花に嵐

怜悧(サトシ)

文字の大きさ
7 / 34

7

しおりを挟む
長谷川に勉強を教わるようになって、俺の成績は嘘のようにメキメキと上昇した。
この間の期末には100位以内に入れた。
毎週末に俺の家にきてくれて、長谷川は要点を分かりやすく説明し、しかも、解答方法の裏技まで披露してくれる。
塾の講師なんかとは比べ物にならないくらいの分かりやすさである。
その上、俺に教えながらもずっと首席をキープし続けているのだ。
最初は、後輩に教わるなんて最大の恥とも思っていたが、今は本気でそっちに関しては尊敬している。
どうしてそこまで俺にしてくれるのか謎ではあるが、長谷川に裏表はないので安心している。

ペンを持つ綺麗な指先も、眼鏡の奥の眼差しも、最初に出会った頃のようなとげもなにもない。
綺麗な顔でさらさらと答えを簡単に導き出す。

「何考えてるんです?いまの……分からない?」

問いかけてノートを覗き込もうと近づく顔になんだか胸がどきどきする。
ちょっと前から感じている。
俺はこの綺麗な顔の表情の動きのひとつひとつに一喜一憂してしまう。
このキモチの正体に。

「いや…………。もう夏休み入ってるのに、毎日きてくれるのなって思って」
「夏休みが巻き返しのチャンスですし、それに先輩の部屋、涼しいから。僕の勉強もはかどりますしね」
薄い唇でちょっと笑うのが、このごろ可愛いなと思い始めている。
友情じゃない感情が、俺のどこかにあるのが分かる。
分かるが、男同士だ。…………ありえない。
「オマエの部屋、冷房ないのか」
「扇風機はありますよ。勉強はもっぱら図書館でしかしないので、気になりませんが」
いまどき扇風機しかないって、そんな家あるのか。
普通に40度くらいになるぞ。最近。
勉強に必要なものがまったくそろってない。
オヤジさんがヤクザで、アニキが極悪不良で、おふくろさんがスナックのママって環境自体もひどいのに、どうしてこんなにストイックにやってられるのだろう。
「ふうん。そういや、オマエ、カノジョとかいねえの?」
俺には中学から付き合っていた彼女はいたが、こんな格好を始めてすぐに振られた。
真面目な俺が好きだったのにといわれて、中身は変わってねえのに人は見た目だけなんだなと思った。
「いるように思えます?誰とも付き合ったことはないですよ」
何を当たり前のことを聞くんだとばかりに、不愉快そうに俺の顔を見やる。
どこかで、俺は喜んでいた。
思わず顔がにやけそうになる。
気づいたことがある。
ありえないけど、ありえないんだが、俺はこの生意気な後輩が好きらしい。
だったら言うことはひとつだ。

「……なあ……TOP10位に入ったら、俺と付き合え」

ノートの上で動いていた、長谷川の手が動きをとめて、俺の顔を凝視する。
そして、俺の顔を馬鹿にした表情で見返す。

「………僕、男ですよ。ありえません」

思い切って告げた言葉も、あっさり簡単に振られた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

処理中です...