俺たちの××

怜悧(サトシ)

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三学期編

大阪事変 →side T

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ようやく大阪にたどり着いたのは、すでに夕飯時になっていた。ファミレスでホテルをとってもらってホテルにバイクを置いたところだ。

「ハラ減ったって言ってもアニキ、名古屋でも食いすぎなくらい食っただろ?」
「セーハはくわなすぎ。だからデカくなれねーんだぞ。身長、こないだキタラたちに抜かされただろ」
あまり食わない弟を心配して言ったのだが、うるさいとばかりに嫌そうな顔でスルーされる。
何かあった時には、やっぱりウエイトの差はでてくる。まあ、スタンガンとか使われたら、そこはウエイトとか関係ないんだけどな。

「とりあえず、ホテルの中で飯食うか?」
「いや、適当にコンビニでメシ買ってくるよ。アニキの量だと、ホテルのメシだとかなり高くつくからさ」
ホテルの受付で先払いの金を支払い、鍵をもらう。
西覇は俺に自分の荷物を手渡して、買い物にいくと踵を返す。

「俺もいこうか?」
「いーよ。ヤッちゃんから、アニキを夜の街に出すなって強く言われてんだよ」
康史のヤツはかなり心配症だが、そうなる理由もわかるので仕方がない。
自分から喧嘩は売らないが、俺は売ってこられたら買わずにはいられない性である。
「先に部屋行って、シャワーでも浴びといて」
「お前も初めての土地なんだから、気をつけろよ」

ルームナンバーを教えて、エレベーターに乗って部屋につくと少ない荷物を下ろす。
とりあえず、あの心配性に電話いれるかな。
俺は携帯を取り出して、康史の名前に指を置いた。
『もしもし、トール?』
1日も離れていないが、こんなに距離が離れているのは、めったになくて思わずすぐに言葉が浮かばない。
「お、おう。大阪ついたから、今日はここで1泊する。高速乗れないのはキツイなぁ」
『無事について安心した。……西覇は?』
「メシ買いにいったぜ。オマエ、俺を夜の街に出すなと言ったとか?」
『そりゃ、あたりまえだろ。それくらい守ってくれよ』
心配してるのはわかるしな。
なるだけ、康史には受験勉強に集中してほしいものだ。

「ハイハイ、わかったてぇの。じゃあ、シャワーを浴びてくるわ」
俺は電話を切ると、狭いユニットの浴室へと向かった。


シャワーを浴びて着替えても、西覇は帰ってこなかった。
さすがに、コンビニだけで時間かかりすぎだろ。
嫌な予感がするが、いま飛び出していったとしてすれ違ったらまずいし、外に出ると俺がトラブルを引き寄せちまうのは、さすがに学習済だ。

明日のフェリーの時間を確認してから、俺はベッドに腰をおろす。
そりゃ、西覇の方が絡まれる可能性は、俺より少ないがゼロではないだろう。
俺と一緒の方がまだマシだったか。
イライラしながらTVをつけるが、何も頭に入ってこない。

たららたらたらたらたらたららー♪
俺の携帯から、ゴッドファーザーのテーマが流れ出す。
名前の表示を見るとセーハの名前がある。

やっぱりなんか、あったのか。

「セーハ、おっせえぞ」
とりあえず、普通に電話に出るとなんだか周りのざわめきも受信してしまって、喧騒で声が聞き取りずらい。

『アニキ、ごめん…………っ』
微かな声で謝る西覇の声は尋常ではないのがわかり、俺はすぐにベッドから立ち上がる。
「今、どこだ?」
『お兄さん、…………ですかいなあ。弟さんがヤンチャしてくれたんで、いま、ちいとばかり仕置きしてるんやけど、ひきとりに来てくれんかいのう』
電話を変わったのか、少しドスの聞いた声からチンピラ連中とわかる男の声に、俺はギュッと拳を握りしめる。
「………わかった………引取りにいく。ドコに行けばいいが教えてくれ。地元じゃないから、詳しく場所を知りたい」
『お兄さんも、なんや若い感じやね。もっとる金かき集めてきいや。…………〇✕埠頭前の倉庫や』
フェリーの出る港近くの埠頭の名前をいい、倉庫のくわしい場所を聞き出す。
うまく、逃げられるかわからないな。
フェリー代とガソリン代だけ別にして、そいつを担保に逃げられるか、どうか、だな。

俺は頭の中で最悪のシュチュエーションも考えながらバイクを埠頭へと走らせた。
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