異世界極道 ~ドタマ弾かれたら勇者になりました~

怜悧(サトシ)

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意識が戻ると牡丹の彫り物からの熱も収まり、身体も綺麗に拭かれて薄手の寝巻きを着せられていた。
何度起きてもオレの知っている風景ではなく、同じこの夢の中でしかない。
考えたくはないが、もしかして本当に訳の分からないこのファンタジー世界に召喚されたのだろうか。
「目が覚めたか、サーガ」
声をかけられ、カッとして身体を起こしてぶん殴ろうと腕をひくが、びりびりと脳みそが痺れて体が動かなくなる。
「.....サーガじゃねえ。佐賀だ」
ようやく声を出し、殺意を沈めるとようやく身体の自由がきく。
相手の言葉はわかるが、やはりオレの言葉は通じないのか王子は眉をしかめている。
「サーガ、身体の具合はどうだ」
尋ねる様子に昨夜のような態度はなく、何故か反省しているような様子である。
コイツが気を失うまでオレを抱いていたのは覚えているが、そのつもりはなかったのだろう。
大丈夫だと伝える術がなく、オレは胸元を軽く叩いて見せた。ボディラングエッジだか、そんなんだったかな。
学はないので、よく分からない。
「そうか、良かった。私も我を忘れてしまった。そなたは、私の言葉が分かるのか」
問いかけに頷きだけを返して、話すことは出来ないと自分の口を指さして首を横に振る。
「分かるのであれば、練習すれば話せるようになるだろう。そなたは、選ばれた勇者なのだ。魔王を倒すのにコミュニケーションは大切だ」
紫色の目を向けて、王子は真摯な表情をする。
確かに昨日はオレも気がたっていて話はしたくはなかったし、いまは誓いのこともあり殺意を抱くだけで、力が入らなくなることが分かった。
なるほどな。意味は頭に入ってくるのだから、真似して言葉を出せばいいだけのはずだ。
「練習は、する.....。魔王は、倒す」
王子の言葉から単語を選びながら口にすると、王子はふっと表情を緩めて笑みを浮かべた。




「サーガ、剣の稽古をしよう」
何だか豪華な料理を食べた後に、王子はオレに大剣を差し出して握らせる。
絶対にぶち殺してやると思っていたが、懐かれるとなんとなく悪い気はしない。
「剣より、刀がいい」
希望を口にしたが、刀は無いのか首を捻られた。
まあ、日本刀とは違うかもしれないがなんとかなるか。
「サーガには誓いの戒めがあるから、戦闘相手はできないけど、扱い方なら教えられる」
王子に連れられて裏庭に出ると、かかしのような木偶の坊が、沢山並んでいた。
動かないものを切ってもつまらないなと思うと、木偶の坊はふわりと浮いてこちらに襲いかかってくる。
魔法か。
「私はパラディンだからね。神聖魔法は使えるのだよ」
王子は、にこりと笑うとオレの頭を叩きわろうとするように木偶の坊が持っている木槌を打ち下ろそうとしてくる。
「ハッ、こんなもんは怖くはねえよ」
剣を構えて体をひねると、木偶の坊を交わして背後から真一文字にばさりと斬りおろす。
バサッと木偶の坊は地面に落ちて動かなくなる。
「さすが勇者だね。初めから最強じゃない」
王子は心強いといいながら、3体の木偶の坊を浮かせて、まだまだ、やられないでねと呟くと一斉に攻撃を仕掛けてくる。
扱い方教えてくれるんじゃなかったのかよ。
「ハッ、こんなのはウゼエだけだ。あんまり無駄なことさせるな」
面倒だとイラつきながら3体を次々に切り倒して、木偶の坊を地面に沈める。
「すごい強い。これなら魔王に太刀打ちできる。魔法は使えないのか」
んなもん使えるわけねえだろ。
「使えない」
剣の握りを確認しながら、オレは王子をちらと見やる。
「でも、牢は魔法で開けたよね。魔法痕が残っていたから」
「使えない。開いたから出ただけだ」
まだカタコトの言葉で返すが、確かにあの時は手が何だか分からない光で光ったのを思い出す。
「無意識か。魔力はそなたから感じるから、きっと覚えれば使えるようになるよ」
明るい笑顔で言われて、オレは何故か頷いていた。
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