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青天霹靂
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俺はテーブルに置かれた何の変哲も無い封筒をおそるおそる手にして、中の紙を取り出した。
「……虎王はヤクザに捕まって、身代金を請求された」
「すぐ警察に通報……ッ」
スマホを取り出そうとする腕を、ぐいと強く父に掴まれた。
「いいから中を読め」
俺は言われたように取り出し他紙を開いて、印字されている文章を読む。
内容はいわゆる、脅迫文である。
虎王がクスリを使ってラリって海東組の組員を傷付けたので、落とし前として明日までに一千万円払わなければ、殺して臓器を売り払う。
警察に通報すれば息子がクスリをやっていたことが公になるので困るだろうと、しっかり二段構えで強請りと脅しをかけている。
封筒の消印を見ると、一昨日の日付になっている。
到着は昨日だとして、まだ金を払っていないのだろうか。
払う金がないわけはないのは知っている。
「貴方、この子は?……まさか、もしかしてアナタが眞壁さんの……」
虎王の母親が俺の顔を見てハッとしたような顔をする。
俺の顔は、父親の若い頃にそっくりだとよくかーちゃんも言っている。虎王の母親も俺が誰か分かったのだろう。
「眞壁士龍です。…………たけおとは、同じ学校なので」
「え…………そ、そうなの……」
複雑そうな顔をしながらも、ハンカチでとまらない涙を拭いながら俺を見返す。
「とーちゃん。明日までに、お金払うよね?」
拳をぎゅっと握り、俺は父に詰め寄った。
途端に、虎王の母親がうわああっと泣き出した。
「士龍。金は払えない。ここでもし払って虎王が戻ってきたとしても、これからずっと奴らに脅され続けることになる。病院のことを考えると、そんなわけにはいかない」
俺は父から聞いた言葉のあまりの衝撃に表情を固めた。
確か手紙の内容だと、金を払わなかった場合はどうなるんだっけ。
殺されて、臓器を売られるんだよな。
ああ、虎王の母親は、このことを嘆いていたのだ。
「じゃあ、警察には?」
なら、警察に言わなきゃいけない。
警察に話して、取り戻さなくちゃ。
「息子がクスリをやってたなんて、あまりに風評被害だ。警察に通報して公にするようなことはできない」
苦渋を浮かべて言う父の言葉に、俺は全身を凍らせた。
そこには愛情は見えなかった。
虎王を信じてもいない。ただ、できないと諦めの言葉しかない。
虎王はクスリをやっている気配はなかった。
もし俺と別れたことで自暴自棄になってクスリに手を染めて暴れたとしたって、親なら全部自分の責任だと、受け止めてやるべきだろう。
病院が大切なのは、わかる。
そこで働く人もいて、自分の息子のせいで路頭に迷わすことができないことも。
彼が考えそうなことは全部把握できる。
あなたは、もう、欲しくないのかな。
だったら、俺が欲しいと言っても、許してくれるよね。
あなたが何より大切だと彼を想っていると考えたから、俺は諦めたんだから……。
いらないなら……許してくれるよね。
俺は、手にした脅迫状をグッと握った。
「……虎王はヤクザに捕まって、身代金を請求された」
「すぐ警察に通報……ッ」
スマホを取り出そうとする腕を、ぐいと強く父に掴まれた。
「いいから中を読め」
俺は言われたように取り出し他紙を開いて、印字されている文章を読む。
内容はいわゆる、脅迫文である。
虎王がクスリを使ってラリって海東組の組員を傷付けたので、落とし前として明日までに一千万円払わなければ、殺して臓器を売り払う。
警察に通報すれば息子がクスリをやっていたことが公になるので困るだろうと、しっかり二段構えで強請りと脅しをかけている。
封筒の消印を見ると、一昨日の日付になっている。
到着は昨日だとして、まだ金を払っていないのだろうか。
払う金がないわけはないのは知っている。
「貴方、この子は?……まさか、もしかしてアナタが眞壁さんの……」
虎王の母親が俺の顔を見てハッとしたような顔をする。
俺の顔は、父親の若い頃にそっくりだとよくかーちゃんも言っている。虎王の母親も俺が誰か分かったのだろう。
「眞壁士龍です。…………たけおとは、同じ学校なので」
「え…………そ、そうなの……」
複雑そうな顔をしながらも、ハンカチでとまらない涙を拭いながら俺を見返す。
「とーちゃん。明日までに、お金払うよね?」
拳をぎゅっと握り、俺は父に詰め寄った。
途端に、虎王の母親がうわああっと泣き出した。
「士龍。金は払えない。ここでもし払って虎王が戻ってきたとしても、これからずっと奴らに脅され続けることになる。病院のことを考えると、そんなわけにはいかない」
俺は父から聞いた言葉のあまりの衝撃に表情を固めた。
確か手紙の内容だと、金を払わなかった場合はどうなるんだっけ。
殺されて、臓器を売られるんだよな。
ああ、虎王の母親は、このことを嘆いていたのだ。
「じゃあ、警察には?」
なら、警察に言わなきゃいけない。
警察に話して、取り戻さなくちゃ。
「息子がクスリをやってたなんて、あまりに風評被害だ。警察に通報して公にするようなことはできない」
苦渋を浮かべて言う父の言葉に、俺は全身を凍らせた。
そこには愛情は見えなかった。
虎王を信じてもいない。ただ、できないと諦めの言葉しかない。
虎王はクスリをやっている気配はなかった。
もし俺と別れたことで自暴自棄になってクスリに手を染めて暴れたとしたって、親なら全部自分の責任だと、受け止めてやるべきだろう。
病院が大切なのは、わかる。
そこで働く人もいて、自分の息子のせいで路頭に迷わすことができないことも。
彼が考えそうなことは全部把握できる。
あなたは、もう、欲しくないのかな。
だったら、俺が欲しいと言っても、許してくれるよね。
あなたが何より大切だと彼を想っていると考えたから、俺は諦めたんだから……。
いらないなら……許してくれるよね。
俺は、手にした脅迫状をグッと握った。
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