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怜悧(サトシ)

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絹の艶を含んだような美しい髪の線がしっとりと濡れた肌に纏いつく。
美しい肢体を絡めてぐぷっぐぷっと体液の水音を響かせ、貪りつくすように腰を揺らすこの男があの英雄とはルイツには思えなかった。
腰を掴んで思い切り奥まで穿つと、ぶるぶると胎内を震わせ、形のイイ唇が緩んで甘い声をあげる。
「…ァ…ぁああ…ッうう…ンンっ、ハァ…ああああ、イイ……」
せがむように腰をくねらせて、背筋を撓ませる様に欲情を煽られて堪らない。
普通の女より扇情的で、そして常習性の薬物のようにしみこんでくる快感の波にさらわれそうになる。
これが呪いだというのなら、これが不死の代償だというのなら、なんて残酷なことだろう。
「く……ぁあ…ぁあ、あああ、ああっ…ひ…ううう」
咽び泣くような声をあげ、いつもの鋭い視線も、人をからかうような表情もまったく消えてしまう。
快感にすっかり蕩けてしまったように、ガイザックは宙を見上げて顎先からも涎を零して身悶えている。
ざまあないと自嘲した言葉も、ルイツは今になってその意味が分かる。
これだけ壊れてしまうことを分かっているのならば、それをよしとしないならば。
どうしてもそんな風に自分で言ってしまいたくなるだろう。
追い上げるように体の動きを早めて、ガイザックの両脚を掴んで開き結合を深めると腰の動きを大きく乱暴なものにする。

「ヒッ…ぁあああッ…アア…ッあああ…くうう」

少しでも早く、この人を救ってやりたい。
この苦痛を和らげることができるのなら……。
憧れだけじゃない。
それだけじゃないものも生まれてきている。
だけど……。
ルイツは搾り取るような肉の圧迫を加えながら、官能的な表情を浮かべて達するガイザックの腰を押さえつけてドクドクと体液を注ぎ込む。

ひくひくと痙攣するからだと、快感と充足感に緩んだ表情を浮かべるガイザックを見つめてルイツはそっと結合を解いてその体を抱きしめた。

「もう……ムリすんじゃねえよ……」

ガイザックは、その言葉も聞こえているかどうか分からない様子で、ぐったりと寝台に身を沈めて目を閉じた。



ルイツが目を覚ますと、既に隣にはガイザックの姿はなかった。
昨夜のガイザックの乱れた姿を思い出しただけで、下肢が熱くなりそうだった。
今まで拒んでいた自分が、何にこだわっていたのかすら分からなくなりそうな気分にルイツは眉をギュッと寄せて、寝台から起き上がってふっと息を吐き出す。
なんだか、長い夢を見ていたような、現実感がまったくわかない。
抱いたからだの感触も、充足感もすべて現実だと認識できるのにだ。

わかったことは、ある。
確かに、今、俺はあのひとに惹かれているということ。そして、それは、憧れとかではない別のものであるということだ。

「絶望的にかなわないもんだけどな」

思わず苦笑まで浮かんでくる。
相手はそれをよしとしていないから、悪魔の棲む場所までいこうとしているのだろう。
腰をあげて寝台から降りると、散らばっている衣服を身に着ける。
起きてすぐに顔をあわすつもりはなかったのか。
かなり疲労しているだろうに。
朝まで寝台にいられなかったガイザックのキモチを計り、どんな顔をして最初に顔をあわすべきかと思い悩んで天井を見上げた。

「お。ルイツ、おきてたかァ」

ギイッと扉が突然開いて、明るい表情のガイザックが爽やかそうな声で入ってくる。
昨日の姿は露ほども感じさせない。
「……まあ、今起きたばっかッスけど」
相手の嘘のようにすがすがしい様子に深く考えただけ損したかなと思い、ルイツはほとんど逆恨みのような気分でガイザックを見返した。
「くっく、流石にオツカレだったか。俺も水浴びしたくてさ、先に起きちまったけど」
ガイザックはニッと唇をあげた笑い浮かべて、つかつかと寝台近くへ歩み寄り荷物を肩にかけながら、ルイツをかえりみる。
「ばあさんが、朝飯作ってくれたから食いにいこう。オマエのお陰で体の調子が良くてさ、すぐにでも出立したくて仕方がない」
「へーへー。それは、お役にたてて光栄でございますー」
まったく以前と様子が変わらないことに、ルイツは拗ねたような表情を浮かべて自分の荷物も引っつかんで、剣を脇に挿す。

「……ホント、感謝してんだぜ」

耳元で囁き、ちゅっと耳たぶに口付けをすると、反応をうかがうように背後から覗き込み、いたずらっぽく笑いながら、部屋を出て行くガイザックの背中に向けて、ルイツはぎりぎりと歯軋りをしながら、追いかけた。
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