこみ上げてきた。
海に行く約束など、すっかり忘れて、東流を手に入れるための計画で頭がいっぱいだったのだ。
素直に自分との夏休みを楽しみにしてくれていたのにと考えると、申し訳なくなる。
「まあ、色々あったしなあ。…………オマエの中の計画も変わったんだろうけどさ、俺は楽しみにして、海パンまで買ってたんだぞ。こないだ、それを思い出してもってきた」

ゲームを取りに帰ったわけじゃなかったのか。
オレが忘れていたようなことを、楽しみにしてくれたことが純粋に嬉しくて仕方がない。
「じゃあ、海に今からいくか?」
「お!!そうか、それじゃあセージも誘う?大会終わってんだし」
相変わらず、東流はそういうところは鈍感すぎる。

まあ、そんなことは今更だしごちゃごちゃ言う気も起きない。

「……じゃあ、それなら明日がいいかも。アイツもこないだ仲良くなった女の子連れてくる口実に使えるかもしれないからな」
オレら2人でいちゃつく時間もほしいので、誠士との別行動も視野に入れた提案をする。
「そうだな!じゃあ、セージに電話するぞ」
メールでいいだろ、と思うが嬉しそうに電話をかけはじめたので、オレはその背中を見守った。

海か。

そういえばその話をしたとき、東流がすごく嬉しそうにしていたのを思い出す。
なんで、そんなことも忘れてしまっていたのだろう。

ちゃんとした夏休み、東流とやりなおさないとな。

東流と過ごす、最後の夏休みなんだから。思い出に残るものにしよう。
オレは戸棚の上に積んである、ビーチ用の浮き輪やボートなどを探し始めた。
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