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4 【完結】
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「.....ずっと前から覚悟して決めてたのに、全部なかったことになった」
ぼんやりとした表情のまま腕の中で呟く巴弥天に、乗り出すように太平は顔を近づける。
「ずっと前ってな.....、全然気づけないでゴメン」
「バカだな。俺が太平に気づかせるなんて、下手を打つわけないだろ」
ドヤ顔で言葉を返す巴弥天に、太平は不満げに唇を尖らせて頭を巴弥天の肩に載せる。
「もうそんな悲しいことばっか、先に考えたりするなよ。同じ人生なら、愉しく生きた方が得だろ」
「.....俺は危ない石橋は叩かず、渡らない方針なんだ」
君子危険に近寄らずだからなと告げる巴弥天の額を指先で弾く。
「昔杞の国の男が、空が落ちるんじゃねえかって考えるアレだろ。でも空は落ちねえし、死なば諸共。どうせ死ぬなら、最期の一瞬まで笑ってた方が勝ちなんじゃねえの」
告げた太平の脳天気な言葉に、巴弥天は細い目を大きく見開いて、ふっと唇を緩める。
「勝ち負けじゃないんだけどな」
肩の上に載る頭の重みに、笑みを深めながら太平の茶色くふわふわした髪を撫で梳く。
「でも、太平に言われると、そんな気がしてくるから、不思議だよ。そういう太平の性格にすごく惹かれたのに、離れることばかり考えてて、すっかり忘れてた」
いつだって太平は前向きで、ここの生活に慣れなくても新しい楽しみを見出そうとしてた。
最終的に彼女に振られて自棄にはなって脱走しようとしていたけど。
「折角の高校生活最期の時間を、無駄なこと考えて使っちまってたな。でもその分、これからの新しい時間、巴弥天と幸せに過ごすから、期待しとけよ」
巴弥天は太平じっと見つめ返すと、その腕をギュッと握る。
「ムリはしなくていい.....」
「だから、俺がしてえの」
引き気味の巴弥天へ、太平は遠慮ばっかりしてんなと呟くと、俺に期待してと告げて鼻先に唇を押し当てた。
「全然荷造りしてないとか、バカなのか」
寮の退室日だというのに、全く荷物をまとめてないと焦ってダンボール箱に衣服を詰めている太平に、巴弥天は呆れながらも、備え付けの家具からダンボール箱の中に太平の生活用具を入れるのを手伝う。
「すっかり抜けてた」
「昨夜言ってくれりゃ、さっさと手伝ったのに」
ブツブツと文句を言いながら、巴弥天は素早い機動力でダンボール箱を次々に埋めていく。
「昨日は、ほら、ピロトークとか大事だし」
「大体、太平は後先考えて動かなすぎるんだよ……ホントに心配になる。ちゃんとこれからひとり暮らしできるのか」
肩をそびやかしてガムテープで封をして、きっちり荷造りをしている巴弥天の背中を見やり、太平は自信なさげに笑う。
「料理もできないし、実は不安だけど。まあ、電子レンジあれば、大体問題無いよな」
カップラーメンも沢山種類があるしと続けた太平に、巴弥天は半眼を向けて、はああと大きく息を吐き出す。
「.....次の賃貸更新の時は、引き払って俺のとこにこい。卒業までは、面倒見てやるから」
巴弥天が発した言葉に、太平はばっと顔を輝かせてやったあと言って抱きつく。
「ハヤテ、マジか!?なんなら、すぐ引き払うけど!」
「バカ。引き払うも何も入居してないだろ。敷金礼金とかもったいないだろ」
「キャンセルするし。俺、ハヤテのうちの子になる!」
わしゃわしゃと嬉しそうに頭を振り乱して擦り付ける茶色の髪を撫でて、目を伏せる。
変わらないものなどない。
それは、多分これからもその先も変えられない気持ちだ。
だけど、変わっていく事象の中で、信念さえあれば。
ただ、思い続ける気持ちが互いにあれば、消えることはないだろう。
色即是空。
変わるすべての景色を、二人で歩みたいと互いに願うならば。
ぼんやりとした表情のまま腕の中で呟く巴弥天に、乗り出すように太平は顔を近づける。
「ずっと前ってな.....、全然気づけないでゴメン」
「バカだな。俺が太平に気づかせるなんて、下手を打つわけないだろ」
ドヤ顔で言葉を返す巴弥天に、太平は不満げに唇を尖らせて頭を巴弥天の肩に載せる。
「もうそんな悲しいことばっか、先に考えたりするなよ。同じ人生なら、愉しく生きた方が得だろ」
「.....俺は危ない石橋は叩かず、渡らない方針なんだ」
君子危険に近寄らずだからなと告げる巴弥天の額を指先で弾く。
「昔杞の国の男が、空が落ちるんじゃねえかって考えるアレだろ。でも空は落ちねえし、死なば諸共。どうせ死ぬなら、最期の一瞬まで笑ってた方が勝ちなんじゃねえの」
告げた太平の脳天気な言葉に、巴弥天は細い目を大きく見開いて、ふっと唇を緩める。
「勝ち負けじゃないんだけどな」
肩の上に載る頭の重みに、笑みを深めながら太平の茶色くふわふわした髪を撫で梳く。
「でも、太平に言われると、そんな気がしてくるから、不思議だよ。そういう太平の性格にすごく惹かれたのに、離れることばかり考えてて、すっかり忘れてた」
いつだって太平は前向きで、ここの生活に慣れなくても新しい楽しみを見出そうとしてた。
最終的に彼女に振られて自棄にはなって脱走しようとしていたけど。
「折角の高校生活最期の時間を、無駄なこと考えて使っちまってたな。でもその分、これからの新しい時間、巴弥天と幸せに過ごすから、期待しとけよ」
巴弥天は太平じっと見つめ返すと、その腕をギュッと握る。
「ムリはしなくていい.....」
「だから、俺がしてえの」
引き気味の巴弥天へ、太平は遠慮ばっかりしてんなと呟くと、俺に期待してと告げて鼻先に唇を押し当てた。
「全然荷造りしてないとか、バカなのか」
寮の退室日だというのに、全く荷物をまとめてないと焦ってダンボール箱に衣服を詰めている太平に、巴弥天は呆れながらも、備え付けの家具からダンボール箱の中に太平の生活用具を入れるのを手伝う。
「すっかり抜けてた」
「昨夜言ってくれりゃ、さっさと手伝ったのに」
ブツブツと文句を言いながら、巴弥天は素早い機動力でダンボール箱を次々に埋めていく。
「昨日は、ほら、ピロトークとか大事だし」
「大体、太平は後先考えて動かなすぎるんだよ……ホントに心配になる。ちゃんとこれからひとり暮らしできるのか」
肩をそびやかしてガムテープで封をして、きっちり荷造りをしている巴弥天の背中を見やり、太平は自信なさげに笑う。
「料理もできないし、実は不安だけど。まあ、電子レンジあれば、大体問題無いよな」
カップラーメンも沢山種類があるしと続けた太平に、巴弥天は半眼を向けて、はああと大きく息を吐き出す。
「.....次の賃貸更新の時は、引き払って俺のとこにこい。卒業までは、面倒見てやるから」
巴弥天が発した言葉に、太平はばっと顔を輝かせてやったあと言って抱きつく。
「ハヤテ、マジか!?なんなら、すぐ引き払うけど!」
「バカ。引き払うも何も入居してないだろ。敷金礼金とかもったいないだろ」
「キャンセルするし。俺、ハヤテのうちの子になる!」
わしゃわしゃと嬉しそうに頭を振り乱して擦り付ける茶色の髪を撫でて、目を伏せる。
変わらないものなどない。
それは、多分これからもその先も変えられない気持ちだ。
だけど、変わっていく事象の中で、信念さえあれば。
ただ、思い続ける気持ちが互いにあれば、消えることはないだろう。
色即是空。
変わるすべての景色を、二人で歩みたいと互いに願うならば。
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