斬り裂くのは運命と識れ【完結編】

怜悧(サトシ)

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「と、言うわけで番は解消してくれ。セルジュ」
 病院から退院して新居に帰ってきた途端に告げられた言葉に、セルジュは目を白黒させて意味がわからないと首を振った。
 手足の筋肉はすぐには戻らないようで、リハビリで自分で歩けるようになったばかりである。
 こんな状態で番を解消とかありえないし、危険すぎる。そもそもセルジュにはそんな気持ちはまったくなかった。
 どうしてこの人は、こんなに一方的なんだろう。
「全然わかんねえ。何が、どうして、と言うわけなの」
 統久はソファーの上で軽く伸びをして、腕の感覚を戻そうと軽い上下運動をずっと続けている。
 大事なことを、何かのついでのように話されるのがセルジュには酷く腹立たしかったが、向き直って話すのが怖いのかもしれないと思い直す。
「俺には、もうオマエの番でいる資格がない」
 行方不明だった半年間の話は、セルジュも統久と歩弓からすべて聞かされた。
 統久は必死に隠蔽を薦めたが、歩弓は自白をして辞職をした。
 被害者である統久が起訴を求めていないこともあって、反政府組織への関与の罪のみで、執行猶予がついた刑で済んだ。
 とはいえ、総監の息子であり現職のエリート警官が罪を犯したことや、兄弟で運命の番だったことなどメディアに取り沙汰され、歩弓の社会復帰は難しいだろうと言われている。
 当然だが、彼の新婚の妻とは離縁となり実家に引き取られていった。
「あのね。オレはアンタが局長を支えたいとか思ってるのは分かってるし、それでも構わないと思ってる。だけどね、オレから離れるのは絶対に許さない」
 そういう問題ではないのだと、統久はセルジュの言葉に首を横に振って俯いた。
「オマエも医者から聞いただろ?……俺に言わすのか。俺の子宮は、番以外の精液を何度も注がれて不能になっちまった。もう、オマエの子供を産んでやれない。だから……解消してくれ。きっとオマエには、ちゃんとオマエの子を産める人が現れるから」 
 はあと深い溜息をついて、そろそろ臨月を迎えるであろうその腹部の膨らみを、手を伸ばしてそっと撫でる。
「この子供どうすんだよ。一人で育てるのか」
 決意は固いのか、統久は腹部にあるセルジュの手を弱弱しく握りこむと、真っ直ぐな視線を返す。 
「ああ……俺が育てる」
「発情期はどうするんだ。クスリ、効かないだろ」
 クスリを飲んでいた母親でさえ、あんなに酷い状態だったのだ。きっと、番もいなくなれば、その身体への負担は尋常ではなくなるはずだ。
 その苦しさを味わったはずなのに、何でそんな風に全部背負い込もうとするんだろう。
「なんとか、なる。なんとか、するから。……辛いんだ、オマエの顔がちゃんと見れない」
 視線を伏せたまま、首を何度も振って苦しそうな声を出した。
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