秩序の楼閣

怜悧(サトシ)

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「スベク、それって.....かなり悲惨な話だよね」
荒んではいなそうな鹿狩の様子に、どんな神経をしているのかと顔を見返す。
ここに来ても絶望すらみせないのは、そもそも希望を持っていないからか。
「俺は自分を許せないし、許す気はない。断罪されるのならば、何でも受けて立つ」
ここに来たことを断罪だと受け入れているから、だから理不尽さにもへこたれることがないと言うのだろうか。
ザナークは、困惑したように鹿狩を見つめた。
強靭すぎる精神だが、それは、こいつ自身を追い詰めているのではないか。
「仕方ないだろ、オマエは抑制剤効かないし、運命の番なら、その誘惑に抗えるわけが無い。お前の責任は無いよ」
よしよしとその艶やかな黒髪に触れて撫でると、鹿狩はすっと心地良さそうに目を伏せる。
「弟は、まだ12歳だった。.....純粋だったのに、俺が穢してしまったんだ」
「もっと、緩く生きなよ。スベク。自分を大事にしろよ…...大丈夫、きっとガッチリ体型のオメガでも需要はあるはずだから」
励ますように告げるザナークに、鹿狩は安堵した表情で頷き端末を置いた。
「お前は優しい男だな。ザナーク。感謝する。」
「うーん、スベクは、話し方も堅いんだよね。もっとラフになりなよ。俺の真似していいからさ」
疲れ切っている鹿狩にザナークは、ありがとうでいいんだと呟いた。
「スベクは、オメガがどんなものかを知った時は絶望しなかったのか」
「しなかったな。.....面白いと思った」
とんでもないことを言いながらねむたいと軽い寝息をたてはじめる彼に、ザナークは自分との違いを見せつけられて、軽く頭を指で弾く。

「ホントに理解できねえな、アンタのことは」



翌々日、発情期が来たザナークは看守に連れていかれてしまったので、鹿狩は1人房に残された。
端末のシステムは既に攻略して支配下に置いたので、そこから探れるサーバーへとアクセスをする。
この施設が裏金を作っていることや、経済界への癒着があることは、看守たちの言動で明らかだ。
遠野まで噛んでいるのは、厄介だな。
あの執着ぶりならば、どうにか遠野を誘惑することも可能かもしれない。
外部通信をハックして、友人へとアクセスをすると要件を伝える。
とりあえず、裏をとりきらないとシラを切られたら元の木阿弥だ。
一通りの作業を終えると、鹿狩は何冊か本を端末に入れて読み始める。
看守から週に1度講義があり、今後の身の振り方についての職業訓練の実習があると言われている。
ザナークが言うには大体が風俗か何かに売られるというので、性的な実演が多いらしい。
遠野も講義がどうこう言っていたしな。
発情期の飢えもなく、抑制剤を手に入れための金も入るうってつけの職業である。
短絡的だけどな。
しかし、皆はアルファに気に入られて後見を得るのを必死に狙う。アルファに抱かれれば、通常よりも早く発情期は終わるらしい。
番となれば、1度抱かれれば収まる。
誰だって苦しいのは、続きたくないだろう。
生殖のための性とはよく言ったものだ。
前回は、運命の番の相手に抱かれたから、すぐに収まった、今回もアルファに抱かれて3日と短かった。
普通ならば、1週間は続くと言われる。
あんな状態を1週間続けたら、おかしくなってしまいそうだ。
発情期に慣れる頃には、大抵のオメガがセックスのことしか考えられなくなるらしい。
「俺もどうなるか分からないということだな」
独りごちで、ゴロッとベッドに横たわると、鉄の扉が開いてガラガラとストレッチャーが運ばれてくる。
「ーーっ、あ、ひっ、ひい、あああ、たひゅけて、あ、ああ、ああ、からら、あひゅ、いいい」
拘束された体を捩り明らかに異常な様子で、ザナークは声をあげている。
「どうした、んだ」
鹿狩は慌てて立ち上がり看守に問いかけると、看守は首を横に振った。
「ゲストに発情期なのに、薬を使われたらしい。抑制剤を打ったが.....かなり衰弱している」
ザナークの唇から白い泡が吹き出し、懇願するように腰を掲げる。
「なんとか、出来ないのですか」
「抑制剤と鎮静剤は、副作用を起こすしこれ以上薬を使うのは危険だ」
身体はリミッターが外れてしまっている様子で、掠れた悲鳴だけが響く。
鎮静剤が効かないならば、これ以上活動させたら衰弱死する。
鹿狩は、痙攣しながらも刺激を求めて鳴くザナークの鳩尾に拳を叩きつけて意識を奪った。
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