6 / 34
6
しおりを挟む怒ったように眼鏡を奪い返す長谷川に、色々あったのかなと思うが、やはり勿体ない気持ちになる。
絡まれる理由は、やはり人を惹き付ける顔立ちだからだろう。
隠してしまうのは惜しい。
「この高校に入学してきたってことは、先輩は中学時代はヤンキーじゃなかったんでしょう」
長谷川が自分に興味をもってくれたことが嬉しくて、俺は身を乗り出してうんうんと頷いた。
「ああ。俺は高校デビューだからさ。中学の時は生徒会長とかしてたな。ずば抜けて頭がいい訳じゃあなかったから、努力しまくってたけどな」
生徒会長になったのは、友達におだてラれたのもあるが、人に望まれているという状況が嬉しかったからだ。
望まれていれば、頑張らないといけないと努力する。
「僕は努力も才能と思いますよ」
だけどこの学校では、ただの石ころに過ぎないと、俺は考えてしまった。
「でも、この学校じゃかなわねえからな……いくら努力しても……結局地を這いずる」
パンのごみを袋にしまうと、どうせ無理な話だよなと、空を見上げて呟いた。
「それで諦めたわけですか」
諦めた。
そうだな、努力しても誰もみていない。
努力しても、何も得られない。
そのループに早々に自分はすべてを放り出した。
「……カッコわりいだろ」
自嘲して吐き出すように長谷川から視線を逸らした。
何故かこの後輩には格好悪い自分をこれ以上見られたくないと思って、何故か消えたい気持ちになる。
「そうですね。格好悪いですね」
長谷川の言葉はにべも無い。
変に気を使われるより、さっぱりした気分になる。
「........否定もしねえのな。まあ、らしいけど」
「……先輩、もし勉強ができるようになったら、その格好やめますか」
まだ、風紀委員の職務を諦めていないのか、長谷川は俺を真っ直ぐに見つめてそう聞いてくる。
「は?」
勉強ができるようになることと、この格好をしていること。
俺の中では確かに繋がっていることだが、長谷川の中でその繋がりをどう理解したのか不思議で、俺はその顔を見返した。
「僕が、先輩に勉強教えます。先輩は努力できない人じゃないから、トップ10までには入れますよ」
「何言ってるの?」
例え2年の底辺だからといって、1年の長谷川が勉強を教えると言うのが意味が分からず、俺は鼻先で笑った。
「プライド高いの分かりますけど、僕、高校3年間の勉強ぐらいは、ひととおり全部できますから」
気の強そうな瞳を向けて俺に提案することには、嘘はなさそうである。
1年の首席か。
「……1年なのにかよ」
「アニキの宿題をこなしているうちに全部できるようになりました」
長谷川の兄貴が通っている高校も、いわゆる進学校だが、レベルがこの学校とは違う。
「北高とこの学校のレベル、ダンチだろ」
「僕が応用くらいできないと?」
「へーへー、そういや首席様だったよなあ。すげえなあ」
そこまで自信があるから、俺に情けをかけて勉強を教えてくれるのだろうか。
そこまでして、職務を全うしたいのだろうか。
「この格好いやか?」
そう尋ねると、長谷川は意外なことにも首を横に振った。
「風紀じゃなければ、どうでもいいです。先輩が無理してるように見えるから、気になります」
無理ね。
まあ、人と話すことに飢えて、長谷川に無理矢理友達になれというくらいである。
やっぱりこうして一緒にいることも、長谷川にとっては、面倒なことかもしれない。
他にこいつなら友達はいっぱいいるだろうから。
「無理ねえ……。いや、勉強できるようになっても、俺はこの格好やめねえよ」
ぐしゃっと袋のごみを握りつぶすと、制服のポケットに捩じ込んだ。
「でも、できるようになったほうがいいですよ。先輩は地を這うべきじゃない」
必死な表情で言われて、そこまで俺を気にしてくれていることが嬉しくて仕方がなくなる。
勉強を教わることで、もっと長谷川と近づけるような気もしてきた。
「……オマエやなヤツ。……じゃあ教えてくれよ。そんなに言うならさ。じゃあ……トップ10とったら……髪色変えてやるよ」
そう言うと、長谷川は硬かった表情を和らげて、嬉しそうに微笑みを浮かべて俺に大きく頷いた。
「半年で、入れますよ」
その顔がとても可愛らしく思えて、俺は思わずよろしくなと告げた。
0
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる