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3ヶ月で中枢近くまで潜り込めるかどうか、かなり派手な賭けに出るしかないかもしれない。
荷を肩に担ぐ動作で荷のひとつに、指に挟んでいた針状の爆弾を刺しこんでおく。
「イライズ君、経路はバッチリかね」
支部長がやってくると軽く肩をたたく。
「はい、まあ、休暇をいただいたので頭に叩きこみました」
ぼろを出すつもりはないが気をつけなくてはならならい。
シェンは、運転席に自分の荷物を載せる。
「休暇は何をしてたのかな」
「あー、経路の確認と、あ、えーと恋人とデートしたくらいですね」
そう言うと、支部長はニヤニヤとほくそ笑む。
商売男を恋人と勘違いしているイタイ奴を装うのも楽な仕事じゃないぜ。
「そうか。恋人か。じゃあ、素敵なプレゼントを買うためにも頑張らないとな」
多分カメラの中身を解析して、金が必要なことはリークされているのだろう。伺うような好色そうな視線に、シェンは照れた表情を作って笑う。
「からかわないでくださいよ。まあ、頑張りますよ」
潜入捜査は演技力が勝負である。
辺境に飛ばされた時はもう不要な能力だと思っていたが、意外に役立つのは早かったな。
運転席に乗り込み、ちらと支部長を見ると笑顔で手を振られる。
母艦を出て小さな振動音を感じて、シートの下を覗き込むと、時限式の加圧爆弾があるのを発見する。
設定時間は、引渡しの時間の1時間後である。
証拠隠滅のためだというのはわかる。
渋滞で遅れたら、どうすんだよ。
はなからこちらの命など、塵のようなものだってことだな。
信頼はまだされてはいない。
そんなことは始めから承知のことだ。
『シェン、取り引き相手の方がきな臭い。少し気をつけろ』
一方的な統久からの通信が耳に直接入ってくる。
こちらからの返答はできないが、こういう連絡はないよりあった方がいい。
気をつけるって言っても、引渡ししたら用済みなんだろうけど。
『そっちがわの後ろの組織同士が、抗争をしている。悪くすれば巻き込まれるかもしれない。危険を感じたらすぐに撤退してくれ』
とは言ってもこのヤマを手にしたいのは、アンタじゃないのか。
撤退はしない。
体まで張ったヤマなんだろ。
シェンは目的の惑星へ飛び込むように、加速をかけて運送機を飛ばした。
撤退は、しない。
.....が、なんだこれは。
入港して荷物の確認にサンプル渡したりとリミットまでの時間を削られて焦っているというのに、宇宙港を出てすぐに銃撃戦が繰り広げられる。
明らかに狙われている。
「こんなの、聞いてないですよ」
思わず支部長に回線を開いて文句をつけつつ、軌道を描く弾を避ける。
こんなのは、オレじゃなけりゃ避けられないだろう。ずだんずだんと響くレーザー銃の音は鳴り止まない。
警察はいないようだが、こんな派手な銃撃戦じゃ、地元の警備隊がやってくるのも時間の問題だろう。
この地域は、誰の担当だったかな。
潜入捜査とはいえ、面倒な手続きは勘弁だ。
『内部抗争のようだ。どちらの陣営も荷物を狙っているようだが、倉庫まできっちり届けろ』
「マジかよ」
支部長から返ってきた言葉に、シェンは通話を切ってから吐き捨てる。
仕方がないことだ。
あっちにとっては、ただの捨て駒だ。
そんなことは分かりきっている。
タイヤだけでも対レーザ加工しておいて良かった。
蛇行して海岸線のカーブを抜けていくのは非常につらい。
ドライビングテクニックも、ある意味超人技を超える。
ぎゅいんぎゅいんと音をたてながら、狙撃をかわしてなんとか倉庫へとたどりつく。
冗談じゃないぜ。
命がいくつあってもたりやしない。
身の回りを簡易スイーパーで吸いあげ髪などが落ちていないかを確認してから車を降りる。
手に嵌めたゴムの手袋も外してから、渡せと言われたトランクだけを手にして、入口付近へと歩みをすすめる。
どうする?
反撃するか?
背後から近づく気配にシェンは気づいて、逡巡すると後頭に銃をおしつけられる。
「の、ノイゼンダーク運送っすけど」
わざと震えた声を出すと、背後のガタイのいい男は歩けとばかりに背中を押す。
逃げ場はない、か。
「よく無事に届けてくれたね」
前からやってきたのは、恰幅のいいグラサンの男であり、シェンを見るとトランクを渡せと指先を向ける。
その視線の冷たさに、シェンはぞくりとしつつ、慎重にトランクを前に押し出す。
これは、オレを殺す気だ。
殺気を悟り、男が背後の男と視線を結んだ瞬間、シェンは身を屈めて銃口を逸らすと、背後の男の脚を払って、身を退けた。
荷を肩に担ぐ動作で荷のひとつに、指に挟んでいた針状の爆弾を刺しこんでおく。
「イライズ君、経路はバッチリかね」
支部長がやってくると軽く肩をたたく。
「はい、まあ、休暇をいただいたので頭に叩きこみました」
ぼろを出すつもりはないが気をつけなくてはならならい。
シェンは、運転席に自分の荷物を載せる。
「休暇は何をしてたのかな」
「あー、経路の確認と、あ、えーと恋人とデートしたくらいですね」
そう言うと、支部長はニヤニヤとほくそ笑む。
商売男を恋人と勘違いしているイタイ奴を装うのも楽な仕事じゃないぜ。
「そうか。恋人か。じゃあ、素敵なプレゼントを買うためにも頑張らないとな」
多分カメラの中身を解析して、金が必要なことはリークされているのだろう。伺うような好色そうな視線に、シェンは照れた表情を作って笑う。
「からかわないでくださいよ。まあ、頑張りますよ」
潜入捜査は演技力が勝負である。
辺境に飛ばされた時はもう不要な能力だと思っていたが、意外に役立つのは早かったな。
運転席に乗り込み、ちらと支部長を見ると笑顔で手を振られる。
母艦を出て小さな振動音を感じて、シートの下を覗き込むと、時限式の加圧爆弾があるのを発見する。
設定時間は、引渡しの時間の1時間後である。
証拠隠滅のためだというのはわかる。
渋滞で遅れたら、どうすんだよ。
はなからこちらの命など、塵のようなものだってことだな。
信頼はまだされてはいない。
そんなことは始めから承知のことだ。
『シェン、取り引き相手の方がきな臭い。少し気をつけろ』
一方的な統久からの通信が耳に直接入ってくる。
こちらからの返答はできないが、こういう連絡はないよりあった方がいい。
気をつけるって言っても、引渡ししたら用済みなんだろうけど。
『そっちがわの後ろの組織同士が、抗争をしている。悪くすれば巻き込まれるかもしれない。危険を感じたらすぐに撤退してくれ』
とは言ってもこのヤマを手にしたいのは、アンタじゃないのか。
撤退はしない。
体まで張ったヤマなんだろ。
シェンは目的の惑星へ飛び込むように、加速をかけて運送機を飛ばした。
撤退は、しない。
.....が、なんだこれは。
入港して荷物の確認にサンプル渡したりとリミットまでの時間を削られて焦っているというのに、宇宙港を出てすぐに銃撃戦が繰り広げられる。
明らかに狙われている。
「こんなの、聞いてないですよ」
思わず支部長に回線を開いて文句をつけつつ、軌道を描く弾を避ける。
こんなのは、オレじゃなけりゃ避けられないだろう。ずだんずだんと響くレーザー銃の音は鳴り止まない。
警察はいないようだが、こんな派手な銃撃戦じゃ、地元の警備隊がやってくるのも時間の問題だろう。
この地域は、誰の担当だったかな。
潜入捜査とはいえ、面倒な手続きは勘弁だ。
『内部抗争のようだ。どちらの陣営も荷物を狙っているようだが、倉庫まできっちり届けろ』
「マジかよ」
支部長から返ってきた言葉に、シェンは通話を切ってから吐き捨てる。
仕方がないことだ。
あっちにとっては、ただの捨て駒だ。
そんなことは分かりきっている。
タイヤだけでも対レーザ加工しておいて良かった。
蛇行して海岸線のカーブを抜けていくのは非常につらい。
ドライビングテクニックも、ある意味超人技を超える。
ぎゅいんぎゅいんと音をたてながら、狙撃をかわしてなんとか倉庫へとたどりつく。
冗談じゃないぜ。
命がいくつあってもたりやしない。
身の回りを簡易スイーパーで吸いあげ髪などが落ちていないかを確認してから車を降りる。
手に嵌めたゴムの手袋も外してから、渡せと言われたトランクだけを手にして、入口付近へと歩みをすすめる。
どうする?
反撃するか?
背後から近づく気配にシェンは気づいて、逡巡すると後頭に銃をおしつけられる。
「の、ノイゼンダーク運送っすけど」
わざと震えた声を出すと、背後のガタイのいい男は歩けとばかりに背中を押す。
逃げ場はない、か。
「よく無事に届けてくれたね」
前からやってきたのは、恰幅のいいグラサンの男であり、シェンを見るとトランクを渡せと指先を向ける。
その視線の冷たさに、シェンはぞくりとしつつ、慎重にトランクを前に押し出す。
これは、オレを殺す気だ。
殺気を悟り、男が背後の男と視線を結んだ瞬間、シェンは身を屈めて銃口を逸らすと、背後の男の脚を払って、身を退けた。
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