斬り裂くのは運命と識れ【完全版】

怜悧(サトシ)

文字の大きさ
13 / 28

13

しおりを挟む
辛そうな癖に強がってんじゃねえよ。
 部屋の中は所狭しと美術品が並べられていて、桑嶋は現状把握のため部屋のデータをまず保存する。そして次々に証拠データを取り込む。
 美術品の横流し密輸となればかなりの罪状である。全てのデータを取り込み、小型端末を片手に部屋の中のものを最初のデータ位置どおりに戻して、と、胸元へと押し込んで部屋外に出て扉を閉じる。
 これはかなり大掛かりな組織の密輸に間違いない。
 彼が就任してからの摘発件数は、就任前の3倍である。いままで何をしていたのかと局長の立場もあやうくなりかねないが、きっと総監ぐるみでうまくやるのだろう。
 桑嶋が前の部屋に戻ると統久は、先ほどの位置でうずくまったまま動きを止めているようだ。
 荒い呼吸音が静かな空間に響き渡る。
 まさか、こんなところにこの状態で置いていけないよな。
「周期、ズレないんじゃないんですか」
 声をかけながら、桑嶋はゆっくりと近寄ると、首を何度も振って統久は、手足をガクガクと震わせる。
 くそ……朝から、歩弓が……居たせいだ。我慢の限界もあったが、当てられすぎて、狂った……。
「……環境が変わったばかりだからかな。案外、繊細なん……だ。つか、おい、馬鹿、セルジュ、コッチくンな」
 額に粒のような脂汗をかきながら、なんとかいつもの自分を取り戻そうと引きつった笑いを浮かべる彼が、桑嶋には、いつになく心許なく思えた。
 桑嶋は、どうにか体を支えて脱出しないといけないと思い近づくと、統久は身をよじって逃げようと壁の隅へと後退る。
「まあ、明日から休暇とってくださいよ」
 桑嶋は流石に巨体は担げないなあと思いながら、統久を追い詰めて腕を引き肩に載せようとすると、バンッと音がするほど大きな動作で振り払われる。
「じ、自分で歩け、る……から……さき、いって、くれ」
「無理ですって、そんなんで立ててねえじゃないすか。しかも、そんなにおい撒き散らせて、外に出れても犯されるだけですって」
 呆れたような表情を浮かべる桑嶋を、ギリッと統久は睨み上げる。普段はしないような威嚇を含んだ彼の表情に、桑嶋はぞくりと背中が震えた。
 まるで、手負いの獣かよ。
「かまわん。……オマエが………ちかよるし………さわる、からだ。……りせいが……なくな……る……、これくらい……いつもなら……おさえられ、んのに」
 押し出す声が震えていて、統久からはいつもの人を食ったような表情はなくなっていた。
 切れ長の目が潤んで求めているかのように見えて、桑嶋は生唾を飲み込み、振り払うように軽く首を横に振った。
「かまわんってな。アンタ輪姦されてもかまわないのか。ホント、節操ねえな。流石にオレも上官が輪姦されるのを、見捨てられねえんで。ソレ期待してるなら……悪いんですけどね。ちょっと寝といてください」
 桑嶋はポケットからスタンガンを取り出して、統久の首元に押し当てて放つ。ビリビリッと音がして、目を見開いた統久は体をビクッビクッと痙攣させて気を失った。
 桑嶋は、自分より上背のある統久をなんとか担ぎああげてなんとか搭乗口へと向かって船を下りる。

 それにしても発情期ってのは、こんなにも人を変えちまうもんか。そりゃ、こええよなあ。
 
 このクソでかい無骨な男を、色っぽいとか思うだなんて、な。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

白銀の城の俺と僕

片海 鏡
BL
絶海の孤島。水の医神エンディリアムを祀る医療神殿ルエンカーナ。島全体が白銀の建物の集合体《神殿》によって形作られ、彼らの高度かつ不可思議な医療技術による治療を願う者達が日々海を渡ってやって来る。白銀の髪と紺色の目を持って生まれた子供は聖徒として神殿に召し上げられる。オメガの青年エンティーは不遇を受けながらも懸命に神殿で働いていた。ある出来事をきっかけに島を統治する皇族のαの青年シャングアと共に日々を過ごし始める。 *独自の設定ありのオメガバースです。恋愛ありきのエンティーとシャングアの成長物語です。下の話(セクハラ的なもの)は話しますが、性行為の様なものは一切ありません。マイペースな更新です。*

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

処理中です...