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怜悧(サトシ)

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むせかえるような花の薫りが、深い眠りを妨げるのに薄目を開くが不快感に反してそれ以上の身動きがとれずにガイザックは低く唸る。
唇を開こうにも身体が痺れてしまって感覚がなく、浮遊感が全身を満たしている。
幽体離脱でもしているような感覚に、薄暗い視界をさまよわせる。
「起こしてしまったかな。不安にならなくていいよ。これから君は我が聖母の導きにより、美しき世界へ旅立つのだから」
声をかけているのは、神父だろうか。顔まではっきりしない。
そこは閉じ込められた部屋ではなく、聖母像のある礼拝堂の祭壇上のようである。
ガイザックはまるで供物のように横たえられていて、身体はすっかり全裸にされているし、逃げないとまずいなとは思うのだが、身体はびくりとも動かない。
かけられた呪いのせいで不死の身体のため、生命の危機とは思わないが、別に残された年若い弟子のことが心配だった。
礼拝堂の中には、他に20人ほどの人の気配があった。
村ぐるみでの蛮行か。
死にはしないだろうが、あまり良い気分になるようなこともされないだろう。
「今回の旅人は若く美しい。きっと聖母様もお喜びになられる」
一様に異様な儀式めいた様子で、頭の上に手を組んで祝詞を唱え始める。
「この地を守る聖母よ、我らの供物をお受け取りたまえ」
神父が天に指先を翳すと水晶の聖母はキラキラの周りを囲む炎の光を吸収して煌めき、目元から露をハラハラと流し始める。
その露を神父は葉の器で受け止めて、ガイザックの唇へと流し込む。
甘ったるい液体がなんの代物かは分からなかったが、脳まで痺れていくような心地に、いよいよ危機感が増してくる。
聖母像の設置された背後の壁から、ゆっくりと太い蔓が伸びてくると、動けないガイザックの身体に巻き付いて全身に絡みつく。
肌を這う蔓には小さな棘があり、肌にひっかかるように食い込む。
く、われる、のか。
呪いで死ねないとは言えど、食われたらどうなるのだろう。
このまま、しね、るのか?

死を選ぶことすら許されなかった日々に終止符が打てるというのか。
甘い期待に、ガイザックは目を伏せた。
それなら……そ、れで、かまわねえかも、な。
棘から体内に注がれる液体は飲まされたものと同じものだろうか。全身がじんじんと熱くなっていく。

「さあ、聖母と共にみなで宴を享受いたしましょう」
神父の号令と共に、村人たちは一斉に衣服を脱ぎ捨てた。


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