炎上ラプソディ 

怜悧(サトシ)

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こういつまでも悪党の片棒担いでると、何が本業か忘れそうだな。
「イライズ、今度は幹部直々の依頼だよ。1回100万ダラーはくだらない話じゃないか」
支部長は本部長へと格上げになり、ここ1ヶ月はシェンは普通の運送をすることはなくなっていた。
「そうですね。この仕事が終わったら、オレ.....退職したいのですが」
「ああ、オメガの男を身請けするんだったっけ。お前みたいなベータじゃ裏切られるだけだぞ」
見下すように告げる本部長には、その話をしてはいない。きっと、あの盗撮動画を見たことを口を滑らせたのだ。
「何故、そのことを?」
誰にも言ったことがないのにという表情をすると本部長は流石に焦ったような顔をする。
「.....あー、ああ、もっぱらの噂だぞ。オメガなんかはベータのお前が身請けしても、いつかほかのアルファや運命の番とやらに奪われてしまうものさ」
性差別の激しい男だなと前々から思っていたが、シェンはむすっとした表情を浮かべて首を振る。
恋にのめりこんだ馬鹿な純情男の設定だったな。
「そんなことないです。あの人は俺だけを好きだと言ってくれたんです」
力強く拳を握ってみせるシェンを、本部長は哀れむように見返して、ぽんと背中を叩く。
「身請けした後も抑制剤とかの薬代はかかるし、お金は必要だからね。簡単に仕事をやめたら後悔するよ」
抗争があっても、厳重警戒がひかれている中でも必ず任務をまっとうするシェル·イライズの存在は幹部にも知られていて、なくてはならない存在になっている。
おめおめ退職などされては困るのである。
「お金は必要ですが、危険な仕事ばかりっていうのも」
「辞めたとしても、君の命が無事だという保証はまったくない、と言ってもかな」
口の端っこを引き上げて笑う本部長に、シェンはやはりそうくるかなと肩を落とす。
「とりあえず、すごく危険なのは今回限りにしてください」
「上には伝えておこう。今回運ぶのは、細菌兵器だ」
「さいきん、へいき」
思わず問い返すと、本部長はニヤリと笑ってみせてカプセル材の入っている小さな袋を翳す。

「カプセルは体内で25時間で溶ける。溶けたあとは、その体が感染する。感染する前に取り出してもらう必要がある。つまり、飲み込んでから24時間以内に運ばないと死ぬ、もし感染したら爆弾代わりに繁華街に向かって死ね」
とんでもない要求に、シェンは目を見開いてカプセル剤を凝視した。


「どう考えたって、その仕事、死ぬ確率高いじゃないですか。勘弁してください」
パンデミックを引き起こして他人を巻き込む可能性とか考えたくない。
「君なら運べるんじゃないかな」
「どう高く買ってもらえてるのか分かりませんが、冗談じゃないですよ」
「じゃあ、今死ぬか。よく考えておけよ」
銃口をおもむろに向けられて、手にしていた袋を奪われる。
「返事は明日の18時までに連絡よこせ」
本部長はそう言うと、部屋を出ていく。
潜入してから2ヶ月、そろそろ引き返せない場所まで入りこんだ。
そろそろ、潮時かもしれない。
シェンは会議室を出ると、通信機を手にしていつもの番号に繋いだ。



『シェン、撤退だ』
呼び出した彼はいつものように、シェンのペニスを口に含んだまま、腕の発信機で言葉を伝える。
「君を身請けするには、その金が必要だから」
チャンスはチャンスではある。
細菌兵器などは生産すること自体が大犯罪である。
もう少し裏が取りたいが、返事をするまでの時間もさほどない。
ここで撤退しても意味は無い。
見下ろした統久の舌使いのうまさに頭がぼんやりしてくる。
「ハイル、このまま飲んで、いいだろ」
飲精を促した言葉に含ませた意味に、目をあげた統久は首を横にふる。
ここで撤退など絶対したくないとシェンが見返す。
「ん、っ、出して」
統久は呟くと、喉奥まで切っ先を飲み込んで笑みを浮かべた。


『ならば、作戦決行する前。今夜追い込みをかける。夜の21時、本社前だ』
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