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「独善であそこまで出来るか」
偽造IDを通して宇宙船に乗り込むと、シェンは送り出した上司のことを考えつつ個室へと入る。
危険な任務だとわかる。経歴を考えれば、このコロニーの部隊には自分ぐらいしか適任はいないことも分かる。あらかじめ目星をつけて動いてはいるのだろう。
誰かを救いたいといったお為ごかしは言わなかった。
ただ自分が前に進みたいとだけ。
自分たちを裏切って見捨てたくせに、報奨を受け取ろうとした上司をオレは殴って謹慎処分にされた。
そんな奴とは、あの男が違うことは分かっているのに、感情のどこかが拒否している。
命じるだけの能力がない奴とは違う。
きっとこの潜入も、奴がオメガでなければ自分でやっていたことなのだろう。
「成功報酬もあることだし。別に悪い話じゃない、しかも報酬は全部アイツの身切りだしなあ」
ひとりごちで外を眺めて、データを再確認すると一読してからデリートする。
証拠はすぐに消し去るのが潜入の鉄則である。
「まあ、終わった後のお楽しみのために頑張りますか」
「へえ。シェルは、中央が出身なんだ。こんな大企業でも辺境だから不安だよね」
本日入社の社員は集められて、説明を受けているが赤茶の髪の人懐こい男がシェンに声をかけた。
偽造IDの名前はシェル·イライズ。
最初の発音が本名に近いだけ間違うことも少ないだろうという配慮だろう。
「ああ、恒星が近いから驚いた」
自分の偽のプロフィールはしっかり頭に叩き込んである。不審がらせずに、目立たずに味方を増やすのが潜入の鉄則である。
「紫外線もきついしね。イヤになるよな。まあ、この運輸会社はかなりいい給料だから、つられてきたんだけどね」
話半分に聞きながら、入社の説明が終わったことを確認して、説明した男に手をあげて質問する。
「よく運ぶ品物はなんですか」
麻薬のシンジケートが運輸業とかホントにありえないくらいわかりやすいだろう。
「冷凍肉かな。腐ったら最後だ。こころして運ぶようにな」
速度と正確さ。
上に信用されるためには、成果をさっさとあげなくてはならない。
「シェル、すごいな。この地域で一番速いよな」
地域の地図は叩き込んでいて、最短距離で届けられるようにシュミレーションも何度も脳内で組んだので完璧である。
同僚に成績を覗かれて声をかけられる。
「たまたまだよ」
シェンはそんなことあるはずないだろと、胸の内でツッコミつつも処世術よろしく笑顔を向ける。
潜入するには味方を沢山つくらないといけない。
猜疑心や嫉みそねみは、それだけで捜査の成功率が下がってしまう。
「オレは結構配達迷うんだよね。なんかコツある?」
「ってもナビゲーションあるからな。迷わないだろう」
ナビゲーションどおりになど時間がかかって仕方がないから、ショートカットはみなしているとは思うが。
「近道行ったつもりが遠回りとか」
「あー、あるあるだよなあ。届け先も数こなすと決まってくるからな。大体覚えるだろ」
「シェルはすごいな。後で近道教えてくれよ」
人懐こい言葉に、爽やかに笑顔を返してお安い御用だよと答えると、軽く手をあげて自分の配達機に乗り込もうとすると、ぐいと腕を引かれて振り返る。
まだ。なんか用か?
いい加減ウザったいなと思わず顔を顰めると、薄毛の中年の顔にぶつかり息を飲んだ。
資料に載っていた幹部の一人だ。この地域の支部長グラン·ノイタールだったか。
「何か?」
いきなり支部長を知っているのも変な話なので、訝しむ表情をつくり、忙しい風情を醸し出してさっさと機に乗ろうと装う。
餌に食いついたか、これで釣れたかな。
内心では焦るなと何度も繰り返す。
「君はシェル·イライズ君だね」
「そうっすけど」
「私はノイタール。この支部の支部長をしている。君の腕を見込んで頼みたい仕事があるのだが」
シェンは眉を寄せて言っている意味が分からないとばかりに首を傾げてみせた。
「普通の業務じゃなくて、業務外っすかね」
「成功報酬は約束しよう。話を私の部屋にきなさい」
偽造IDを通して宇宙船に乗り込むと、シェンは送り出した上司のことを考えつつ個室へと入る。
危険な任務だとわかる。経歴を考えれば、このコロニーの部隊には自分ぐらいしか適任はいないことも分かる。あらかじめ目星をつけて動いてはいるのだろう。
誰かを救いたいといったお為ごかしは言わなかった。
ただ自分が前に進みたいとだけ。
自分たちを裏切って見捨てたくせに、報奨を受け取ろうとした上司をオレは殴って謹慎処分にされた。
そんな奴とは、あの男が違うことは分かっているのに、感情のどこかが拒否している。
命じるだけの能力がない奴とは違う。
きっとこの潜入も、奴がオメガでなければ自分でやっていたことなのだろう。
「成功報酬もあることだし。別に悪い話じゃない、しかも報酬は全部アイツの身切りだしなあ」
ひとりごちで外を眺めて、データを再確認すると一読してからデリートする。
証拠はすぐに消し去るのが潜入の鉄則である。
「まあ、終わった後のお楽しみのために頑張りますか」
「へえ。シェルは、中央が出身なんだ。こんな大企業でも辺境だから不安だよね」
本日入社の社員は集められて、説明を受けているが赤茶の髪の人懐こい男がシェンに声をかけた。
偽造IDの名前はシェル·イライズ。
最初の発音が本名に近いだけ間違うことも少ないだろうという配慮だろう。
「ああ、恒星が近いから驚いた」
自分の偽のプロフィールはしっかり頭に叩き込んである。不審がらせずに、目立たずに味方を増やすのが潜入の鉄則である。
「紫外線もきついしね。イヤになるよな。まあ、この運輸会社はかなりいい給料だから、つられてきたんだけどね」
話半分に聞きながら、入社の説明が終わったことを確認して、説明した男に手をあげて質問する。
「よく運ぶ品物はなんですか」
麻薬のシンジケートが運輸業とかホントにありえないくらいわかりやすいだろう。
「冷凍肉かな。腐ったら最後だ。こころして運ぶようにな」
速度と正確さ。
上に信用されるためには、成果をさっさとあげなくてはならない。
「シェル、すごいな。この地域で一番速いよな」
地域の地図は叩き込んでいて、最短距離で届けられるようにシュミレーションも何度も脳内で組んだので完璧である。
同僚に成績を覗かれて声をかけられる。
「たまたまだよ」
シェンはそんなことあるはずないだろと、胸の内でツッコミつつも処世術よろしく笑顔を向ける。
潜入するには味方を沢山つくらないといけない。
猜疑心や嫉みそねみは、それだけで捜査の成功率が下がってしまう。
「オレは結構配達迷うんだよね。なんかコツある?」
「ってもナビゲーションあるからな。迷わないだろう」
ナビゲーションどおりになど時間がかかって仕方がないから、ショートカットはみなしているとは思うが。
「近道行ったつもりが遠回りとか」
「あー、あるあるだよなあ。届け先も数こなすと決まってくるからな。大体覚えるだろ」
「シェルはすごいな。後で近道教えてくれよ」
人懐こい言葉に、爽やかに笑顔を返してお安い御用だよと答えると、軽く手をあげて自分の配達機に乗り込もうとすると、ぐいと腕を引かれて振り返る。
まだ。なんか用か?
いい加減ウザったいなと思わず顔を顰めると、薄毛の中年の顔にぶつかり息を飲んだ。
資料に載っていた幹部の一人だ。この地域の支部長グラン·ノイタールだったか。
「何か?」
いきなり支部長を知っているのも変な話なので、訝しむ表情をつくり、忙しい風情を醸し出してさっさと機に乗ろうと装う。
餌に食いついたか、これで釣れたかな。
内心では焦るなと何度も繰り返す。
「君はシェル·イライズ君だね」
「そうっすけど」
「私はノイタール。この支部の支部長をしている。君の腕を見込んで頼みたい仕事があるのだが」
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